ナッシュのデザインとジョジョの奇抜な髪型人物

B! P L

ナッシュの外見でおそらく一番に目を引くのは前髪。
彼は前髪がピョコーンと出ている。そういうピョコ毛を持つ格闘家はストシリーズに何人もいる。その中でも特に分厚さと存在感がある。
友人のガイルとともにどうやってヘルメットを被るんだろうと普段の空軍の生活に疑問が差しこむ髪型である。
並みの軍人キャラには使われないようなデザインだ。だいたいは短髪が多い。ロレントとか『KOF』のハイデルンとか『DOA』のバイマンとか。

そんな奇妙な髪型のナッシュとガイルに影響を与えていた架空人物がいる。
今回はそのお話をする。

髪型の元ネタ―ガイルの

ガイルの髪型の参考になった人物は、ジャンプ漫画『ジョジョの奇妙な冒険』第三部に登場するポルナレフだったとまことしやかに語られてきた。
ガイルのwikipediaのキャラクターの原型にもそういう話がある。
制作者がポルナレフの名前を出したインタビュー記事は『週刊ファミ通』1998年9月25日号に載っていたそう。わしは未発見。

ウィキペディアの文章から考えると、たまたまデザイン案に出していた逆毛男を『ジョジョ』のキャラ(※ポルナレフのことを指したつもりがJ・ガイルと混同)に似ていると言う人がおり、それをきっかけに『ジョジョ』からキャラ名を拝借したようにわしは解釈した。
原案の時点ではポルナレフのつもりで描いてないようである。

ストクロの設定資料集

その他のガイルの髪型に言及したソースには『ストリートファイター X 鉄拳 アートワークス』がある。
92ページ記載の制作者のコメントを転記。ここにはポルナレフの名前は出ない。

もともとはナイフ使いのシルケ・メラーというキャラクターがガイルの原型でした。最初はクールな外見の軍人キャラクターでしたが、ドットを打つ担当者が垂直に立っていた髪をどんどん横に伸ばしていって、周囲も「面白いからもっとやろうぜ!」と煽っているうちに、現在のようなシュトロハ…個性的な髪型になってしまいました。

”ナイフ使い~”は『ストⅡ』の制作時に新規格闘家の案にあった没キャラ。本記事最後の段で画像を紹介する。
春麗の前身が「智麗」という元の娘の18歳だったのと同じ事例。『ジョジョ』のような既存作品とは関係なし。

本物のポルナレフの髪はコック帽のごとき縦長で、毛先が末広がりなガイルとは横幅が違う。
それはガイルのグラフィック担当の人とその周りの遊び心で横に伸びていったらしい。

シュトロハイム似の髪型

結果的に、ガイルの髪型は『ジョジョ』第二部に登場するドイツ軍人のシュトロハイムのほうに似た
シュトロハイムもガイルと同じ軍人キャラ。通じるものがあって寄せたのだろうか。
あるいはアレンジを加えていって偶然似たのかもしれない。

今でこそ『ジョジョ』はジャンプ非購読層も名を知る人気漫画だが、世間に知れ渡ったのが第三部からだと言われる。
第三部を知っていても、それ以前に連載した第二部のことはなんにも知らない人もいるのである。うちの兄はそういうタイプ。ポルナレフのことはわかるがシュトロハイムには「だれそれ?」な反応をしていた。
ガイル担当者も逆毛頭をワイドに広げていく際にシュトロハイムのことは考えてなかったかもしれないのだ。たぶんそういうことにしておいたほうが無難。

ただし『ストリートファイターZERO』に新登場したローズは『ジョジョ』第二部のリサリサそっくりと評判。
ローズの制作に関わった人は第二部を知っていた。ローズは西村キヌ氏がデザイン担当したという話がある。ソースは↓
2015年1月4日のあきまん氏のつぶやき

髪型の元ネタ―ナッシュの

ナッシュには髪型のモデルになった人物がいる。
長年、ファン間で予想されてきたとおり、荒木飛呂彦氏が描いた『ジョジョの奇妙な冒険』第三部に登場する花京院典明だそう。
当時の制作者のポストとその返信(この記事では返信部分まで表示できず)→https://x.com/ome_yocan/status/1448292162223763457

ガイルの頭髪がポルナレフ的なサムシングだったことに関連して、ポルナレフと仲がよくて髪型が個性的な花京院からデザインを考案することになった模様。

情報元の制作者の解説

ポスト元の人物について、ほぼ確定だろうという紹介をする。
2025年現在のSNSでは「庚」または「CANOE」というハンドルネームを名乗っておられる。
が、『ストリートファイターZERO』にクレジットされた制作陣にそういった名前は載らない。
GameStaff@wikiで『ZERO』関連のページを探ったところ、藤井 紀秀 【ふじい のりひで】という人の可能性大だとわかった。
藤井氏ははじめ「NORIHIDE = Fnyako.F」といった本名関連の名を名乗り、イングリッドが初参戦した『カプコン ファイティング ジャム』(以下『カプジャム』)にて「CANOE-PELIKO」と名乗ったそう。
そして『カプジャム』からイングリッドを流用追加した『ストリートファイターZERO3↑↑』では「CANOE-P」だったそう。

ご本人のポストも『カプジャム』の話が多かったり、過去に藤井氏が担当したキャラ(バーディーとオロとイングリッド)の絵をX(旧Twitter)プロフのヘッダー画像に載せていたりする。

当時の制作者が言及した人について(推測)

CANOE氏が名前を出した制作者名のうち、”ベンガスさん”は間違いなく『ZERO』および『ストⅤ』のメインデザイナー。
以前は名義が二転三転する人だったが『ストⅤ』以降はBENGUSの名で復帰している。
そのほかの制作者については情報が少なくて判断が難しいが、たぶんこの人? というスタッフ名は次の通り。

GUESS ポール星人先輩≓ALIEN POLE
F原さん≓FUJIHARA(ZERO1ではクレジットなし?)

このポストに返信した人物・岩崎篤嗣氏(※ZERO1~3に参加した人)の言葉の中に「うっしーくん」という制作者もいる。
その方はたぶん『ZERO』では「SEIGO "USHI" KAWAKAMI」とクレジットされた川上誠吾という人? とわしは思っているが確証無し。

返信の返信の中には「高岡さん」、「こけしさん」という人物も出てくる。
名前に高岡とつく人には『ヴァンパイア』や『ストⅢ』のスタッフの高岡徹という方がいるので前者はその人? と思うが後者はサッパリわからない。

FUJIHARA氏の功績

『ZERO1』スタッフロールに名前が見つからないのになぜF原さん≓FUJIHARAだと見なせるのか? と疑問に思う人がいるかもしれない。
そんなするどい人向けに資料を一つ載せる。出典は1998年11月30日発行『ALL ABOUT ストリートファイター ZERO3』の387ページ。

ZERO3ナッシュ&さくら&かりんのアレンジ暴露絵
ナッシュの後ろ髪をツンツンした感じにアレンジした人がいる。それがFUJIHARAという人。
その他のアレンジは『ZERO2』初出のさくらのセーラー服の袖のデザインと,元ネタは漫画かつ『ZERO3』初出のかりんの制服を赤い色に変えたそう。
かりんは原作漫画の『さくらがんばる!』ではさくらと同じ白セーラーだった。

FUJIHARA氏がナッシュのハリネズミヘアー以外になにをどう関わったかは明確でない。
ポストに出てきた名前と似ているので”F原さんの神ドット”と称賛された人と同一人物じゃなかろうか。
ただしナッシュに関わったF原さんが二人以上いる可能性もある。

推定初期設定画のナッシュ

後頭部の髪の毛がツンツンする前はどんなのだったの? と興味の湧いた人がいたらいいなぁと思う。
はっきり初期のデザイン画だと伝わる絵はない。
しかしそれっぽいものはネット上に見つかった。
好奇心旺盛な人向けに、ナッシュの推定初期設定画の部分を貼り付ける。
元画像は非売品の『ストリートファイターZERO 設定資料集』に載ってたやつ。社内向けの資料でないかと噂されている。
Amazonのページに、過去に取り扱いのあった形跡が見つかったので一応リンクを貼る→ストリートファイターZERO 設定資料集 の設定資料集 スト2

社内向け?ZERO1の初期設定画ナッシュ
後頭部がツルっとしてますね。
こう表現するとハゲとるみたいやないかと誤解されそうだが他にどう言い表したらいいのか。
すとーんとしてる? 平らというと絶壁みたくもあるがそれでいいか。

ドット絵は非ツンツンだが参考絵はトゲあり

初期ナッシュは顔の前の髪に個性が集中していて、後ろのほうは普通だった模様。
なお対戦中に動かすドット絵(※ZERO2までの。詳細は別記事で紹介)では後ろ髪が常にフラットだった。ツンなし。
そこは細かいデザインを省略したのだろうか?
『ZERO3』からはツンツンな感じに修正されていた→補足説明ーZERO3ナッシュの髪型加筆

おそらくはドットに描き起こす際の参考絵の時点で、後頭部の毛がすこしトゲトゲしていた↓

ポスト主は『スト6』ディレクターの中山貴之氏。
カプコンには2001年に入社した(けど格ゲーが作れないからといったん辞めた)そうで、『ZERO』制作には関わってない方である。
だからスタッフとはいえこういうプレイヤー目線なつぶやきが出るんだとわしは思った。

中山氏の経歴についてはインタビュー記事に本人の発言が載っていた。興味ある人はどうぞ→【特別対談】『ストリートファイター6』中山貴之・松本脩平 ×『ゼンレスゾーンゼロ』李振宇―「触りやすさ」と「奥深さ」をどう両立する? 娯楽が溢れる現代で「ゲームの面白さ」を知ってもらう方法

閑話:ナッシュのモーションの印象

わしもナッシュがガイルそっくりな攻撃をしていながら動きが違うことに良い意味の引っかかりを覚えていた。
ソニブーだけでなくサマソも、ナッシュのほうが難易度の高そうな技の出し方をしていた。その動作に古強者ふるつわものらしさがあった。
こういう熟練者っぽいモーションを見るとナッシュが先輩な感じもする。外見はガイルより若いけれど。

ナッシュが若く見えるのは『ZERO』が『ストⅡ』の前の舞台だからかとプレイ当時のわしはちびっと思っていた。
ギャラリーモードかなにかで見かけた、『ストⅡ』のリュウ,ケン,春麗と『ZERO』の3人が一緒に並ぶイラスト(イケノ氏の絵)では明らかに外見年齢に差が出ていた。
キャラのバックボーンすらよく知らない状況であっても察しがついた、これは過去の時代の『ストリートファイター』なのだと。
それゆえ『ZERO』の時代ではガイルも『ストⅡ』より若いのかなと思っていた。『ZERO』ならナッシュと同じくらいの年頃に見えるのかと。
しかし家庭用版『ZERO3』で登場を果たしたガイルは『ストⅡ』とあんまり変わらなかった老け顔貫禄が極まっている。

中山氏公開のナッシュの頭部絵

中山氏は他にもナッシュの頭部の絵を公開していた↓

2019年4月4日の投稿。このつぶやきだけだと『ストⅤ』で作った資料? とも読めそう。でも違う。
同日に『ZERO2』さくらステージの春日野宅の間取り絵が公開されたので十中八九『ZERO』の開発時から残っていた絵。
描いた人は『ZERO』時代のBENGUS氏できっと間違いない。わしにとっては見慣れた画風。

もしナッシュの(推定)初期設定画も公式から一般公開されることがあったら、前項に貼り付けた画像は消します。公式が出すものを見たほうがいいと思うので。
わしはなんでもいいからナッシュのことを知りたいんだというナッシュに飢えた人に向けての情報提供は惜しまないものの、公式と反目するつもりはない。

前髪以外の花京院的部分

ナッシュの花京院要素はその長い前髪だけにとどまらない。
作中の花京院が博識だったり分析力が高かったりするところも取り入れられたように感じる。
ナッシュの細くてやや目尻がつり上がった目も、小説における花京院の外見の描写に「切れ長の目」という説明があるそうで、小説の設定が参考になったのかもしれない。
あるいはただの偶然かもしれない、ガイルにとってのシュトロハイムの髪型なのかもわからない。

もう一つ、花京院の影響でこうなった? と思わしき箇所がある。その話は次回へ続く↓

次の記事ナッシュの美形設定の有無

おまけ:シルケ・メラーの設定案画像

『ストクロ』設定資料集のガイルのデザイン話にあがった没設定の資料がある。
ここに貼るのは記事に必要な一枚だけ。『ストリートファイター 30th アニバーサリーコレクション インターナショナル』でたくさんの開発資料が閲覧可能。気になる人は定期的にやっているセールのときにでも買おう。

ストⅡ没キャラのシルケ・メラー
逆毛男です。これがポルナレフに似ていると言われた絵のようにも見える、が実際どうかは知らない。
設定部分を文字に書き起こすと次の通り。
6.シルケ・メラー マーシャルアーツ 27才 181cm 85kg
元グリーンベレー隊員。IQ220の頭脳は敵の心理を完全によむ。殺人マシーンの異名をとる。戦闘のプロ。高速移動などの特殊能力がある。性格は残忍。
必殺技:ジャンプ百裂ナイフ

”IQ220の頭脳は敵の心理を完全によむ”が若干ナッシュと近い気がした。
『ZERO』系列のナッシュには相手の動きを読めているようなセリフがいくつもある。『ストⅤ』にもあるっちゃある。
ガイルの原型がこの没キャラだと言われるので、ガイルを意識して作ったはずのナッシュにも影響が多少あったのかもしれない。
花京院が賢かったというだけでナッシュがインテリ風になったのではないかもしらんと思ったので紹介した。

『ZERO』に関係ないけど”高速移動などの特殊能力がある”の部分も『ストⅤ』のナッシュに当てはまっている。この没ネタが着想元になったかは不明。

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