追加情報―誌面におけるナッシュの美形言及
わしは読んだことのない公式資料本にはナッシュが美形というふうに書かれていたとの情報が見つかった。
前回の記事ナッシュの美形設定の有無にはそういった記述のある資料はない前提で書いていたため、訂正と補足のための追加の記事を用意する。
もともとナッシュは美形扱いされていたんだろうというスタンスでわしはいた。その証拠が見つかるのは良いこと、のはず。
しかしどうにも不思議な部分がいろいろとあった。それをまとめる。
わしは該当資料を読めてない人間なので憶測が多いです。その点に注意してください。
ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000
株式会社スタジオベントスタッフが編纂し、電波新聞社が2000年9月2日に発売したというカプコンのゲーム資料本。
以下のスタジオベントスタッフの公式サイトには本の制作にたずさわった編集者たちのコメントもある。よかったら見てってください。これが根拠のわしの推測も立てます。
作品詳細 ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000 - スタジオベントスタッフ
文章は他社の人が手掛けたものとはいえ、本の帯に「カプコン完全監修」と書かれている。内容は公式設定と見てもよい太鼓判を押された。
こういう本があることをわしは以前から知っていたものの、まさかストシリーズの資料に書いてなかった設定がカプコンの格ゲーオールスターズ的な資料で明かされると考えてなかったので守備範囲外だった。盲点。
なもんで前記事の「資料に載ってない」といった文言はちょっと変えた。あくまで『ZERO』の制作者は『ZERO』の資料でそういう情報を出してなかったというふうに。
読み手に混乱を招いていた場合はすいません。わしの書き方がよろしくなかった。
え、大して内容が変わってないって? この記事を読んだら理由わかると思います。
肝心の設定言及
X(旧ツイッター)で、『ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000』中の「カプコン対戦格闘ゲーム大事典」に書かれたナッシュの項目の画像を公開している方がいた。
制作者や有名人以外のポストの埋め込みはなんとなく気が引けたので該当ポストのリンクを上述の文に貼る。
資料における外見の説明箇所を抜き出した↓
メガネをかけた理知的な美貌に、ブロンドの髪をツノのごとく固めた青年。
……
”美貌”?
なんか女性に使うような中性的な言葉だが、これはカプコンが完全監修していると豪語した書籍だ。
これもカプコンが認めた言い回しなのだ。正しいんだ、きっと。
けっして「ザンギュラのスーパーウリアッ上」のような誤植ではないんだ、そういう誤植が名物の『ゲーメスト』の記述じゃない。
この部分の事典の担当者さんがナッシュをバルログと勘違いしているわけでもないのである。
主題と関係ないが眼鏡をかけたバルログの絵(たしか西村キヌ氏作)をどこかで見かけた気がする。視力悪い設定はバルログに無いからオシャレ眼鏡か。
キャミィにも眼鏡姿の私服絵があったのでデザイナーさんにとってのファッショナブルなアイテムだったんでしょう、たぶん。
そういえばこのナッシュの説明文には伊達眼鏡なことは書かれていないようだ。同社の『ALL ABOUT ストリートファイターZERO3』に書いたので省いたのだろうか。
「理知的」フレーズは既出資料にもあり
同じくスタジオベントスタッフが編集していた『ALL ABOUT ストリートファイターZERO』にはプレイアブルキャラクター13人分のショートストーリーが掲載された。
そのナッシュのストーリーの地の文には「知的な顔だちの男」というナッシュの容姿描写があった。
この形容はナッシュが知的な顔だと説明するものであって美醜については判断不能である。
『ZERO』系列の本を見返しても、どの文面から美貌という文言が生えてくる余地があったのかよくわからない。
カプコンが過去には公に出さなかった開発資料に書いてあったのだろうか?
新たに資料集をまとめる話があがってきた折に、カプコンが秘蔵の資料を記者に貸してあげて、そこから拾い上げたナッシュの設定なのか?
その可能性があるにはある。しかし……
出版事情とコメント集による印象
冒頭にもリンクを貼ったサイトを見ると、この書籍はどうやらゲームソフトや既出の資料集をもとにまとめたもののよう。
エンディングのシーンを撮影するためにわざわざイチからプレイしていたこともコメントに載る。
プレイしなくたってカプコンはゲーム内のデータを直接引っ張りだせそうだが、そういうことはしてないらしい。
この書籍がどういった経緯で作られたか語られる段がある。
サイト内の下段にある、「スタッフコメント」と見出しのついた欄のトップバッターを飾る人。
この山下章という方は会社の代表取締役であり、『ALL ABOUT』のZEROシリーズすべてに関わった編集者である。
もともとこの書籍はスタジオベントスタッフが出版を決めたもので、カプコンからは依頼していないことが山下氏のコメントでわかる。
つまりカプコン側が骨を折ってなにかする義理が無い。
一般人が入手しづらいアーケードゲームの基板や筐体につけるインストカードの貸し出しくらいはしたかもしれないが、それ以外のことで積極的に手助けする理由はあんまりなさそうな気がする。
事典の内容は既出の説明書や資料集からまとめてくれれば充分な箇所だと思う。ただでさえ収録対象の作品数が多いので。
全体的にカプコンの存在感が薄い
わしが気になるのはコメント集にカプコンさんから頂いた資料~といった言葉が無いこと。
仮に今までに見れてなかった新情報を受け取ったら喜ばない?
『ZERO』だけで3冊も本を出版してきてファン感情が湧かない? と思うところを、そういった興奮が文面に表れていない。
もしかしたら秘蔵資料の提供なぞなく、事典の部分は一般に流通する資料とゲーム内描写を集めて完成させたのか、とそんな印象を受ける。
言い換えればそれまでの資料本に無かった文言は、記者の判断で新規に明文化≒追加した設定、ということもあるかもしれない。
他の美男情報と混ざりそうなページ
『ZERO1』のショートストーリーを掲載した書籍の10ページ目に以下のイラストがある。
リュウとケンとガイが夏祭りに行ったときのようなシーン。この絵への解説がこう↓
▶「ストZERO」色男3人組。祭りでのひとコマ,といったところだろうか
この文の上部にはナッシュの絵に対する解説が入り込んでいる。
カットした部分にはBENGUS氏によるナッシュ絵があり、ナッシュの説明文も載った。ガイルの友人と同じ名前だが同じ人かはさだかでないと濁された内容だった。
これらが同じページに組まれたものだから、リュウたちだけを指していた”色男”の形容がナッシュにも付着した編集者がいたんじゃ? という疑いをわしは持った。
本当にそれぐらいしかナッシュと美形関連の語句が繋がるページを見つけられなかった。
次の項目で貼る画像も合わせると、この3人とナッシュの属性を混同しうる表現はされていた。
明言がなくてもたぶん美形な顔アイコン
ナッシュが美形らしく見える描かれ方も『ZERO1』にある。
それがゲーム内で表示される顔アイコン。海外サイトのspriters-resourceのStreet Fighter Alpha / Zeroから画像を落としてきた。
このナッシュ絵が事典のナッシュの項目にモノクロで使われていた模様。
色男3人組+ナッシュと他の男性陣を見比べてみて、その差がわかるはず。
顔の描き込み量が違う。
特にアドンとベガは作画コストがかかっている。
この二人のドット絵はわしの感性だと「めっちゃいい顔してる」と惚れ惚れするが、一般的にこういった顔立ちは美形から程遠いものである。
濃ゆい面々と異なり、ナッシュの顔は色男と称されたリュウたちと同じくらいにツルンとした湯上がりたまご肌。
3人との違いはナッシュのほうがアゴのサイズがちょっと大きい? 目の位置が高めで壮年寄りの青年? と感じる程度で美形度は大差ない。
美男と言われないダンもこのときは凛々しい顔つき。
しかしアゴが割れていて目の下にクマのようなものが描かれるのを見ると美形とはちょっと違うようだ。
パロディ元の美形キャラなロバート・ガルシアもアゴが割れていることがあったが、SNKさんはわりと軽率に美形設定を足していた会社なので深く考えないことにしよう。
ZERO3における美化の入ったナッシュ
ナッシュがやたらイケメンに描かれたゲーム内絵がある。
『ZERO3』ナッシュENDの戦闘機操縦中の1コマ↓
きっとこの絵を見た瞬間にだれ?と思った人もいるはず。
眼鏡とベストと首回りにあるドックタグのチェーンをよく見てみよう。これもナッシュなんです。
そんな解説を添えておきたくなるほどにナッシュっぽさのとぼしい絵だ。
ナッシュらしく見えない原因
前髪の存在感がなくなるとナッシュかどうかの判別が難しくなる。
いつも丸出しの腹筋も隠れる構図なのでただのカッコいいお兄さんと化している。
わしの美的感覚だと『ZERO』シリーズでは一番に美形に描かれているナッシュだと思う、がナッシュに見えない。
『ドラえもん』のスネ夫を正面から描いた絵をもって「これがスネ夫」と紹介することはまず無いのと同じく、このナッシュも外れ値に入るかもしれない。
別人感があってもナッシュのうち
『ZERO3』はアーケード版が1998年7月に稼働していた。
当然2000年に出版された『ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000』に関わった人たちも『ZERO3』の内容を知っていた。
『ZERO3』ナッシュEND絵は個性を犠牲にしてまで美形に描かれた。けしてデザイナーさんの表現力不足ではなくて角度がムズイ、スネ夫の正面絵みたいに。
もしこの絵のような綺麗なナッシュを(別人感は些末な問題としてスルーして)正統な描き方だと感じる人が書籍制作にも関わっていたら、ナッシュを美男子扱いする文言に違和感を抱かなかったのだろうと思う。
結論:ナッシュは美形という認識で変わらず
いろいろ書いたがこの見出しの通りである。
わしの予想だとたぶんスタジオベントスタッフの方達が入手できた資料に「理知的な美貌」という言葉は無かった。
そもそも同じスタジオベントスタッフの人が過去に『ZERO1』~『ZERO3』の資料集も手掛けていた。
そのときにはナッシュの美醜に関する言葉は載らなかった。
そこが本来カプコンから提供された設定資料に書いてなかった可能性をうかがえる部分。
そういう単語を挿入するタイミングかスペースがなかったのかもしんないですけどね、物語やキャラの人格と関わらないどうでもいい設定ではあるので。
一方でナッシュのことをハンサムに感じたプレイヤーの意見はちょくちょく見かける。それもおそらく男女問わず。
『ZERO2』でナッシュを知ったわしはナッシュのアゴの大きさから照英さん的な偉丈夫に思っていたため、そういう美形キャラ像が広まっていると知ったときはビックリした。いや照英さんはカッコいいんすけど美形とは違うかなって……
ナッシュに美男な印象を持った編集者が公然の事実とばかりに入れた”美貌”が、カプコン側のチェック担当の人にとっても同じだったから無訂正となった、のかもわかりません。
つまり明確な記録のなかった設定を、外部の人が文章化した事態もありそうだということ。
実際のところは不明です。
ナッシュの美形設定が開発資料に残っていたらどなたか画像付きでポストしてください。それに気づいたときはまた記事を書きます。
その他の美形判断例の滅・昇竜拳
じつはわしは過去の記事で美形扱いしたフェイロンが本当に美形キャラという括りでいいのかと心配になるときがある。
なぜなら美形云々の人物説明文を見たことがないからである。
外部出演もあまりなくて、『ガンスパイク』と『CFAS』ナッシュのようなどこから見てもイケメンに描かれた実績が純粋に少ない。
そんなフェイロンでも本家シリーズ内で視覚的に判断できる事例があった。
『スーパーストリートファイターⅣ』にあるリュウの滅・昇竜拳。
この技を喰らうと男性陣の多くは下アゴにパンチが命中した際に強制シャクレアゴになる。
しかしまこと以外の女性と一部の男性はシャクレない。なぜ女子のまことはシャクレるのかは謎。
シャクレ化をまぬがれた男性キャラは美形扱いされる人たちだった。バルログ,ガイ,コーディー,フェイロン。
美形なはずのケンはシャクレるけれど、『ストⅡ』や『ストⅢ』のボコボコに負けた顔がインパクトあったのでそういうのがケンらしいと制作者が思ったんでなかろうか。
『ZERO』のときは色男扱いされたリュウもシャクレる。リュウが美形だったのは『ZERO』時代かぎりのようだ。
ZEROリュウも今では希少な存在である。