4.SFCサンサーラ・ナーガ2【アドベントカレンダー2024】 2024/12/5 B! P L 『サンサーラ・ナーガ2』は1994年7月15日にビクターエンタテインメントから発売されたスーパーファミコン用ロールプレイングゲーム。開発元はアドバンス・コミュニケーション。 アニメーション監督の押井守氏と脚本家の伊藤和典氏が手掛けた異色のゲームで、前作はファミコンで発売された。音楽は川井憲次氏、イラストは桜玉吉氏の作。 今作は前作と直接的な繋がりはなく、別個の竜の物語。 竜といっても主人公の敵となる邪悪かつ西洋的なドラゴンとは違い、インド神話の蛇神のような世界の創造と破壊を象徴する存在。 戦闘システムは古式ゆかしいターン制コマンドバトル。このころは同じ戦闘システムのゲームがたくさんあった。 ## ゲーム概要 主人公は竜使いのギルドの竜苑で育った竜使い。 竜の卵とともに捨てられていたところを拾われた孤児で、そんな主人公に寄り添ったのは幼くして天才といわれた竜使いの少女・アムリタだった。 いつか卵が孵かえったら竜の謎をともに解こうと約束していたが、ある日、アムリタが竜苑に火を放ち逃亡した。 主人公は孵化したばかりの人語を話す白竜と共に、8つの階層から成る世界「カーラチャクラ」を冒険し、竜苑に反逆したアムリタを追跡する。 ### 竜の子育て 最初は人間である主人公と、その相棒の白竜(竜の種類orカラー名はセト)の二人旅から始まる。 第一階層でオス竜の巣にいくと白竜が子を宿し、第二階層のブヴァルローカでは出産&育成する。 仔竜は戦士系の蒼竜(ニロ)と魔法使い系の紅竜(ラト)と僧侶系の緑竜(ハリヨ)の3種類から2体、第一階層で購入するお守りによって選べる。 同じ色の竜も選べるらしい。わしはやったことがない。 #### 固有と流用グラフィックの差 確定で僧侶系の白竜がいるのでバランス的には青と赤がいいのだろうか? しかし成長すると青と赤の戦闘時の顔グラフィックが色以外、白竜と同じになる。母親似なのはいいが絵面的におもしろみがない。 緑は半目の眠たげな独自の顔。わしは固有グラフィック優先で緑竜を入れた。 ゲームのタイトル画面にもあくびをする緑竜が選出されていて、ちょっと推されている。前作の仲間の竜も最初は緑竜の姿で産まれ、成長次第で4種類のいずれかの色に変わった。 緑竜を連れたからといってストーリー面での変化はなにもない。 ただ緑竜が習得するマントラ(魔法)に【サンサーラ】というタイトル回収的なものがあるところにわしは特別さを感じた。 ### 戦闘でレベルアップしない主人公 主人公はどれだけ戦闘しても強くなることはない。 主人公は基本的に装備品によって強化していく。 例外は階層を一つ上がったときにHPが増えること。最終的にHP1600まで上がる。 その代償とばかりに今まで通ってきた下の階層には戻れなくなる。 戻れない理由はゲームを進めていけばわかる。 ちなみに世界観的にはもともと行き来はできたようだ。それがとある事情により一方通行になってしまった。 ### 壊れる武器防具 一部を除いた装備品のすべてに耐久度があり、装備して戦闘を重ねるとだんだん壊れかかっていく。 完全に壊れると装備品がなくなるため、予備の武器防具を確保しておく必要がある。 装備品に使用回数のあるゲームは他にもいろいろあるが、このゲームに限ってはストレス要因になっていてあんまり良い要素でない。 シミュレーションゲームの『ファイアーエムブレム』だったら、安価な武器で倒せる敵には優先的に安い武器を使う、貴重な武器は強いが使用回数に限りがあるのでここぞというときに使う、などの判断もゲームの醍醐味になっていた。使用回数を回復する杖を使えば修理できるがその杖にも限りがある。 このゲームでは使用回数に限りがあることの利点は特に感じなかった。 また、どれだけ使うと壊れるかの目安が表示されず、戦闘終了時に壊れそうだというメッセージが表示されるだけ。 いつ壊れるかヒヤヒヤするのが精神衛生上よろしくない。エンカウント率も高いし。 このあたりは不評だったためか、リメイク版では撤廃された。 ### そば処のはらたま 八つの階層の八つの世界に1店舗ずつ(1~64号まで)存在する立ち食いそばチェーン。 スタンプラリーがあり、その階層のすべての店で食事してスタンプを集めると景品をもらえる。 ただの回復とアイテムゲットのサービスに留まらず、ゲーム進行の情報源となる役割もある。 階層がまるごとはらたまオンリーの世界もある。 #### 店の名前の元ネタ 「はらたま」の名前には語源があるそう。 押井守氏がチーフディレクターとして参加したアニメ版『うる星やつら』にあるセリフの「はらたま! きよたま!」(祓いたまえ、清めたまえ)だと言われる。 作中ではお祓いをするときの呪文だそうで、ゲーム内に同名の魔法もある。 【ハラタマ】は白竜が使えるマントラ(魔法)で、効果は敵単体をマヒ状態にさせること。 【キヨタマ】も白竜が使えるマントラで、効果は敵全体をマヒ状態にさせること。 なぜ麻痺効果なのかはわからない。 ## 見た目に反した重い世界観 桜玉吉氏によるほのぼのとしたイラストと、おとぼけなセリフ回しによるギャグっぽい世界。 ……のようでいて、ストーリーを進めるとシリアスな部分が現れる。 一つひとつ陳述するには一記事では無理がある。選りすぐりの印象に残った部分だけ載せる。 あまり説明が多くない作品ゆえに解釈は人それぞれに分かれるはず。 自分なりの意見をまだ持ててない人の閲覧は控えたほうがよいと思うので折り畳みにする。 既プレイヤーか、自分の初見感想にこだわりのない人が見てってください。 アムリタの仔竜 アムリタの連れていた竜もまた第二階層にて仔竜を出産していた。 しかし卵の状態ではなく、母竜の腹を食い破って産まれたのだと病院の看護師は言う。 このゲームよりあとに描かれた漫画作品の『ハンター×ハンター』にも通常は卵の形で産まれる生き物が母親の腹を破って誕生するシーンがある。 最凶最悪な敵の産まれ方はこういうものなのかもしれない。普通じゃない、より狂暴な演出で現れると。 なおアムリタが連れた母竜は出産時に亡くなり、アムリタは逃げるようにして仔竜とともに病院を去ったという。 この仔竜は黒い見た目の竜。主人公の連れる白竜と対になるような外見をしている。 アムリタがお尋ね者となった詳しい事情説明はなかった気がするが、おそらくこの不吉な黒竜を竜苑の者が始末しようとしたときにアムリタが抵抗したせいで、アムリタは追われる立場になったんでないかとわしは思っている。 終盤に見られるアムリタの記憶の中にある「ギルドは、いずれ こうした りゅうが うまれることを しっていながら その じじつを ほうむろうとした。」をわしはそんなふうに解釈した。 カオスドラゴン戦前 アムリタとの対決がある。そして、勝利したあとにはアムリタが自分に代わって黒竜を倒すよう主人公に頼んでくる。 アムリタは自身の竜を殺さねばならないとわかっていながら手を下せなかった。その葛藤はプレイヤーにも理解できることだと思う。 白竜を従えその子供を二匹育てあげたプレイヤーも、竜たちに愛着が湧いたはずである。特に子供たちを戦闘に連れていく段階までと、そのあとのヨワヨワな子らのレベルアップが大変だった。 また、カオスドラゴン戦の開始時の黒竜のセリフには、孤独を嫌がりアムリタを捜すような発言がある。 黒竜は主人のアムリタとともに居たかった様子がうかがえた。 黒竜が体に秘めた力は邪悪だったが、主人に向ける想いは普通の竜使いが従える竜と変わらなかったらしいのがせつない。 アムリタが非情になれなかったのは、黒竜が最期までアムリタを慕っていたことも関係するのかと思うと、それも重い。 カオスドラゴン戦で主人公一人になると カオスドラゴンはアムリタの仔竜に寄生する、災厄をもたらす竜。 世界を滅亡に導く竜を倒すことが主人公たちの最終目的。 やるかやられるかの死闘のさなか、仲間の竜たちがHP0かつ主人公だけが元気な状態でいると、不意に問いかけがくる。 「**ずっといっしょにいてくれる?**」と。 これに対する選択肢はどれを選んでも結果は同じで、近くのセーブポイントまで戻される。 このセリフおよび選択肢による**反応が重い**とわしは思った。 いいえを選ぶと「ならばしね!」と敵意を明確に示され、はいを選ぶと「うそつき!」とののしられる。 両方とも拒絶の意図がこもっているのは同じだが、特に「うそつき!」が意味深に感じた。 「一緒にいてほしい」という願望があっても、その望みを裏切られた経験があるから出てくるセリフかと思った。 実際このラスボス戦が始まる前に主人公は単身のアムリタと対峙しており、アムリタが仔竜をひとりぼっちにさせていた。そのことを指すのだろうか? カオスドラゴン戦後の展開 ラスボスを倒したのち、場面は主人公が旅立つ直前の第一階層に戻る。 今までの冒険はなかったことになったか? と最初はとまどうシーン。 でも冒頭とは違う部分がある。主人公の名前が白竜に名づけた名前になっているのだ。 そのほか、物語の始めに逃亡していたはずのアムリタがいる。主人公が第二階層で白竜の子供に名づけた名前を言う事務員もいる。 極めつけは卵から孵った白竜が主人公の名前を名乗ること。 これらはみなが輪廻転生し、前世とはちがう生き物に生まれ変わったことを暗示している。竜苑を出奔していないアムリタの説明によるとそう解釈できる。 わかりやすい説明のないシーンゆえに正解と呼べるかわからないものの、わしはこの結末を次のように受け取った。 主人公たちが冒険の目的を達成しても世界の滅亡は止められなかったが、滅んだ世界は再生を遂げた。新たな世界にはカオスドラゴンがおらず、破滅の危機が及ばない平和が訪れた。 ### 輪廻の竜 ゲームタイトルのサンサーラ(saṃsāra)はサンスクリット語で輪廻を意味する。 作中にもサンサーラとは生まれ変わることだという説明はある。 ナーガ(Nāga)はインド神話で蛇神≒竜を意味する。 ゲームタイトルは「輪廻転生する竜」といった意味になっており、前作もふくめてこの作品は輪廻転生が主題になった。 生まれ変わるということは一度死ぬということでもあり、それがまた重たい展開に繋がった気がする。 #### 他作品のナーガ 多少古めの作品だが「ナーガ」の知名度がずば抜けているのはラノベの『スレイヤーズ』に登場する自称リナのライバルのナーガ。 あの高笑いが個性的な女魔道士には白蛇サーペント のナーガという蛇絡みの通り名がある。本人のミドルネームと合わせてインド神話の蛇神と関連づけた命名だと思う。 この記事にちらっと名前を出した『ファイアーエムブレム』には、『スマブラ』にもいるマルスが主人公の、アカネイア大陸の作品にナーガという人物がいた。 作中、竜に変身するマムクートという種族がおり、その種族をまとめていた王がナーガだった。 これも神話からとった名づけだと思う。 その後もFEシリーズではナーガとつく魔導書や竜に変身するキャラ(クルトナーガ)が登場した。 ## リメイク作品 シリーズは『サンサーラ・ナーガ2』で終わりだが、1と2を合わせてリメイクしたソフトがあった。 その名も『サンサーラナーガ1×2』。2001年11月14日にビクターインタラクティブ ソフトウエア(のちにマーベラスエンターテイメントに吸収合併)より発売された。対応機種はゲームボーイアドバンス。 一つのソフトに複数のタイトルが入っている。『ドラゴンクエスト』の1と2が合体した『ドラゴンクエストI・II』がSFCとゲームボーイにあったのと似た感じ。 リメイク作ではクセの強かったプレイ感覚がかなり調整されていた。 演出面ではSFCのほうが良かったと言われる部分もあるが、おおむねプレイしやすくなった良作だとわしは思う。 SFCは普通にやるとしんどいところが多い。GBA版がなにかの形で配信されないかと思う。ニンテンドーオンラインのGBAとか。 でももしSFCのほうが配信されたら、そのときはもう裏技を使ってのプレイをお勧めする。 男主人公なら名前をダップ、女主人公なら名前をパリラにするとデバッグモードで有利に進められる。壁すり抜けもできるよ! あとラスボス戦の前にセーブ欄は2番目に移したほうがいいかも! ゲーム #RPG #アドカレ2024