サガットの体重―スト1から海外版の設定に至るまで紹介&考察

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『ストリートファイター』の初代のラスボスだったサガット。
その後はベガにボス格を譲り、リュウのライバルの一人なシリーズ常連のムエタイ格闘家で居続けている。
サガットが登場するたびに注目を集める部分がある。
性能,人間関係,闘う目的,ツルツルさ加減……
人によって一番気になる部分はさまざま。
今回は体重について重点的に考える。

この記事の補足&後編にあたる記事はこちら→サガットの体重―現実の長身格闘家や低体重者ほか

体重の変遷

サガットが本家シリーズに登場した作品は『スト1』,『ストⅡ』,『ZERO』,『ストⅣ』,『ストⅤ』。
体重は順に、119キロ,78キロ、109キロ,78キロ,98キロ。
作品によってばらつきはあるが、筋骨隆々な男性らしく重い体重のようである。
この中で2度、同じ体重が使われた。『ストⅡ』と『ストⅣ』の78キロ
もっとも低体重なこの数字が昔から物議をかもした

高身長に不釣り合いな軽さ

『ストⅡ』で決まったサガットの体重は78キロ
それだけを知ったら重いなぁと思うけれど身長が226センチ
彼は2メートルを超える大男である。
筋肉ムキムキで200センチ台の超高身長でいながら体重三桁に届いていない。
182センチのベガが80キロだというのにベガより軽い。
この体重を知った人々は軽すぎる,おかしいと口々に取り沙汰した。

ボディマス指数

身長に対する適正体重という概念が国際的にある。BMI値というやつである。
[体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]と計算をして、結果が22に近いほど標準的な体型になるという。
もちろん骨や筋肉の重さはまったくの度外視。
計算上は肥満型であっても実際は引き締まったマッチョ体型な人もごく普通にいる。あくまで簡単な目安である。
また、この計算式では身長が低いほど痩せに、高いほど肥満に判定されやすい
それが関係あるかはわからないが、一般的にBMI25以上を肥満とするところを、アメリカは30以上からと線引きがズレこんでいるそう。BMI22~23ぐらいの人をガリガリ扱いするケースもあるとかなんとか。

サガットのBMI値の一覧

参考として一般的なBMI計算式に照らし合わせた結果を表にまとめた。
『スト1』のみ身長が213.5センチなので計算は『スト1』身長に準拠。それ以外は226センチ。
ついでにサガットが並外れた高身長者につき、高身長者(と低身長者)向けな新しいBMIの計算式でも算出した。
この計算式は169センチだと従来の計算と結果は同じになる。こちらもBMI22が基準値
気になる人は高精度計算サイトのロイド・N・トレフェゼンによるBMIの新しい指標で計算してみよう。

スト1 Ⅱ&Ⅳ ZERO ストⅤ
体重(kg) 119 78 109 98
従来BMI 26.11 15.27 21.34 19.19
新BMI 23.23 13.21 18.45 16.59

『ストⅡ』サガットのBMI値は15.27
BMI18を理想とするシンデレラ体重を通り越して骨皮筋右衛門ほねかわすじえもん体重だ。
一般的にBMI値は「18.5〜24.9は平常値」「18.5未満は低体重」に分類される。
この低体重はBMI16未満になると健康を害するリスクが高まると言われ、医者からは太るように指導される状態だそう。
リアルにこんな人がいたらバトルどころではない

新BMIと低体重なキャラクター

トレフェゼン教授の指標で産出されるサガットのBMI値はもっと悲惨でBMI13.21。
これと同等な瘦せ型を170センチに置き換えると体重は38.3キロになる。
170センチの人が38キロしかないのと同程度の低体重だと考えると、どれだけ異常な軽さか想像しやすいことと思う。

他作品のゲームキャラには新旧BMIともに13程度な人がいる。
『ブレスオブファイアⅡ』のニーナ(160センチ34キロ),サムスピシリーズの橘右京(約176センチ約41キロ)。
ニーナは飛翼族という翼の生えた人外。右京は不治の病をわずらい時々吐血する病人剣客。
適正体重の面で考えると、そういう特殊な事情を抱えた人たちとサガットが同類だった。

しかしトレフェゼン教授の提唱する計算式はまだ一般的な認知度が低い。
新BMI話はここだけに留めておき、以降は従来のBMI値をメインに話を続ける。
じゃあなんで話題に挙げたのか? というと、読者の理解の一助になるかと思ったからである。
従来の計算だと高い身長になるほど肥満寄りに分類されるにも関わらず、サガットが極度に低いBMI値だということが伝わればよし。

海外のサガットの体重

サガットの体重が283lbsという情報を英語圏で見かけた。キロに直すと128.367。
どうやら海外版の『ストⅡ』シリーズでは日本版と体重設定が異なるらしい。
しかし海外版無印では四天王のプロフィールが見当たらない。英語版の説明書はカプコンタウン公式サイトのStreet Fighter II 英語版のページで閲覧可能。
日本の説明書には四天王たちの身長体重は掲載があったが、無印時の英語版では確認できなかった。

ストリートファイターⅡターボ
四天王がプレイアブルとなった改良版『ストⅡダッシュ』では海外版でも誕生日や好きなもの等のプロフィールが公開された。
ダッシュのほうの確固たるソースは見つけられなかったが(※あった。追記)、そのバージョンアップ版の『ストⅡターボ』のプロフィールはゲーム画面で確認できた。
身長は7フィート4インチ。センチに直すと223.52 cm。日本は226センチなので3センチ低い。
↓が海外の『Street Fighter II Turbo: Hyper Fighting』のサガットのプロフィール画像。

海外ストⅡターボのサガットプロフ

ストリートファイターⅡダッシュ
※2024年10月25日、海外のメガドライブ版『ストⅡダッシュ』の説明書を発見。
↓が『Street Fighter II: Special Champion Edition』のサガット。

海外ストⅡダッシュのサガットプロフ

スーパーストリートファイターⅡ
海外の『スパⅡ』のも確認をとったところ、ダッシュ&ターボと同じ体重かつ身長だった。
情報としては先に出したターボの画像だけで事足りるものの、のちの改良版との差異確認のため掲載。
正式名称は『Super Street Fighter II: The New Challengers』。

海外スパⅡのサガットプロフ

スーパーストリートファイターⅡX
その他、日本では『スパⅡ』にXが付く豪鬼追加Verの海外版は『Super Street Fighter II Turbo』と表題された。
海外『スパⅡX』のサガットは7フィート5インチ=226.06センチ,303lbs=137.438キロと説明書に載った。身長は日本版の数値に近付いたが、体重はこれまでの海外版『ストⅡ』設定より重くなった。
以下の画像は今は無きGameTekによるMS-DOS版のもの。

海外スパⅡXの説明書サガット

海外版体重の一覧と日本版ストⅡ比較

日本での『ストⅡ』サガットの身長は226センチで体重78キロ。
海外のXまでの『ストⅡ』サガットの身長は223.52センチで体重128.367キロ。
海外の『ストⅡX』サガットの身長は226.06センチで体重137.438キロ。
これらを小数点も込みで体重およびBMI値をまとめるとこうなる↓

Ⅱ&Ⅳ 海外Ⅱ 海外ⅡX
体重(kg) 78 128.367 137.438
従来BMI 15.27 25.69 26.89
新BMI 13.21 22.34 23.25

新旧BMI値ともに、海外版では基準値の22以上を保てている。常識の範囲内な体重になった。
国外だとサガットは低体重者ではなかったようだ。

ストⅣの再設定

サガットは『ストⅣ』で再度『ストⅡ』と同じ体重になる。
それは日本版のほうの体重。ヒョロヒョロの78キロである。
その数字を海外版にも適用させたらしく、海外の人も「たったの172ポンド(≒78キロ)しかないの?」と話す様子が残っていた。→What's with the weights? Super Street Fighter IV

国内外で設定を共有するなら、海外版の128キロか137キロにしてもよかったんでないか。
仮に日本の過去作の設定準拠なキャラばかりの中でサガットの体重が増えたとしても、誰も批判はしなかったと思う。もとがガリガリすぎた。

ストⅡの人気にあやかった仕様か

1999年リリース『ストⅢサード』から2008年リリース『ストⅣ』まで、実に9年間も間が空いていた。
シリーズ制作が長年途絶え、もう続編を作られないかと大部分の人が思っていたころに『ストⅣ』は現れた。
この記念すべき復活作において、Ⅱで登場した格闘家はすべて参戦を果たした。

Ⅱ寄りな仕様の諸々は、一世を風靡した『ストⅡ』にいろんなものを近付けることで旧来のプレイヤーに関心を持ってもらおうとした結果でないか、とわしは思う。
具体的には『ストⅡ』で「サガット軽すぎ即身仏そくしんぶつ」とイジったような日本のプレイヤーにまた話の種にしてもらえるよう配慮したのだろう。
日本人の制作者が多いため、海外でのサガットの体重がどうだったかはあまり重要視しなかったと思われる。

断り書き

……サガットを即身仏だと揶揄する例は架空の話である。
そんな例えツッコミをする人が実在したかわしは知らない。読者の方は真に受けないように。
即身仏を知らない人はお坊さんのミイラとだけ認識しておいてください。知ってても日常生活で活かせるタイミングはないでしょう。

ストⅤで増量したけど・・・

『ストⅤ』では全体的に体重適正化を図られた。
さすがに海外勢とも設定を共有するとなると日本の創作あるあるの「キャラの体重がやたらと軽い」を見直す必要が生まれたようだ。一部変更なしな人もいるが。
その改革に伴いサガットも増量した。
が、それでも98キロ。いまだハリボテ疑惑のある長身痩躯と言わざるを得ない。

華奢なスピードタイプだったキャミィがBMI22台に引き上がったかたわらで、パワー寄りの鈍足タイプなサガットは美容体重(BMI20)未満でいる。
彼は伸縮自在のダルシムのような特異体質でもないのに、どういう事情があるのか。

ムエタイ選手の体重感覚

多少のフォローを試みると、現実のムエタイ選手は小柄な人や細マッチョが多い
サガットのモデルになった格闘家のサガット・ペッティンディー氏(Sagat/Sakad Petchyindee)は元ルンピニーのライト級王者で、身長は165センチ
ルンピニーというのは競技施設の名前のことで、ムエタイの二大殿堂の一つ。それと同等の権威があるスタジアムはラジャダムナンというそう。
この二つは日本の野球でいうセ・リーグとパ・リーグのようなものらしい。

ムエタイ史上最強と謳われたディーゼルノイ・チョータナスカン氏は高身長な188センチだがライト級(≒61キロ)と軽い。BMI値は17.25。
そもそもルンピニーやラジャダムナンではヘビー級選手がいなくてミドル級(≒72キロ)までだとか。

軽量なムエタイ選手につられた?

身軽な格闘家像に引っぱられ、ムエタイの帝王を名乗るサガットを重くすることに抵抗のあるⅡ制作者がいたのかもしれない。
また、その意匠を受け継ぐ後任も大きな逸脱を避けたがっているのかもしれない。
じゃあなぜⅡ制作者がサガットを226センチという超高身長にしたのかは本当に謎である。

なんで初代より+13センチしちゃったんでしょう。
まだ-13の200センチだったら充分に巨人、かつ78キロでもムエタイを知る人は受け入れられたんじゃないかと凡人は思う。これならまだBMI19.5で、ディーゼルノイ氏のほうが身長比で軽い。

独自性の追求か

わしの想像になるが、もしかしたら作り手はサガットをスゴイデカイ異形めいた格闘家にしたかったのかもしれない。
主人公・リュウのライバルならそれぐらいの特別感のあるキャラクター性があってもよさそうな気はする。

しかし『スパⅡ』で230センチのホークが登場すると一番デカイキャラがホークになり、サガットの身長のインパクトは薄れた。
ホークの体重は162キロで超高身長とマッチョさに説得力を感じる重さ。
実にサガットが約二人分の体重である。身長は4センチだけの差なのに。

まとめ

日本の『ストⅡ』ではサガットが異様に軽い体重に設定されていた。
しかし海外版では増量され、常識の範疇な数字になっていた。
『ストⅣ』では国内外共通で『ストⅡ』の低体重が再度使われ、『ストⅤ』で増量を果たしたものの身長比で依然として軽い。
サガットを低体重に設定する制作者の意図はあきらかでないものの、現実にいるムエタイ選手に重量級がいないことからサガットを重くすることに気が引けた可能性がある。

今後もサガットはゴツイ外見らしからぬ美容体重でいくのか、増量するのか。
とうとう2025年の『スト6』Year3夏にサガットの配信が決定した。今回はいったいどんな体重になるのか。Ⅴにも出た6キャラは『ストⅤ』の据え置き体重が多いので変わらない気がするぞ。

サガットの体重設定に関連して、現実での高身長格闘家や低体重者の話も別記事にまとめた。
女性のスリーサイズ話もあるが興味を持った人はこちらもどうぞ→サガットの体重―現実の長身格闘家や低体重者ほか

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