1.SFCアクトレイザー【アドベントカレンダー2024】
このブログにおけるアドベントカレンダーの説明
世間には12月に一つのテーマを決めてブログ記事を投稿する慣例がある。アドベントカレンダー企画である。
その例にならい、わしはスーパーファミコンのゲームソフトのことを記事にする。
だいたいのアドカレ企画は一人が一記事を寄稿するらしい。だが当ブログでは単独でやる。
もはや30年ほど前の話になるので不確かな知識が多くなるものの、忘れ去らないうちに文章化する。
なお日本における家庭用機の元祖といえば知名度的にファミコンだと思うが、わしはやれてないのでナシにした。
この2024年度の企画記事ではゲームの紹介と考察をざっくりやる。
アドカレ第一の記事は『アクトレイザー』。
1990年12月16日にエニックスから発売されたスーパーファミコン(SFC)用のゲームソフト。
制作した会社は今は無きクインテット。『ガイア幻想紀』や『天地創造』など隠れた良作を生み出していた会社である。もとは日本ファルコムで『イース』を制作していたチームだったそう。
ゲームのジャンルは横スクロールアクション……なのだが民衆の暮らしを発展させるシミュレーション部分もある独自性の強い作品。
そのほか古代祐三氏の手がけた音楽も注目を集めた、SFC黎明期の有名作品。
ゲーム概要
かつて魔王サタンと戦って敗れた神が魔王の封印から目覚めた。
神は天使の手引きに沿って、魔物が支配する地上を解放し、民衆の信仰心を集めて力を得ていく物語。
強い敵と戦うため(アクションモード)に神が創造した人々の生活を豊かにさせる(クリエイションモード)という循環を、各地域で繰り返し、最終的には魔王サタンを倒すのが目的。
アクションモード
地上にある剣士の石像に神が憑依し、剣で魔物を倒しながらボス打倒を目指す。
攻略の仕方によっては魔法を使うこともできる。回数制限あり。
使用回数に上限のある特殊な攻撃方法を使える、という点も合わせると、カプコンの『魔界村』や『ロックマン』に近い横スクロールアクションと言える。
即死トラップとその発想元
ステージ上には一撃死するトゲやら針やらがある。
これは『ロックマン』リスペクトなのだろうか?
……とカプコンゲーム偏重な民は思ってしまうが、どうも違う。
クインテットスタッフがもともと所属していた日本ファルコムのアクションRPG『ザナドゥ シナリオII The Resurrection of Dragon』にも大ダメージなトゲの罠があったそうだ。
それぞれ発売日は『ザナドゥ シナリオⅡ』が1986年10月1日、初代『ロックマン』が1987年12月17日。
つまり『ロックマン』は1年と2ヵ月ほど後発なゲームソフト。
トゲの接触ダメージが一撃死なのは『ロックマン』で、『ザナドゥ』ではないものの、『アクトレイザー』での即死トゲに他作品のリスペクトがあるとしたらたぶん『ザナドゥ』のほう?
即死トゲという概念自体は1980年のアーケードアクションゲーム『クレイジーバルーン』に既にあった。
こちらは風船を操作するゲーム。防具をまとう戦士の一撃死とは意味合いが異なる。
現在の感覚では難ありの操作性
操作性はあまり良いと言えない。
しかしSFC本体が1990年11月21日の発売だと考えると、ほぼローンチタイトルな作品。この当時では充分高品質だったのかと思う、たぶん。
難易度は難しいわけでないがアクションゲーム初心者向けと言いにくい。
クリエイションモードをしっかりやればアクション下手でもなんとかゴリ押せるバランス。
クリエイションモード
地上を占拠する魔物をいったん退治したあとに移行する町づくりシミュレーション。
このモードでは人々の願いを聞き届けたり、魔物の巣から現れる魔物を天使の弓矢で退治したりする。
時にはより大きく町を発展させるために、神みずからの奇跡の力で家々を焼き払ったりする。
人口が減っちゃうけど減る前よりずっと増えるのでヨシという倫理観がどっかいったプレイも攻略的には推奨される。必須ではない。
一通り町が繁栄し、マップに点在する魔物の巣をすべて封印できると、その地域を脅かす大元の魔物を討伐しにいけるようになる。
討伐に成功すればその地域は平和になり、神は次なる新天地へ向かう……が、いつでも解放した町には戻ってこられる。
触れられない謎
ゲーム中、特に説明はないがわしが気になった描写についてここに並べる。
攻略本などの資料をわしは知らない。素人考えで語る。
アクションモード開始時の石像
各地域の魔物退治の開始時、ステージには剣士をかたどった石像がスタート地点に置かれている。
この石像に神の魂? のような光が入ることで石に色が付き、生身の人間のように動き回れるようになる。石像が神の依り代である。
実体を持たない神や悪魔という存在はよく聞くのでそれはいい。
気になるのはその石像をどうやって調達したかということ。
可能性1:地上で放置されていた
最初から地上にあったのだろうか。
同じ石像が各地方に点在すること自体はありうるかもしれない。聖母マリア像などは世界中に何体でもある。
しかし一度は魔物に地上の覇権を取られてしまった世界。
魔物視点では敵にまつわる神の像を大切にとっておく理由はない。
数百年ものあいだ、五体満足な状態で石像が保たれる状況は考えにくそうだ。
可能性2:天使が確保した
神が封印された間も元気でいたらしい天使が保存していた、というのが個人的には無難な線。
ACT1およびACT2に突入するたびに天使が石像を現地へ運んでいるのだろうか?
小さな体に重労働を課していたのかもしれない。
アクションモード時は天使が一切助けてくれないのも、石像の輸送でいっぱいいっぱいだからなのか。そういうことにしとこう。
なお説明書によると石像は人々が”神をあがめるために作った石像”だというので、作ったのは人間のようだ。
説明書は以下の個人ブログで閲覧可↓
『アクトレイザー』1990年/スーパーファミコン - レトロゲームの説明書保管庫
人間の寿命と繁殖能力
神が直接創り出した人間は地域ごとに男女一人ずつ。
二人の人間からどんどん人が増えていく≒子供が生まれていく。
神殿で神にお願いをしたり捧げものを供えたりする人は決まって同じ人のような印象を受けるが、人間の寿命はどうなっているのか不明。
数分で増える人口
数値上の人口は二人から百人以上へ余裕で増える。
しかし現実の夫婦は一生の間にそんなに子供を増やせない。
もしかしたら時間の流れが超特急な世界なのだろうか。
神視点だと同じ人に見えていても、こっそり代替わりしているのかもしれない。
途中でテディという固有名詞のある人間が現れるが、それも時間が経つごとに○代目テディという別人になっていたりするのだろうか。
ゲームに細かい話は無し?
あんまり込み入った設定は考えられてないのかもしれない。
作中の時間が簡単に数十年経つ『ロマサガ2』だと、NPCのキャットが運河要塞攻略の時に協力してくれるのを放置して年代ジャンプ→まだ要塞内にキャットがいる、という現象を起こせる。
それと似たように、不可解な現象は単なるゲームの都合の一言で片付けられることなのかもしれない。
リメイク版に新登場する人間
2021年9月13日に『アクトレイザー』をリメイクした『アクトレイザー・ルネッサンス』がリリースされた。
リメイク版にはSFC版にいなかった味方キャラクターが各地にいる。
新規追加された味方のうち、神が新たに創造した人間とは確実にべつの存在もいる。
新キャラたちはどんなに民衆が増えても容姿が変わらない。
ゲーム内では時間がそう何年も経っていないのだろうか。
つまり、神が創りだした新人類はネズミかそれ以上に妊娠期間が短い(ネズミは約20日)生き物で、大人になるのにかかる時間も短い(ネズミは約2~3ヵ月)のか?
それとも皆がエルフのように不老長寿で、一度成人したらずっと何百年も青年姿のままなのだろうか?
新キャラの追加により、神が創った人々の捉え方も変わってきた気がする。
ゲーム音楽への影響
ゲームの中でオーケストラが流れる……と評価されたこともある『アクトレイザー』。孫引きになるがそういった文言のある2018年の記事→新日本BGMフィルのコンサート「NJBP Concert #1 “古代祭り”」が開催
このころはゲーム音楽をピコピコ音と揶揄する人がいたそう。
そのゲーム音楽の固定観念を突き崩した名曲が『アクトレイザー』にはそろっている。
例えば神のホーム地となる天空城の曲にはパイプオルガン(に近い音)が流れていて荘厳である。
著名なゲーム作曲家が称賛
『アクトレイザー』の曲に驚いたという人物が、ファイナルファンタジーシリーズの音楽を作った植松伸夫氏。
FFシリーズも充分に名曲ぞろいのゲーム。そんな凄腕の作曲家もすごいと認めた出来だった。
以下2012年の記事より抜粋→植松伸夫氏トークステージにて、『FF』オーケストラコンサート年末公演の日程が発表!【FF展リポート】
『FFIV』開発中、『アクトレイザー』の古代祐三氏が手掛けた音楽を聴き、植松氏はかなりショックを受けたという。「この音には勝てない」と、すでにできあがっていた曲をサンプリングし直したそうだ。だが、それでも『アクトレイザー』には勝てなかった、と植松氏は語った。
『アクトレイザー』がその後のゲーム音楽の質をグンと向上させるきっかけになっていたのかもしれない。
エンディングの感想(折り畳み)
ネタバレになってしまうので折り畳みでわしの感想を載せる。
まだ『アクトレイザー』を知らない人は読まないほうがいいと思うが、そのへんは自己責任で。
アクトレイザーENDの感想
ときたま皮肉を言ってきた天使が各地の人間に対する推測や思いを語るシーンにはじんわりくるものがある。
プリケツをプレイヤーに見せつけていた天使もいろいろと深く考えていたんだと思わされる。
また、プレイ中はいつも神殿をのぞけば姿を現した人間が、エンディングでは神殿にこなくなる。
平和になり、神の助けが必要でなくなると神への対応もぞんざいになった。
なんだか現金な連中だとプレイヤー目線では思いそうだが、天使はそれが人間にとって幸せなことなのだと言ってくれるのでまあいいかと思える。
四字熟語の鼓腹撃壌 という言葉もある。平和で幸せな世の中を楽しむさまを意味する故事成語である。
言葉のもとになった老人は「天子様の力なんて私たちには関係ない」と為政者を軽んじる発言をするものの、その時代は中国史上きわめて平和で善政を敷いていたとされている。
良い政治は民衆にそう感じさせないこともあるというお話。
このエンディングはそういう昔話にも通じる結末なのかとわしは感じた。
続編のアクトレイザー2 沈黙への聖戦
このゲームには続編がある。そちらはアクションモード単体の高難易度なゲームになった。
海外向けにアクションゲームに振り切ったのだそう↓。
WEBアーカイブのアクトレイザー2公式サイト
サイトにあったコメントを以下に転記。
制作裏話
そもそもこのソフトは海外での販売を前提とした作品でした。海外向けの作品は難易度を高くするのが普通だったりするので、このソフトも例に漏れず、難易度が非常に高いものとなりました。このソフトを日本でも発売する際に、日本人向けにバランス調整を施したのですが・・・当時のデバッグを担当したメンバー達が揃いに揃ってゲームが非常に上手であった為、デバッガの意見を採り入れたらああいう難易度になってしまったという・・・でも、主人公の動きさえマスターすれば意外にもサクサク進める、奥が深いゲームなんですよ(当時デバッガー 杉中直人
クリエイションモードは撤廃
クリエイションモードがないことを残念がる声はたぶん日本に多い。わしもアクションオンリーじゃなぁと思ってゲーム自体よく知らないままでいる。
初代はリメイクされたが、2もリメイクはあるのだろうか?
そこでクリエイションモードを追加することは……設定的に難しそうか。
2は人々の心がすさんだ状態
『アクトレイザー2』の舞台は、人々が長年平和を享受したすえに負の感情が強まった世界だそう。
信仰心を忘れ悪徳を強めた人々の心が魔王の力になり、魔王復活という流れ。
説明書のストーリー部分を切り抜きした画像↓。レトロゲームの説明書保管庫のアクトレイザー2で全ページ閲覧可。
人々は文化的な部分での問題は抱えていないようだ。つまりクリエイションの余地がない。
じゃあ人ごと更地にしてからもう一度育成を、な破壊神ムーブはきっとできない。それやっちゃうと魔王と違いがわからなくなる。
初代はリメイクされたが・・・
2はあまり売れていない。先述のアーカイブのサイトでは日本4万,米国10万,欧州4万本と掲載。
初代は日本だけで40万本。プレイ人口に大差がある。2はリメイクの目途が立たないかも。
初代は「ほかにやるソフトがないから」といったローンチの強みで知名度があったようだ。
2はそういった補正がなく、高難度なゲーム性で国内では一般ウケせずに埋もれていった。
運が良かったらニンテンドーオンラインで配信されるだろうか。どこでもセーブとリトライ機能との相性はよさそうだと思う。