ナッシュとZEROのカラーリング事情―ガイとソドムの色変遷も紹介
前回のナッシュの服装と他社の緑ベスト格闘家ではナッシュに緑ベストは着させにくかった事情を説明した。
ではなぜ黄色orオレンジベストになったか、は不明なまま。
公式見解は無いものの、単刀直入に服のメインカラーで黄色orオレンジ色が空いていたからというカラーリングの内訳を載せる。
また、黄色orオレンジ色のベストの発想に関係しうる軍隊の服の色の話と、ナッシュのほかに色分けの影響を受けていそうな格闘家の話もする。
ZERO1のイメージカラーリスト
わしの色彩感覚で『ZERO1』参戦キャラごとの服の主要な色名を書いた。
ただしナッシュは除外。あのベストを何色と表現していいのかわしには判断がつきかねたので省く。
以下の表を見た人によっては「○○色よりは▲▲色じゃない?」と違和感をおぼえるかもしれない。
細かいことは無しでいこう。主要なカラーに黄色系がないのは確実なので。
ついでに各キャラがどのゲームで初登場したかもまとめた。
キャラ名 | メインカラー | 初登場作 |
---|---|---|
リュウ | 白 | Ⅰ |
ケン | 赤 | Ⅰ |
春麗 | 青 | Ⅱ |
サガット | 紫(パンツ) | Ⅰ |
アドン | 青紫(パンツ) | Ⅰ |
バーディー | 黒 | Ⅰ |
ガイ | 朱色 | FF |
ソドム | 朱色と青 | FF |
ローズ | 赤紫 | ZERO |
ベガ | 赤 | Ⅱ |
豪鬼 | 黒 | ⅡX |
ダン | ピンク | ZERO |
初登場作のタイトルを略さずに表記すると次の通り。
Ⅰ=初代『ストリートファイター』
Ⅱ=『ストリートファイターⅡ』
FF=『ファイナルファイト』
ZERO=『ストリートファイターZERO』
ⅡX=『スーパーストリートファイターⅡX』
自由に使えたカラー
続投キャラは服のイメージカラーが旧作と変わらなかった。
色分けの融通がきくのはナッシュと同じ『ZERO』新規キャラのローズとダンのみ。
ローズとダンは濃淡の差があれど、どちらもピンク系統の色。
ダンは一番弱そうに見える色はピンクと抹茶という意見をもとにピンク道着になったことを考えると、たぶん他キャラとの色分けの概念なく配色が決まった。
ローズは現在ネット上で検索すればモデルになったリサリサが濃いめのピンク色の衣類をまとう姿が出てくる。
これは『ジョジョ』第二部連載時にも見られたカラーリングなのかわしは知らない。
白黒漫画で色を塗る機会は雑誌のカラーページか単行本の表紙であっただろうけれど、わしはジャンプも『ジョジョ』も非購読層なので見ていない。
もし当時の誌面でピンク色に塗られていたのなら、それがローズの配色に影響があったんだと思う。
ローズたちの色決めがナッシュより後回しになっていたとしても、真面目な軍人男性にピンク色は合わなさそう。
だれもいない黄色系にナッシュを当てはめることで順当に住み分けたようである。
緑色も不在
『ZERO1』のころは緑色なイメージカラーの人がいない。
その不足を補うのもあってか、緑色はナッシュのズボンやブーツで消化できた。
これがもし全身黄色系にすると今度は『ファイナルファイト1』のロレントと競合する。
ソドム同様にメイン色を二つ使うのもその後の色分け的に無難だったのかもしれない。
ただロレントは別のカラーリングも原作にあった。
『ファイナルファイト2』のロレントは1の服をそのまま緑に変えた服を着ていた。
仮に緑服仕様で参入するとしたら、Ⅱ既出のガイルやブランカとカラーリングが似るうえ、当時まだZEROコスチュームが決まっていないキャミィと赤いベレー帽部分も被る。
ロレントが黄色服で『ZERO2』に参戦したのは未参戦キャラとの兼ね合いもありそう。
ナッシュのカラーリングは残り物をうまいこと処理した感じがする。似合ってるからいいけど。
しかし色決めの参考にできそうな軍関連の黄色系カラーもある。それは後述。
余談:(パンツ)をつけた理由
サガットとアドンはムエタイパンツ一丁な伝統的ムエタイ戦士である。
伝統にのっとった衣装、いわば正装。フォーマルなドレスコードには引っかかるタイプの正装。
その姿は肌面積が多い。
キャラグラの大半を本人の肌の色で占めている。
面積の小さいパンツをメインカラー扱いしてもいいのかわしは迷った。そこで一覧表ではカッコ書きでパンツと補足した。
連続でパンツパンツ書いてあるとなんだか字面がふざけて見える気もするが、一応は真面目に考えたすえでの表記。
軍関連の明るい服の色
軍隊で使われる服は視覚的に目立たない色か迷彩模様のイメージが強い。
実際そういう格好の軍人をテレビ等で見かける。
しかし反対にやたらとハデな服もある。
わしはミリタリー知識に明るくないため、わかる範囲で戦闘機絡みのハデな色の服をピックアップした。
彩度の高いミリタリー服もまたナッシュのベストの色に影響を与えたのかもしれない。
アメリカ空母の黄色のベストやシャツ
軍艦の上に航空機を搭載するものを航空母艦、略して空母と呼ぶ。
アメリカ海軍では空母で働く航空要員のうち、飛行甲板で作業するクルーは7色のカラフルな上着やヘルメットを身に着けるそう。
くわしい話は以下の外部サイトで↓
空母のクルー=「レインボーギャング」って? 米海軍カラフル作業服の合理性 中国にも影響
遠くから見てもだれがどの役割の人かを判別しやすくするために色とりどりな格好をしているそう。
色の組み合わせで仕事内容が変わってくるらしいけれど細かいことは抜きにしよう。
その中でも目を引く花形的存在が黄色。飛び立ってOKという合図を送るカタパルトオフィサーという役割。
映画『トップガン』においてもちょい役ながらちょっと目立った。
他の戦闘機の出る映画にも映りこむらしいけれどわしはまだ見ていない。
日本版トップガンのオレンジ飛行服
日本映画の『BEST GUY』(ベストガイ)は航空自衛隊の物語で、1990年12月15日に公開された。
見出しのとおり、洋画『トップガン』を意識して作られた映画。
主演の織田裕二氏を筆頭にオレンジ色のフライトスーツを着るパイロットがたくさん出てくる……と聞くがわしは未視聴。内容はほとんど『トップガン』のパクリらしい。
現実の自衛隊のフライトスーツにもオレンジ色があったそう。過去には夏用と冬用で分かれていてオレンジは夏用だとか。
閑話:飛行服の色の私見
パイロットは乗り物に乗ったら服のハデさ地味さが外からわかりにくくなる。
だからカラーリングの自由度が高かったのかなぁとわしは思う。
噂によるとオレンジ色の理由は事故発生時に発見しやすくするため、という目的があったらしい。
消防士の救助服がオレンジ色なのと近い理由。助ける対象が他人か着る本人かで違うけれど。
敵陣地へ行く場合は不時着→敵地潜伏や脱出を考えると地味なほうがよさそう。
自衛が基本の日本はそういうことが無いのでオレンジ色でもよかったんでしょう。
現在のフライトスーツはダークグリーンな色だそう。『トップガン』のパイロットの服もそんな感じの色だった。
増えていく黄色orオレンジカラー
『ZERO1』ではスカスカな黄色orオレンジ枠だったが、『ZERO2』からは違った。
『ZERO2』にて『ストⅡ』のダルシムと『ファイナルファイト』からロレントが参戦。
この二人は黄色い服を着る。ダルシムはパンイチだけど。
また、『ZERO3』では追加キャラに黄色orオレンジな格闘家はいなかったものの、既存のキャラの色合いが一部オレンジ色に変更された。
該当者はガイとソドム。どちらも『ファイナルファイト』出身な格闘家。
二人のメインカラーには赤系が使われる。この配色は『ファイナルファイト』から引き継がれた。
しかし『ZERO3』では赤の色調が変わった絵もあった。
その例が次のBENGUS氏による全身絵。
だいぶ黄色みが強くなっている。
端末のディスプレイ性能にも左右されるが、わしの色彩感覚だと朱色というよりオレンジ色。
ゲーム内のドット絵はもっと赤寄りになっていたとはいえ、イラストではこうだった。
色の話とズレるが、ソドムの胸にある「死」と「心」が混ざった創作文字はシャツに描かれているものらしい。アメフトのプロテクターの上にシャツを着ている姿。
わしは長年プロテクターに直接描かれた字かと思っていた。肩口の袖が布らしく描かれる絵を見たときに勘違いに気づく。
ZERO3アーケードモードの元絵
家庭用版『ZERO3』以降のアーケードモード開始時に表示される半身絵。
ゲーム内では赤みの強いドット絵だったがドット絵に直す前のBENGUS氏の絵はこう↓
さっきの全身絵よりさらに黄色成分が増した。たぶんわしでなくとも朱色とはよべない橙色になっている。
こういう色を赤いと言うケースは柿が食べごろに熟してきたときだと思う。
とくにソドムのシャツはナッシュのベストが同じ色で塗ってあっても許容範囲なほどに黄色寄りのオレンジ色。色抽出してみたらソドムのほうが赤みは強かった。
こちらの絵もゲーム内ドット絵ではもっと赤い発色だった。ドッターとイラストレーターとの意図に差が出ていた模様。
対戦時に動かす標準色ドット絵が赤いので、ドッターさんは既存ドットの赤色に寄せておきたかったのかもしれない。
なお『ストリートファイター30th アニバーサリーコレクション』内の『ZERO3』だとこの絵のドットグラフィックは無い。
製品としてはアーケード版を移植しているため、そこもアーケード準拠になっている。
代わりに対戦前に表示される顔グラフィックが使われる。
ファイナルファイトでは逆転現象発生
ガイとソドムの二人とも、原点の『ファイナルファイト』だとイラストでは赤い服で、ゲーム内だとオレンジ色に近かった。
当時のデザイナーがガイとソドム(とその他のキャラの)絵を一枚の紙にまとめたポスター画像をX(旧ツイッター)で公開していたのでリンクを置く。見たい人は見てってください。
2022年6月13日のあきまん氏のつぶやき
外部のサイトにガイでソドム(ステージ2ボス)に挑むシーンのスクショがあったのでリンクを貼る。こっちはゲーム内ドット絵の参考画像。
『ファイナルファイト』駄菓子屋での連コインは元祖重課金? 小学生のおこづかいをみるみる吸い込んだ名作【メモリの無駄づかい】 - 電撃オンライン
ゲーム画面のガイはギリギリ朱色と言えそうな色だけれど、ソドムはオレンジ色にわしは見える。
『ファイナルファイト』時代からすでに色の振れ幅があった様子。
当時はいろいろと制限の多い時代。もしや赤色のドットが使えなかった? と最初わしは予想を立てたが、火のエフェクトや他キャラ(激昂したアビゲイルやジェシカのドレス)で赤色を使っていた。
仕方なくオレンジ色で代用したわけではなさそう。
赤イメージカラーなストキャラ
ガイとソドムが参戦した『ZERO1』にはすでに赤い服を着る格闘家がいた。
ケンとベガ。二人とも主要なメンツである。
そのほか、『ZERO3』ではケンのオマージュで赤い制服をまとう(ようにカプコンの制作者が改変した)神月かりんも登場した。
あと『ZERO2』で追加されたザンギエフも【赤きサイクロン】の異名のとおり赤いキャラではある。パンイチだけど。パンイチキャラ多くない?
赤いイメージカラーなキャラがだいぶ増えてきていた。
作品統合による色分け
『ファイナルファイト』単体で見れば赤い服の主要な格闘家はガイとソドムだけだった。
しかしストシリーズに合流すると他のキャラとカラーリングが被る。
そこで赤色枠をケンたちに譲り、空いているオレンジ系統の色へガイとソドムを移動させようとした、のかもしれない。
BENGUS氏の絵で見比べるとナッシュのベストの色とガイたちが被ってくる。
だがすでに赤色枠が4人占めている状態。
オレンジ色で3人固まる程度はなんでもない被りである、きっと。
その後のカラーリング
ガイとソドムの『ZERO3』後の衣装は……ソドムは赤いがガイの場合はバラつきがある。
『ストⅤ』のシャド研だとソドムは赤でガイはオレンジな服。
ガイはⅣのキャラデザ絵でもオレンジ色に塗られていたりした。そういう配色で通すのだろうか?
しかし『ストⅤ』本編不在,『スト6』は押しかけ弟子が主役級な待遇を受けていてガイ自体の参戦が遠のいた感がある。
服の色以前に登場できるかどうかが喫緊の問題となっている。
各種まとめ
ナッシュのベストの色は他キャラとの兼ね合いで黄色系に落ち着いた感がある。
しかし日本の制作者が知りえたミリタリー関連服にも黄色およびオレンジ色のハデな服もあった。
黄色とオレンジの中間色な軍用の有名な衣服は見当たらなかったものの、もしかしたら現実の軍用品もナッシュの配色決めの参考になった可能性がある。
そのほか、『ZERO3』ではそれまで赤い服だったガイとソドムがオレンジ色に服を塗られるケースがあった。
それは他キャラとのメインカラーの重複を解消するつもりの変化だったのか。
もともと『ファイナルファイト』で生まれたキャラなこと、そして『ファイナルファイト』ゲーム内ではオレンジ色なグラフィックに描画されていたこともあり、ストシリーズのキャラに赤いメインカラーを譲ってあげた、という経緯もあったのかもしれない。
2D時代の工夫か
これらのメインカラーの住み分けは(現在の大画面なテレビ基準でいえば)キャラグラが小さい2Dゲームで起きていた。
描画技術が発展した3Dゲームではまた事情が異なってくるかと思われる。
今後は他キャラとの色被りを気にせずに、凝ったディティールをともなったデザインで登場できるかもしれない……が、それよりもプレイアブルになるのかなこの人たち、という疑問がもたげる。
現在『スト6』にはプレイヤーが使用できる『ファイナルファイト』キャラはいない。
今後追加されるかもしれないし、ガイたちは別ゲーで登場させる予定があるのかもしれないし、ぜんぜんそんなことはなくて放置されるのかもしれない。
どうなっていくんでしょう。とりあえずナッシュの再登場がキビシそうなのは変わらず。