サガットの体重―スト1から海外版の設定に至るまで紹介&考察 2024/10/12 B! P L 『ストリートファイター』の初代のラスボスだったサガット。 その後はベガにボス格を譲り、リュウのライバルの一人なシリーズ常連のムエタイ格闘家で居続けている。 サガットが登場するたびに注目を集める部分がある。 性能,人間関係,闘う目的,ツルツルさ加減…… 人によって一番気になる部分はさまざま。 今回は**体重**について重点的に考える。 ## 体重の変遷 サガットが本家シリーズに登場した作品は『スト1』,『ストⅡ』,『ZERO』,『ストⅣ』,『ストⅤ』。 体重は順に、119キロ,78キロ、109キロ,78キロ,98キロ。 作品によってばらつきはあるが、筋骨隆々な男性らしく重い体重のようである。 この中で2度、同じ体重が使われた。『ストⅡ』と『ストⅣ』の**78キロ**。 もっとも低体重なこの数字が**昔から物議をかもした**。 ### サガットと比較の2m↑格闘家 『ストⅡ』で決まったサガットの体重は**78キロ**。 それだけを知ったら重いなぁと思うけれど**身長が226センチ**。 彼は2メートルを超える大男である。 筋肉ムキムキで200センチ台の超高身長でいながら体重三桁に届いていない。 182センチのベガが80キロだというのにベガより軽い。 この体重は**軽すぎる,おかしい**と口々に取り沙汰された。 しかし226センチという巨体はリアルでそうそう出くわさない。 なじみがなくて巨体に見合った体重は想像がつかない。 そこで実在の2メートル超え格闘家の身長と体重を三人ピックアップした。 日本の著名人のジャイアント馬場氏は209センチで体重は**130キロ~145キロ**、 オランダのセミー・シュルト氏は212センチで体重**132キロ**、 韓国のチェ・ホンマン氏は218センチで体重は**160キロ**だったそう。 三人とも数字を見ると力士のように重たいが、体型は特段太っていない。馬場氏はむしろ手足が鶏ガラのように細いときもあった。 こういった実例から考えると**このサガットをもう一人分は増やしていい**のではないかと思うくらいに軽すぎる。 ## ボディマス指数 身長に対する適正体重という概念が国際的にある。BMI値というやつである。 [体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]と計算をして、結果が22に近いほど標準的な体型になるという。 もちろん骨や筋肉の重さはまったくの度外視。 計算上は肥満型であっても実際は引き締まったマッチョ体型な人も大勢いる。あくまで簡単な目安である。 また、この計算式では**身長が低いほど痩せに、高いほど肥満に判定されやすい**欠点がある。 それが関係あるかはわからないが、BMI25以上を肥満とするところをアメリカは30以上からと線引きがズレこんでいるそう。 ### サガットのBMI値の一覧 参考として一般的なBMI計算式に照らし合わせた結果を表にまとめた。 『スト1』のみ身長が213.5センチなので計算は『スト1』身長に準拠。それ以外は226センチ。 ついでにサガットが並外れた高身長者につき、高身長者(と低身長者)向けな新しいBMIの計算式でも算出した。 この計算式は169センチだと従来の計算と結果は同じになる。こちらも**BMI22が基準値**。 気になる人は高精度計算サイトのロイド・N・トレフェゼンによるBMIの新しい指標で計算してみよう。 | | スト1 | Ⅱ&Ⅳ | ZERO | ストⅤ | | ------ | ----- | ---------------- | ----- | ----- | | 体重(kg) | 119 | 78 | 109 | 98 | | 従来BMI | 26.11 | **15.27** | 21.34 | 19.19 | | 新BMI | 23.23 | 13.21 | 18.45 | 16.59 | 『ストⅡ』サガットのBMI値は15.27。 BMI18を理想とするシンデレラ体重を通り越して骨皮筋右衛門ほねかわすじえもん体重だ。 一般的にBMI値は「18.5〜24.9は平常値」「18.5未満は低体重」に分類される。 この低体重はBMI16未満になると**健康を害するリスクが高まる**と言われ、医者からは太るように指導される状態だそう。 リアルにこんな人がいたらバトルどころではない。 #### トレフェゼン教授の指標であれこれ 新BMIのほうはもっと悲惨で、これと同等な瘦せ型を170センチに置き換えると体重は38.3キロになる。 170センチの人が38キロしかないのと同程度の低体重だと考えると、どれだけ異常な軽さか想像しやすいことと思う。 他作品のゲームキャラには新旧BMIともに13程度な人がいる。 『ブレスオブファイアⅡ』のニーナ(160センチ34キロ),サムスピシリーズの橘右京(約176センチ約41キロ)。 ニーナは飛翼族という翼の生えた人外、右京は不治の病をわずらい時々吐血する病人剣客。 そういう特殊な事情を抱えた人たちとサガットが同類だった。 しかしこの計算式はまだマイナーゆえにどこまで信じてよいかはわからない。 従来の計算だと高い身長になるほど肥満寄りに分類されるにも関わらず、サガットが極度に低いBMI値だということが伝わればよし。 ## 現実の超低体重者 『ストⅡ』サガットはあまりに浮世離れした設定体重と言わざるを得ない。 ムキムキな筋肉は**スポンジか発泡スチロール製のハリボテ**としか思えない軽さだ。 この現実世界にサガット級の痩せ体重で健康な男性が実在するのか? ……と思っていたら一人、写真付きで見つかった。 Snow Manというアイドルグループの**ラウール氏**が身長192cm、体重は57kgと紹介する記事が講談社のニュースサイトにあった。掲載日は2024年2月29日。 情報を信じて計算すると**BMI15.46**。 ガリガリに細いアイドル男性だからなしえる軽さなのだろう。 ### JRAの記録 また、正確な体重の情報はない低体重者もいた。 競馬騎手で有名な武豊氏の、弟の**武幸四郎氏**である。その身長は177センチだそう。 彼も騎手をしていた時期があり、2013年6月9日にマイファーストラヴという馬に騎乗した。 このときの馬の負担重量は49キロだとJRAの重賞レース一覧に記録が残っている→第18回 マーメイドステークス 競馬に慣れない人はこれを見て「騎手の体重が49キロ?」と思うかもしれない。わしも最初はそうだった。しかし違う。 **馬の体に負担させる重量が49キロ**である。 騎手がまたがる鞍や,足をかける鐙,騎手の着る勝負服も含んだ重さなのだそう。 手綱など一部重さに含めないものもあるが、この負担重量よりさらに騎手の体重は軽い。 果たして武氏の実体重がいくつだったのかは不明。 騎手の体重以外に加算される物品の重さは約2キロなことが多いらしく、おそらく47キロほどと推定可能。 47キロだとしたら**BMI15**。49キロのままで計算しても15.64。どちらにしても極度の低体重である。 #### 不健康な体重 武幸四郎氏は過度な減量がたたり、テレビ番組で骨密度測定をしたら70代の老人並みだと診断された噂がある。 体重を減らしすぎると骨まで軽くなり、もろくなるようだ。 もとより160センチ前後の人が多いジョッキーの世界。 177センチの高身長者には苛烈を極めたようで、武氏は騎手を辞めて2018年からは調教師として厩舎を開業したそう。 ジョッキーは減量も仕事のうちだから健康を犠牲にするのは仕方ないのかもしれない。 けれど、体重に低い上限がある仕事に就いていない一般の人は**BMI16を下回るのは避ける**という意識を心掛けたい。 身長の低い人(150センチ以下とか)なら従来のBMI値で16未満と出ても緊迫した状況でないだろうけれど、高身長な人は要注意。 食べても太れないとか食べたくても食べられないという人は高カロリーの栄養補助食品を検索してみよう。通販サイトにもいろいろ売っている。 飲料タイプやゼリータイプなど、噛むことや飲みこむことに難のある人向けの食品もある。 甘い系が多いが探せばコーンスープ味などのしょっぱい系もある。甘い物が苦手な人でもなんとかなる。 しかし健康優良児なはずの格闘家キャラのテーマでなぜカロリー摂取の話に着陸するのか不思議である。 ## 海外のサガットの体重 サガットの体重が**283lbs**という情報を英語圏で見かけた。キロに直すと**128**.367。 どうやら海外版の『ストⅡ』シリーズでは変更があったらしい。 しかし海外版無印では四天王のプロフィールが見当たらない。英語版の説明書はカプコンタウン公式サイトのStreet Fighter II 英語版のページで閲覧可能。 日本の説明書には四天王たちの身長体重は掲載があったが、無印時の英語版では確認できなかった。 四天王もプレイアブルとなった改良版『ストⅡダッシュ』にはプロフィールが公開された。 ~~ダッシュのほうの確固たるソースは見つけられなかったが~~(※あった。追記)、そのバージョンアップ版の『ストⅡターボ』のプロフィールはゲーム画面で確認できた。 ↓が海外の『Street Fighter II Turbo: Hyper Fighting』のサガットのプロフィール画像。 ※2024年10月25日、海外のメガドラ版『ストⅡダッシュ』の説明書を発見。↓が『Street Fighter II: Special Champion Edition』のサガット。 海外の『スパⅡ』のも確認をとったところ、ダッシュ&ターボと同じ体重だった。 身長も同じで、7フィート4インチ。センチに直すと223.52 cm。 情報としては先に出したターボの画像だけで事足りるものの、後の改良版との差異確認のため掲載。 正式名称は『Super Street Fighter II: The New Challengers』。 その他、日本では『スパⅡ』にXが付く豪鬼追加Verの海外版は『Super Street Fighter II Turbo』と表題された。 海外『スパⅡX』のサガットは7フィート5インチ=226.06センチ,303lbs=**137**.438キロと説明書に載った。画像はMS-DOS版。 小数点も込みで海外版サガットのBMI値をまとめるとこう↓ | | Ⅱ&Ⅳ | 海外Ⅱ | 海外ⅡX | | ------ | ---------------- | ------- | ------- | | 体重(kg) | 78 | 128.367 | 137.438 | | 従来BMI | **15.27** | 25.69 | 26.89 | | 新BMI | 13.21 | 22.34 | 23.25 | 海外版では常識の範疇な体重になった。 国外だとサガットは低体重者ではなかったようだ。 ### ストⅣの再設定 サガットは『ストⅣ』で再度『ストⅡ』と同じ体重になる。 それは日本版のほうの体重である。**ヒョロヒョロの78キロ**である。 その数字を海外版にも適用させたらしく、海外の人も「たったの172ポンド(≒78キロ)しかないの?」と話す様子が残っていた。→What's with the weights? Super Street Fighter IV 設定を共有するなら海外版の128キロか137キロにしてもよかったんでないか。 仮に日本の過去作の設定準拠なキャラばかりの中でサガットの体重が増えていても誰も批判はしなかったと思う。もとがガリガリすぎた。 #### ストⅡのイメージ強し 『ストⅣ』はシリーズ制作が長年途絶え、もう続編を作られないかと大部分の人が思っていたころに復活した作品。 一世を風靡した『ストⅡ』にいろんなものを近付けることで旧来のプレイヤーに関心を持ってもらおうとしたのでないかと思う。 具体的には『ストⅡ』で「**サガット軽すぎ即身仏か**」とイジったような**日本のプレイヤーにまた話の種にしてもらえるよう配慮**したのだろう。 ……即身仏だと揶揄する例は架空の話である。そんな例えツッコミをする人が実在したかわしは知らんので読者の方は真に受けないように。 即身仏を知らない人はお坊さんのミイラとだけ認識しておいてください。知ってても日常生活で活かせるタイミングはないと思う。 ## ストⅤで増量したけど…… 『ストⅤ』では全体的に体重適正化を図られた。 さすがに海外勢とも設定を共有するとなると日本の創作あるあるの「キャラの体重がやたらと軽い」を見直す必要が生まれたようだ。一部変更なしな人もいるが。 その改革に伴いサガットも増量した。 が、それでも98キロ。まだまだハリボテ疑惑のある長身痩躯と言わざるを得ない。 華奢なスピードタイプだったキャミィがBMI22台に引き上がったかたわらで、パワー寄りの鈍足タイプなサガットは美容体重未満でいる。 伸縮自在のダルシムのような特異体質でもないのに、どういう事情があるのか。 ### ムエタイ選手の体重感覚 多少のフォローを試みると、現実のムエタイ選手は細マッチョや小柄な人が多い。 サガットのモデルになった格闘家のサガット・ペッティンディー氏(Sagat/Sakad Petchyindee)は元ルンピニーのライト級王者で、身長は165センチ。 ルンピニーというのは競技施設の名前のことで、ムエタイの二大殿堂の一つ。それと同等の権威があるスタジアムはラジャダムナンというそう。 この二つは日本の野球でいうセ・リーグとパ・リーグのようなものらしい。 ムエタイ史上最強と謳われたディーゼルノイ・チョータナスカン氏は高身長な188センチだがライト級(≒61キロ)と軽い。 そもそもルンピニーやラジャダムナンではヘビー級選手がいなくて**ミドル級(≒72キロ)まで**だとか。 身軽な格闘家のイメージに引っぱられ、ムエタイの帝王を名乗るサガットを重くすることに抵抗のあるⅡ制作者がいたのかもしれない。 また、その意匠を受け継ぐ後任も大きな逸脱を避けたがっているのかもしれない。 じゃあなぜⅡ制作者がサガットを226センチという超高身長にしたのかは**本当に謎**である。 なんで初代より+13センチしちゃったんでしょう。 まだ-13の200センチだったら充分に巨人、かつ78キロでもムエタイを知る人は受け入れられたんじゃないかと凡人は思う。これならまだディーゼルノイ氏のほうが身長比で軽い。 もしかしたらサガットをスゴイデカイ異形めいた格闘家にしたかったのかも。 しかし『スパⅡ』で230センチのホークが登場すると一番デカイキャラがホークになり、身長のインパクトは薄れた。 ホークの体重は162キロ。超高身長とマッチョさに説得力を感じる重さである。筋肉量的にはもっと重くてもよさそう。 ### 超えたくない100の壁? サガットは初代と『ZERO』では100キロの大台に載っていた。 しかし『ストⅤ』では三桁に行かず、98キロに留まった。 100キロを超えさせたくないと思う制作者がいるのかもしれない。 この数字より大きいのは抵抗がある、という事柄はいろいろある。 有名なスマホゲームで一部話題になったのは女性のバスト。 実在の名馬を女性擬人化した『ウマ娘』に登場する人物にバスト100センチを超える者はいない。 最高値はバスト99センチで、該当者がメイショウドトウとヒシアケボノ。 ドトウの身長は164センチ、アケボノは180センチある。 後者は美少女ものの作品には珍しそうな巨大さ。これにはちゃんと理由がある。 元馬のヒシアケボノは馬名の由来が第64代横綱の曙太郎氏だそうで、体が大きかった。 現役時代は最重量級の大型馬だと言われ、500キロを超したら大型馬とされる界隈で580キロいったこともあった。580は太り過ぎなせいかレース結果が惨敗だった。 これより上のヘビー級はなかなか出なさそうなキャラでもバスト100を超えられなかった。 しかしイラストやゲーム中のポリゴンは数値以上のサイズ感があると評判。 そのためバスト99センチ設定は**逆サバ読み**と言われているそう。 なんか100に壁があるんでしょうね。 #### 身長を考慮されにくい数字 身長が高くなったら体の厚みが増し、スリーサイズも体重も増える。それが自然ななりゆき。 しかし女性キャラの身体の数値は高身長でも150センチ台ベースで考えがちな風潮を感じる。 特にウエストが50センチ台に留まるケースが妙にある。 一例でストシリーズのローズはセクシーダイナマイトな女性。 スリーサイズは**96・57・86**となっていた。(Ⅴでは設定なし) 身長は178センチ,体重は54キロ。体重は初登場の『ZERO』から変更なし。 ここで世界的に有名な女性モデルの冨永愛氏と比べる。 ニュースメディアのモデルプレスによると冨永愛氏は、 スリーサイズが**81・61・88**だそう。 身長は179センチ,体重は56キロ。 ………… 冨永氏は極限まで無駄な肉をなくした&持って生まれた細長い骨格の人物。 そんな超細身な方が**ローズより腰と尻のサイズで上回っている**。 でも見た目は3Dポリゴンのローズが圧倒的に分厚い。たくましい。 現実に即して考えたらローズのサイズが過小申告である。 ローズの体重については、それだけを見たら現実にありえなくはなさげ。 しかしその数字に合わせた体型に寄せると胸とかもろもろをそぎ落とす必要がある。 これが150センチ台の人だったらこの体重とスリーサイズはまだリアルでもありえそうな気がする。 胸もあの骨太178センチ&巨乳で96は逆サバ読みだったんでないかと思う。 ## 固定観念の打破か受容継続か 情報化社会が発展し、リアリティのある数字かどうか判断できる材料が増えつつある。 それでも夢想の数字に囚われる客層がいる(と制作者が思う)から実態より細めな申告が多くなるのかもしれない。 サガットもまた「サガットは軽い体重でなきゃいけない」と囚われる者がいるから100キロを超えられなかったのかもしれない。 女性キャラのバスト100↑が普及するのが先か、サガットが最新作で100キロ超えするのが先か。 作中に描かれる体型が変わらないかぎり些細な問題ではある。 日本のゲームや漫画に親しむ者には**ファンタジーな数字は慣れっこ**です。 サバ読み批判を避けるために控えめな数字のほうにキャラを寄せていきさえしなかったらなんでもいいです。 やせたかなしい姿のサガットを見たいと思わないです。 イメチェンしたかったら服を着せるくらいで充分です。 なんやかんやサガットも腹筋を出しっぱなし。熱帯の国の人だからナッシュほどの違和感はない。 服といったら『スト6』ベガと『ストⅤ』サガットが半裸に破れマントを羽織るスタイルが被っている。 キャラ分けのためサガットはファッションを変えてくるかもしれない。服装も注目のポイントになってきた。 あ、冒頭の注目例に挙げた”ツルツルさ加減”は頭のことです。注目する層は少数派かもしらん。 Street Fighter 浅広雑学 #サガット