ZERO参戦時以降に表に出てきたガイの設定

B! P L

『ファイナルファイト』シリーズの主役だったガイが、『ストリートファイターZERO』で参戦したのをきっかけにストシリーズでも名の知れた格闘家となった。
ガイの登場作品移動についての説明と、ゲーム内では長らく描写されなかった設定について紹介する。

ストシリーズへの引っ越し状況

ガイはベルトスクロールアクションゲームの『ファイナルファイト』(以下FFとも表記)で初登場した。
開発時の仮タイトルが『Street Fighter'89』だったことから『ストリートファイター』の世界にも登場させよう、という経緯で『ZERO1』に登場したことが『ストⅤ』公式サイトに公開してあった。
以下のページの最後の項目の、<ファイナルファイトのキャラクター>に掲載中。
ROUND 2:伊津野英昭さん 前編 | ゲスト | 活動報告書 | CAPCOM:シャドルー格闘家研究所

2Dから3Dに移行した後は『スーパーストリートファイターⅣ』で親友のコーディーとともに追加され、またクロスオーバー作品の『ストリートファイター×鉄拳』にも参戦した。
それ以降はお祭りゲームにいくつか登場したくらいで目立った活躍なし。

関係者による異論

『ファイナルファイト』の制作に関わっていたデザイナーによると、FFはストシリーズの続編のつもりで作っていなかったらしい話はあった↓
2019年8月31日のあきまん氏のつぶやき

あいにくそういう話は制作者インタビューを公開する『ストⅤ』のページに見られず。
『ファイナルファイト』の制作話はこれ→ FF開発者インタビュー | ゲスト | 活動報告書 | CAPCOM:シャドルー格闘家研究所

二シリーズ間の世界観共有が当初の予定にない後付けだったかは、今のわしにはよくわからない。
制作者全員に同じ情報や意識の共有が必ずできるものかというと、そんなことはないケースが多々ある。
他の制作者の同一意見が確認できないうちは一個人による見解と思っておいたら無難かも。

いろんな認識の食い違い

『ファイナルファイト』のポイズンにも制作者間の認識の差があった。
海外における批判を避けるために追加したニューハーフ設定の話で、FFの生みの親かつニューハーフ設定を発案した西谷亮氏の知らないうちにポイズン設定画に「ニューハーフ」と書き足されたそう。
この影響なのか国内の『ファイナルファイト』もポイズンの性別が女性ではないように扱うものが出た。
その一例がポイズンを”彼?”と呼ぶSFC版『ファイナルファイト』の説明書。カプコンタウンにPDF公開中。

女性が殴られることを問題視する人のいる海外版限定の設定のつもりだったと思われるが、そうならなかった。
西谷氏の考えだとポイズンは女性として作ったらしいため、スタッフの意思疎通の徹底が重要視されてない制作環境に見える。
設定画に他人が文字を書き加えた件のポスト↓
2024年10月21日の西谷氏のつぶやき

ストシリーズ内でもどれが正しい情報なのか迷う事柄はいろいろある。
『ZERO1』の制作期間は3週間だと言う人が居たりいや8ヶ月くらいだと言う人(※こっちのほうが正しそう)がいたり、いぶきのスリーサイズで『ストⅢ』リリース期に公開されたものはカプコン側の資料にないものだったからⅣで新規に設定したり。

ZEROで初登場した師匠とFF2の師匠

ガイの師匠の是空ぜくうが『ZERO』に脇役として存在する。『ファイナルファイト』の世界にはいなかった人物。
さきに存在していたガイの師匠は『ファイナルファイト2』に登場する、マキの父親でもある源柳斎(下の名前は不明)だった。
師匠の判明している名前が片や名字のみ、片や下の名前(あるいは通り名)のみ。そこから同一人物でないかと考える人もいた模様。
この二人はそれぞれ違う人物だと後年明確に決まった

カプジャムの設定

『カプコンファイティングジャム オフィシャルコンプリートガイド』(発行日2005年5月31日)に初めて源柳斎と是空は別人だと説明が載ったらしい。わしは現物を見たことないので伝聞情報。
2D格ゲーのグラフィック流用の低コストゲームかと思いきや、設定の整理もほどこしてあった模様。
しかしお祭りゲームゆえにこのゲームかぎりな設定もあるかもしれず、絶対視はしないほうがよさげ。
たぶんイングリッドの設定は『CFAS』と『カプジャム』と『ZERO3↑↑』全部が違っていそう。とくに『カプジャム』中の『ヴァンパイア』連中とも面識ある設定をほかのゲームでも再現なり深堀しようとしたらすごくめんどくさい気がする。

○代目の武神流継承者

1989年リリース当初の『ファイナルファイト』では、ガイは忍者という設定こそあったが武神流の名前はなかった。
武神流忍術という概念が最初に公開されたのは1990年発売の、『ファイナルファイト』のサウンドトラックだったそう。
正式名称は『Final Fight -G.S.M. CAPCOM 3-』。以下ネット上にあった画像の切り抜き。

ファイナルファイトのサウンドトラックのガイ解説

サントラの解説文では”武神流忍法57代目伝承者”と書かれた。が、この世代数は没に。
『ZERO』以降、ガイは第39代目武神流継承者と説明されるようになる。
『カプジャム』でさだまった師匠たちの世代は是空が38代目、マキの父親が37代目だそう。
ガイはこの二人から指導してもらっていた、という方向で決着がついた。
二人の同じ流派の師匠から稽古をつけられる状況は現実にも起こりうることとわしは思う。師範と師範代から教わるような感じで。

ジャンプ漫画『ハンター×ハンター』でいうところの、念の修行をシャツの裾outスタイルな眼鏡兄さんにつけてもらい、その後は眼鏡兄さんの師匠をした経験のある筋肉ゴリモリ熟女に鍛えられたゴン&キルアと同じようなものと思っていいのだろう、きっと。
ネタバレ防止目的で師匠連中の名前を伏せたけれどたぶん意味ないやコレ。

カプエス2における源柳斎の状態

マキが格闘ゲームに初参戦した作品は『CAPCOM VS. SNK 2 MILLIONAIRE FIGHTING 2001』(以下『カプエス2』)だった。
この世界においてマキの父は亡くなったことになっていた。
SNK側の格闘家の藤堂竜白に父の影を重ねるマキのセリフがあり、荒々しい性格に誇張されたマキであっても肉親への愛情が表現されていた。

マキが逆輸入される『ZERO3』の世界では……ゲーム内での父親に対する言及なし。
闘う目的が『カプエス2』と同じなので全設定が『カプエス2』と同じなのかもしれないし、使いやすい設定部分だけ取り入れてほかは違うのかもしれない。
完全にパラレルワールドと言い切られていた『ZERO3』はのちのシリーズで『ZERO3』要素が採用されていたりする。どういう扱いになるかは後任の制作者次第なところがある。

藤堂家との共通点とレナの空白部分

藤堂竜白について知らない人向けにざくっと説明すると、彼はおかっぱ頭の古武術使いかつ二人の娘の父親
自身の武術を長女でなく次女に継がせたところが源柳斎と共通する。
藤堂の次女は藤堂香澄という『KOF』に参戦歴のある古武術の使い手。
娘のほうは『SNK VS. CAPCOM SVC CHAOS』(通称『エスカプ』)にも参戦した。父より優先されがち。かわいいからしょうがない。

ゆうてマキの姉のレナが武神流忍術を学ばなかった非戦闘員なのかはよくわからない。
藤堂家は長女が病弱なので代わりに次女に武芸を叩き込んだ背景があるらしいが、レナは情報なし。
大多数の人が忘れているような脇役も網羅して紹介する『ストⅤ』のシャド研キャラ図鑑にはレナのページがなかった。そのへんの設定がないのかも。

可能性だけの話

現状ガイとマキは是空に師事した話があるが、レナはない。
もしレナが武神流忍術を使えたとして、是空オリジナルな部分の武神流技と、源柳斎の代まで続いた武神流技の差がレナで判明できたりする?
参戦を果たすにしてもガイが欠場続きはアレなので『ファイナルファイト』のほうでやるのが安牌か。
ちゅうかガイの弟子までプレイアブルになった状況かつアリカの格ゲーキャラにも武神流設定のある人がいる。
ガイやマキのターンが遠のくことを考えると、あんまり闘える人を増やしすぎるのもよくないのかもしれない。

少年ガイの素行

ゲーム内では『ZERO2』ガイEND中に是空が現れる。
人物自体は『ZERO1』ですでにおり、BENGUS氏のイラストおよびオールアバウトシリーズの『ZERO1』のショートストーリーに登場した。

ショートストーリーでは是空がガイと出会ったいきさつについて触れてあった。
ボーイだったころのガイは荒くれていたらしい。
ゲーム内だと義侠心あふれる古風なアンパンマン(≒正義漢)な感じなので意外な過去。

ZERO3でのコーディーに対する穏便な対応

悪いものは悪いとバッサリ言いそうでもあるガイが、『ZERO3』で参戦する落ちぶれたコーディー相手には静観の姿勢を見せていた。
過去の狂暴なおのれを振り返るとあんまり他人のことをとやかく言えないと感じたせいもあるのだろうか。
でもガイの不良設定を考案した時点ではたぶん囚人コーディーとの接し方まで見通しをつけていない。
なぜなら『ZERO2』ガイステージの背景にて『ファイナルファイト』ENDの調子のまま恋人のジェシカとイチャイチャするコーディーが登場していた。
『ZERO3』でコーディーを登場させるまではコーディーが囚人になってしまう案はなかったっぽい。

ガイが大学受験に失敗した背景

具体的にガイが是空に師事する年齢はぼかされている。
確実なことは大学受験に失敗したあとにアメリカへ行って修行を積むうちに『ファイナルファイト』発生の流れ。高校以前の出会いである。

大学受験~のくだりは『ストⅤ』の是空のアーケードモードにある『スト1』兼『ファイナルファイト』のEND絵に描かれる。
『ファイナルファイト』制作時にもそういったガイの渡米のきっかけは考案されていた様子。制作者のポストをまとめたファンサイトがありました→鳳仙花 ガイが旅に出た理由。 ファンサイトでまとめられているのと同じ制作者が2022年にまた同じようなポストをしていた

着想元の俳優について

アクション俳優なショー・コスギ氏は大学受験に失敗したあとにアメリカへ行った。
ガイの渡米はその事実にあやかったものだそう。
「ショー・コスギってだれ?」と思う人が年代的に多くなってきたので説明しておくと、氏は忍者映画のNINJA役(トンチキ要素強めらしいのであえてアルファベット表記)で一躍有名になり、80年代のアメリカでニンジャブームを巻き起こした。忍者なイメージが強い俳優。
この方の息子には同じくアクション俳優なケイン・コスギ氏がいる。
父親がNINJA役でヒットを飛ばした一方で、息子は忍者な戦隊物の『カクレンジャー』にブラック役として出演していた。

ストシリーズで増えた設定と公開された設定

源柳斎以外のガイの師匠な是空の存在と、不良少年なガイの過去はおそらく『ZERO』の制作者が決めたこと。
『ファイナルファイト』の人気者なガイに人間的な厚みを持たせようとしたんでないかと思う。

『ストⅤ』では是空が参戦し、そのアーケードモードでガイの受験失敗描写がEND絵に描かれ、『ファイナルファイト』制作時の裏設定がゲーム内で表現された。
これは先人の遺した設定を大事にした結果だと思う。

過去作を大事に、の一環ではあろうけれど是空と『ストライダー飛竜』の合体は賛否が分かれたようだ。
わしは飛竜についての情報が『CFAS』の担当声優が鳥海浩輔氏だったことぐらいしか知らない。是空の特殊能力の是非を取り扱う予定はない。
もっと読むCFASの飛竜がCV.鳥海浩輔の予定だった痕跡

基本的にストシリーズの制作者はカプコンのゲームに愛があると思う……が、なんかガイと相性の悪いことをやらかしたとわしは感じた部分がある。
その話は近日このブログ内で公開する。

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