5.SFCスターオーシャン+TOP【アドベントカレンダー2024】 2024/12/6 B! P L 『スターオーシャン』は、1996年7月19日にエニックス(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用アクションRPG。 トライエースが開発を担当した、サイエンスフィクションとファンタジーを融合させた独特の世界観。 本作はスターオーシャンシリーズの第1作目。48メガビットという当時最大容量のROMカートリッジを採用したことを大きく売りにしていた。 この大容量を活かし、バトル中のボイスを豊富に取り入れた点が新しい試みだった。 ただしSFC初の試みではなく、『スターオーシャン』の前に1995年12月15日発売のSFCソフト『テイルズオブファンタジア』(以下『TOP』)にて同じ大容量ROM&キャラクターボイスありのうえに歌ありオープニングもやっていた。 SFC『TOP』を制作した人たちの一部が立ち上げた会社がトライエース。この2作はところどころゲームの雰囲気が似通った。 ## ゲーム概要 文明が未発達な惑星ロークに住む若者のラティは人が石化する謎の伝染病に出くわす。 仲間とともに伝染病の治療方法を模索する中、何もないところから突然に男女が現れる。 男女はロークの調査にきていた地球人で、ローク人の石化の原因を知っていた。 石化したローク人を治療するために300年前のロークへ冒険に出る物語。 ### リアルタイムバトルシステム 敵との戦闘時はキャラクターを直接操作するアクションゲーム。 『TOP』の戦闘時は格闘ゲームや横スクロールアクションな画面だったが『スターオーシャン』は斜め上から俯瞰するサイドビュー。単一画面で闘うベルトスクロールアクションのような感じ。 十字ボタンで自由な移動ができず、攻撃する敵を指定して攻撃ボタンを押すと敵に自動で近付くか、Yボタンを使用し移動先を決定したら移動するという一癖のある動かし方をする。 ### 仲間加入者の選択 主要なメンバー4人のほか、4人の仲間を7人の中から入れることができる。 それぞれに加入条件があり、中には隠し要素級の厳しい手順をふまえる必要のあるキャラもいる。 加入した仲間によって物語の展開が一部変わったり、ゲットできるアイテムがあったりと、何度プレイしても新しい発見のある作り込み。 ## 豊富なやり込み要素 容量が潤沢でなかったSFCのソフトでありながら寄り道できる要素が多い。 これらはのちのシリーズにも受け継がれた。 ### プライベートアクション(PA) 街に入る直前にYボタンを押すと、仲間たちがその街を好き好きに滞在するようになる。 これをやることで起きるイベントや得られるアイテムがあり、またキャラクターの隠れた一面が見えたりして、物語本編とは関わらなくても面白さに繋がる要素。 ### アイテムクリエーション(IC) 素材アイテムを使って新たなアイテムを作るシステム。 うまくアイテムを作るには後述のスキルシステムでスキルレベルを上げる。またそれぞれのICに対応するタレントの有無にも成功率が左右される。 ICでのみ得られるアイテムもあり、豊富なアイテムが生み出せる。 ### スキルシステム 店でスキル書を購入したりイベントなどで入手したりすることによりスキルを習得する。 レベル制のあるスキルはスキルポイントを割り振り、キャラクターの成長を細かくカスタマイズできる。 戦闘向けのスキルから先述のICのためのスキルまで種類はいろいろ。 ### 感情値によるEND分岐 プレイ中は確認できない隠しパラメータの感情値がある。 キャラからキャラへの好感度を示す数値。この値の高い低いによってエンディングのシーンが微妙に変わる。 同じパーティメンバーでプレイしてもまったく同じ結末になるとは限らないのがミソ。 ## テイルズオブファンタジアとの類似点 『スターオーシャン』はナムコで『TOP』を制作したチームが関わった。その都合で随所に『TOP』の面影がある。 音楽が桜庭 統(さくらば もとい)氏の作で共通しているほか、戦闘時のシステムがアクションゲーム的。 制作者に格ゲー好きがいたそうで格ゲー作品っぽいデザインのキャラもいる(例:『TOP』の雑魚敵のビッグフット≓『ヴァンパイア』のサスカッチ,『スターオーシャン』の仲間キャラのペリシー≓『ヴァンパイア』のフェリシア)。 それ以外の似た部分をピックアップする。 ### 過去へ行くストーリー 両作品とも、重大な目的を果たすために過去へ時代をさかのぼる展開になっている。 『TOP』は宿敵に有効打を与えるすべを探す(≒術を使える未来に変える)ために。 『スターオーシャン』は身近な人々の石化を治すのに必要になる、過去でのみ採取できる治療素材を得るために。 ### ステータス画面の顔グラフィック ドット絵によるキャラクターの顔のイラストがステータス画面で表示される。 ファイナルファンタジーシリーズでも一時期はメニュー画面でドット製顔グラが表示されていた。 顔グラに独自性があるわけでないものの、画風に面影があった。 共通のデザイナーがいたのでどうしても似るのかも。 Graphic Designerのうち、YOSHIAKI INAGAKI(稲垣喜章),MARI KIMURA(木村まり),YUMIKO NISHITANI(西谷由美子)のお三方は二作に関わったらしい。 稲垣喜章氏は個人サイトを立ち上げていたが現在消失。2023年に稲垣氏の訃報が流れており、その関係でレンタルサーバーとの契約切れになった模様。 WEBアーカイブにてサイトのデータは閲覧できる。興味ある人はどうぞ。『TOP』絵多し→NOSTALGIC PHANTASIAN 「格ゲー中毒だった」というコメントのあるページがこちら→ビッグフット #### メニュー画面のアイテムの絵 普通のRPGだとアイテム名とせいぜいその効果が一文で表示される、という簡潔な文字説明が多かった。 しかし両作ともにアイテム一つひとつにドット製のグラフィックが用意される。 説明も効果とは関係ない予備知識があったりして、細かく作られていた。 ### よくしゃべるボイス アクションゲームなどでキャラクターが掛け声を発することは他のSFC作品でもよくあった。 しかし『スターオーシャン』はストーリーの導入部分で英語のナレーションが数分間に渡り喋ったり、『TOP』も(今では珍しくないが)オープニングで歌が丸ごと一曲流れたりしていた。 登場するキャラクターにもボイスはあり、また個性豊かな性格の人物がそろっている。 ### 糸目で途中離脱する親友 『スターオーシャン』のドーンと『TOP』のチェスター。 両者ともに目が細い顔立ちで、序盤は友人の主人公とともに戦うが早々に不在となる。 ドーンは永久に離脱するので序盤限定の味方キャラ。 チェスターは中終盤で復帰するが、特技がなく通常攻撃を繰り返すだけのちょっと物足りない性能をしていた。 リメイクではチェスターに技が追加され、再加入時の低レベルを引き上げるイベントが足されて性能の底上げがなされた。 一方のドーンはリメイクでも変わらず永久離脱。ドーン…… ## 中途半端な箇所 本作の発売時期は任天堂次世代機のニンテンドー64がリリースされ、旧世代機であるSFCの勢いが衰えたうえに、PSが隆盛を極めつつある時代だった。 発売を急いでいたのか、作りかけらしき部分が点在する。 見ようによっては作りが甘い箇所として受け流せるが、それ以前の問題に感じたところがある。 ### 不自然な設置物 わしが一番引っかかったのは終盤のダンジョンのシルヴァラント遺跡にある、**押しも意味のないスイッチ**。 また、そのダンジョンに近い東側のマップには**なにかの建造物**があるが、入り口が閉ざされていて行けない。 これらは意味を持たせる気があって配置したもののはず。 なにもないのなら普通、スイッチは撤去し、意味ありげな建造物も岩壁なり崖なり、あるいは雪深い地域なので雪山なりのオブジェに変えるのが無難だといちゲーマーは思う。 そういう直しをする余裕もなかったのかもしれない。 ### SFCテイルズオブファンタジアでは 兄弟作的なSFC『TOP』にも充分に作りこめなかったらしい部分がある。 一例がメニュー画面に表示される仲間たちのHPやTPの状態が見れる一覧。 表示領域が6等分されていてその中に一キャラずつ配置される。 しかし今作は5人パーティが限界である。 6人目の仲間がいればしっくりくるレイアウトなのだが、**最後まで一枠空いた状態が続く**。 当初の予定では6人目の加入者がいたとおぼしき痕跡だ。 いったい誰が6人目? というとステータス画面の顔グラフィックがある**ブラムバルド**。弓と魔術で戦う予定があったが容量の都合で削除されたという話あり。 弓キャラのチェスターがこのときは技無しだったのを考えると、ブラムバルドも弓技なしで術オンリーの後衛キャラだったのかもしれない。そうなると**まんま『スターオーシャン』のロニキスだ**。 もしかしたら『スターオーシャン』も納期のほかに容量がキツくて諦めざるをえないところがあったのだろうか。 #### リメイクのTOP リメイクのPS版『TOP』は1998年12月23日に発売され、藤林すずという6人目の仲間キャラが追加された。 SFC期で実現できなかった追加要素だ。 地味にメニュー画面の表示は人数がどれだけ増えても適用可能なスクロール式になっていた。この表示方法は奇数人パーティのSFC版が一番向いていると思うがその反省なのだろうか。 ブラムバルドは相変わらず戦わない。 前衛キャラがクレス一人という状況で後衛キャラを増やしても戦術的な新しさがない、そもそも魔法攻撃はアーチェとクラース,弓攻撃はチェスターができるしな、というゲームバランスの都合上仕方ないのかも。 あとブラムバルドを戦わせられなかった無念はロニキスでいくらか報われた感じがある。 『スターオーシャン』もPSで早々にリメイクをやっていたら、SFCで不自然に頓挫した箇所に再挑戦できたかもしれない。 そこはテイルズシリーズのやり方を真似してもよかったとわしは思う。というよりそうしてほしかった。謎多き遺跡周辺で本当はなにをやりたかったのか? リメイクは後年出たが、原作リリースからだいぶ間が空いたのと、これが本当に最初から計画していたことなのか? と疑問を感じる部分があってスッキリできていない。マーヴェルの悲壮な設定が変わっちゃったよ…… ## 続編の状況 PSの『スターオーシャン セカンドストーリー』(以下SO2)のほか、3~6とシリーズは続き、『SO2』の外伝作な『スターオーシャン ブルースフィア』も出た。 順調にシリーズは続いていっているようである。 わしは3までプレイしたきりあとのことはよく知らない。 3の副題(Till the End of Time)と内容的に3でシリーズは終わりなのだと思っており、あとはオマケ扱いに見ている。 似た例で、漫画『ハンター×ハンター』で主人公のゴンが父のジンに再会できたところで個人的にエンディングを迎えたと判断し、あとの暗黒大陸編はオマケの外伝話だと解釈している。そう思っておけば仮に漫画が絶筆になってもまあオマケだしと受け流せる。 ### 初代リメイク 『スターオーシャン』のリメイクは2007年12月27日に『スターオーシャン1 First Departure』としてPSPに発売された。 その後、さらに2019年12月5日にはHD版『STAR OCEAN First Departure R』がPS4とNintendo Switch向けに発売。 PSP版では簡素な絵だったのがHD版は厚塗り絵になり、戦闘時の難易度が手応えのある方向へ調整されるなど力が入ったリメイクな気がした。 イベント面は基本的にPSPのまま(一部削除あり)。 PSP版で追加されたマーヴェルが元の姿にもどるイベントはスタッフ的に心残りはない仕様だったのか。SFCから設定を変え、ハッピーな報酬を得るにふさわしい困難な課題を作中のイベントに用意しないアレを。 わしはまた納期が足りなくて簡単に済ませた箇所なのかと思ったが、修正の好機があってもこうなら根本的なセンスが違うのかもしれない。 でもそれで喜ぶ客がいるならかまわない。 シリーズに泥をぬるようなことをしない程度にがんばってほしい。ソシャゲの運営側の癒着話は「いつかやると思ってた」とすんなり受け入れたくらいにはあんまり信用していない。 ゲーム #ARPG #アドカレ2024