CFASの飛竜がCV.鳥海浩輔の予定だった痕跡
記事タイトルにある『CFAS』とは幻の格闘ゲーム『カプコンファイティングオールスターズ』のこと。
制作中止となった不遇の一作かつ謎の多きアーケードゲームである。
このゲームにてキャラの声をあてる予定のあった声優を見つけた。
前記事ZERO参戦時以降に表に出てきたガイの設定の最後に触れた小話をこの記事でくわしく紹介する。
知るきっかけ
『CFAS』について検索する最中に『ストライダー飛竜』のFandomを見つけた。
そこでわしは『カプコンファイティングオールスターズ』のページにアーカイブリンクを紹介する鳥海浩輔氏の事務所のプロフィールを初めて知る。↓
https://web.archive.org/web/20080202150206/http://www.artsvision.co.jp/data.php?id=621
そのゲーム出演履歴に”・カプコンオールスターズ(飛龍)”がある。
…………
作品名から「ファイティング」が抜けている。
まことに『CFAS』のことを意味するのか、この書き方だと不安を覚える。
あと飛竜の竜の字が画数の多い「龍」になっている。こういう表記の「飛龍」は空母にあるらしい。
カプコンオールスターズというゲーム
そういった名前のカプコンのゲームが『CFAS』以外にあるかググってみると、2012年に発表された『みんなと カプコン オールスターズ』という携帯用ゲームが引っかかった。
一瞬「携帯ゲームのこと? 飛竜も描かれてるしなぁ」と思いそうになる。
しかし発表時期と前項のアーカイブのリンクの日付では後者のほうが古い。
前項でリンクを貼ったページの保存時期は2008年である。アーカイブでたどれる範囲では2007年1月11日から(誤字な)飛竜の名が掲載された。
鳥海氏のページの最古の記録は2005年10月25日で、その時点では90年代の一部の出演歴だけ載せてあった様子。このときはまだ『カプコンオールスターズ』の名前が載らない。
2005年から2007年の間に増えたもの
2007年時点で増えたゲーム出演履歴を見ると2006年発売のゲーム(最新が2006年7月13日発売の『ペルソナ3』)まで掲載がある。
そのため、『カプコンオールスターズ』も2000年代ごろに出演した何かだとわかる。
2012年のオールスターズなゲームとは関係ない。
正確な表記でない部分が二か所あるものの、この記録自体は間違ってないと考えたら、鳥海氏の演じる(予定だった)”・カプコンオールスターズ(飛龍)”は『CFAS』のことだと断定できる。
タイトル名とキャラ名が微妙に違うせいで真面目にソースを検証することになった。たまたま差分チェックできるアーカイブが残っていたから果たせたこと。
なんにでも同じ検証をやれるとは限らないので運が良かった……が、普通ここまで調べなくてもいいと思う。
またまた未リリース
『みんなとカプコンオールスターズ』は2013年に配信中止となった。原因はGREEと折り合いがつかなかったせいらしい。情報元↓
カプコン、ソーシャルゲーム『みんなと カプコン オールスターズ』『みんなと 大航海フロンティア』配信中止
キャラ集合絵に『CFAS』で初登場予定だったイングリッドがいたが、このゲームも日の目を浴びずにお蔵入り。
このブログでは登場するたびに悲惨な目に遭うナッシュを不運イジリするときがあるものの、イングリッドもたいがい可哀想な子かもしれない。
作中の演出がふびんなのと作品の扱いが不遇なのとはまた意味が違うだろうけれど。
スト6にイングリッド参戦
※2025年7月9日の追記。イングリッドは『ストリートファイター6』のYear3の4人目の格闘家に選ばれた。
ようやくメジャーな格闘ゲームタイトルで操作できるようになった。
これまでは『カプジャム』と『ZERO3↑↑』のコアなプレイヤーしかやらないような場所かつ最弱性能で細々とやっていたのが、大勢のプレイヤーに認知されるようになる。
プレイヤーの反応次第では『CFAS』およびそこで参戦予定だった他キャラ(D.Dとルーク)も復活なるかもしれない。だいぶ難しそうではあるが。
現在のアーツビジョンでの紹介
『CFAS』が開発中止になったため、いつしか鳥海氏の出演歴から消され……るかと思いきや、実は2025年現在も掲載されてある。
鳥海 浩輔 | 株式会社アーツビジョン
てっきりもう削除されたと思っていたら何年も出演歴に残っているらしい。
Fandomの補足はなんのためのアーカイブリンクだったのか? たぶんリンク切れ発生時に都度修正するのがめんどくさいからという保守的理由?
地味にアドレスが変わっているので現行の紹介ページのアーカイブを探っても2000年代のページはない。
飛竜の名前も今なお「飛龍」のまま。
この調子だときっと鳥海氏が退所するそのときまで無訂正でいくのだろう。
アーツビジョンによる出演歴の選別
鳥海浩輔氏は『ストリートファイターⅤ』のナッシュを演じた声優でもある。
ところが鳥海氏の出演履歴欄に『ストⅤ』のナッシュは未掲載。なぜ演じられなかった役は載せててしっかり演じた役は載せないのか。
ストシリーズは世界的にも有名な怪物知名度のゲームだが、そういう名声は利用しない様子。
あんまり頻繫に更新をしないサイトなのだろうか?
鳥海氏ほどの堅実な実績と知名度があったらもう、最新情報を知りたければ該当声優のwikipediaを見てくれということ?
一定以上の売れっ子は事務所の手厚い支援をしなくていい≒古い出演履歴のまま放置、な方針なら仕方ない……
なんて考えていたら2024年放送のギャグ鹿アニメ『しかのこのこのここしたんたん』のナレーション役は書いてある。
しかのこのナレーション>ストⅤナッシュ
アニポケのアオキ役は『ポケモン』が怪物知名度だから掲載されるのはわかる。
しかしトンチキアニメの『しかのこ』に負けるとは……なんでや……
いちおう『しかのこ』全話は見たけど賛否両論なのも納得のアニメで、今後の活動の幅を広げられる経歴かどうかわしはよくわからんかった……
まだナッシュのほうがプラスになりそうな気がするで……
ギャグ系もイケるというアピールには有効なのか?
でも『ペルソナ2 罪』の三科栄吉役ですでにギャグキャラ適性は見せていたとわしは思う。
栄吉もいい演技だった。プレイ中は鳥海氏のボイスだとはまったくわかってなかったけど。『サモンナイト』のローカスも同じく。
ちょっとした疑い
ビッグネームな『ストリートファイター』の名前を載せないのはアレか、
事務所の紹介ページにナッシュの役を載せるのは恥だと思われたのか?
たしかに裸ベストで恥ずかしい格好はしている……でもナッシュ自体はカッコいいキャラのはずなんだ……
ストシリーズには希少な美形設定のあるキャラなんだ……ZEROサガット声優が三木眞一郎氏だと知っていても「違うよ」と言われたらそうかもと思いそうなのと同程度にわしはナッシュが美形キャラとは信じ切れていないけど……
もっと読むナッシュの美形設定の有無
もっと読む追加情報―誌面におけるナッシュの美形言及
話は鳥海氏から離れるが、三木氏は線の細いイケメン役が多いのにサガット役がなんにも違和感なくてビビる。
マッチョなキャラも演じられる人はかなり珍しいと思う。
アニメ>>>ゲームな扱い
出演歴の掲載項目はテレビアニメが先頭に置かれ、次にOVA,外画(※外国の映画の略),CDドラマ,その次がゲームとくる。
ゲームの優先順位の低さはページアドレスが変わる前もほぼ同じ。ただし以前は外画がゲームよりあとの掲載だった。
情報量もアニメの出演情報の掲載が最優先で、ゲームは二の次なのかもしれない。
紹介の順序はwikipediaもだいたい同じなのでそういうものなのだろうと思う。
だが、ジャンルごとに作品名を掲載する,しないの偏りはどこの声優事務所もこうなのだろうか? わしは声優とアニメに詳しくないので界隈の常識がわからない。
ギャラの面ではゲームのほうが金払いが良いともっぱらの噂なのだが。お給金の良さが扱いの軽重に直結しない様子。
FEのヘクトルも未掲載
よく見たら知名度がそれなりに高いはずの『ファイアーエムブレム』のゲームの出演歴も無い。
鳥海氏がFEのなにに出演したかといえばスマホゲームの『ヒーローズ』とSwitchの『エンゲージ』のヘクトル役。
ヘクトルというキャラはもとは『FE 烈火の剣』における主人公の一人な斧使い。なお原作の『烈火の剣』はボイスなし。
『烈火の剣』単体のドラマCDはあるが、『ヒーローズ』がリリースされたあとの2019年の発売で、これも鳥海氏がヘクトル担当。
ヘクトル役を出演歴に掲載しないのならナッシュ役が未掲載でもしゃーない気がする。
主役格かつどこへ出しても恥ずかしくないファッションのヘクトルでこうなら、脇役扱いで普通じゃない服の着方をするナッシュがヘクトルより上な待遇になるはずがない。わしはそう納得する。
謎の残る掲載状況
確認できる範囲で一番古い2005年時点には書かれなかった『CFAS』の配役が、その後の鳥海氏の紹介ページで掲載され続けた。
『CFAS』は2003年8月7日に開発中止宣言が出た(アーカイブ)と言われ、以下のお知らせ文がカプコン公式サイトに一時期掲載されていた。
鳥海氏の経歴に載せようとしたときには、とっくに世に出ないことが決まっていた。
カットしてもよさそうな情報だが、現在に至るまで紹介されてある。変わった状況だと思う。
資料的にはありがたいことである。どんな声優がどのキャラの声をあてるつもりがあったのか制作者サイドしか知りえない情報の断片が一般ピープルでも知れる。
宣伝の役に立ちづらい経歴
しかし宣伝材料としてはムダ情報になりかねない。
『CFAS』の飛竜役をやった(やろうとしていた)と言っても、その演技が実際どのようなものだったかを知る方法がない。出演作がお蔵入りになったから。
これではオファーを出す側の参考にならないおそれがある。
ただ、飛竜は『ストライダー飛竜』シリーズの主人公。
そういった主役格に選ばれうる声質や演技力の持ち主だという遠回りな証拠にはなるのかもしれない。
飛竜担当だった時期
アーツビジョンの公式サイトには載ってないが、鳥海氏は『CFAS』の前から飛竜役をやっており、1999年の『ストライダー飛竜2』の飛竜で採用されていた。
同作のスタッフロール中の「Voice Actor」で一番目に氏の名前を確認できる。
ただし役の割り当ては不明で、声優の欄のトップに名前があるから主人公の飛竜だろうと推測される。
このころのカプコンゲームは演じた声優の名前をクレジットしても、それがどのキャラ役かを明記しないことがあった。
また、『CFAS』が没になったあと、『NAMCO x CAPCOM』(2005年発売)での飛竜役で鳥海氏は続投している。
素人考えだが鳥海氏の紹介ページには『ストライダー飛竜2』か『ナムカプ』の経歴を載せたほうがよかったんでないのかな?
なんで『CFAS』なんだろう。しかも微妙にタイトルとキャラ名を間違えている。
まとめ
リリースされなかったゲーム作品を声優の出演履歴として掲載し続ける(奇特な)声優事務所の公式サイトがある。
未発売ゲームの残滓を得ようとする者にとっては貴重な情報源である。
しかし当の声優の今後の仕事を増やす用途には不向きな情報とも言える。
カプコンの飛竜の役を鳥海氏がやっていたことを伝えるには他に手ごろなゲーム作品(『ストライダー飛竜2』,『ナムカプ』,2015年発売の『PROJECT X ZONE 2』)があった。
ちゃんと発売された作品名を載せたほうが声優本人のためになったんでないのかと疑問を呈したところでこの話はおしまい。
鳥海氏ほどの実力者になったら有志がwikipediaにせっせと情報を足してくれる。
掲載情報にツッコミどころがあっても大した問題にはならんのでしょう、きっと。
先回り弁護:修正してほしいわけではない
アーツビジョン公式サイトの書き方についていろいろ指摘してきた。
行間を読むのが得意な人のうち「これはアーツビジョンに誤字を修正しろと言いたいのか?」と読み取る人もいるかもしれない。
わしはそんなつもりはない。ぶっちゃけ今さら直しても遅いと言わざるを得ない。
まだ鳥海氏が実績少なく名の売れてない時期にこそ「ストライダーの飛竜やってる? じゃあ仕事頼もう」的な綺麗な取っ掛かりを事務所が用意するのがきっと理想的だった。
どっこい、”・カプコンオールスターズ(飛龍)”の表記では、声優に仕事を頼みたい依頼主が「そんなゲーム売ってないんだけど……それに飛龍? 飛竜じゃなくて? カプコンのゲームらしいけどストライダーの飛竜とは別のキャラ?」てな感じに混乱していた可能性がある。
ノイズになりうる文が一つあっても、鳥海氏は他の出演歴で実績と実力を担保できるような声優だったのが結果オーライだと思う。
閑話:鳥海氏をべた褒め
鳥海氏は最初から上手かった。わしの指す”最初”は2000年発売の『サモンナイト』のローカス役のことであり、デビュー年の1996年の作品は知らない。
よく調べたら『ペルソナ2 罪』のほうが1999年発売で『サモンナイト』より早かった。そこんとこ記憶違いしていた。
どっちにしても当時からベテラン声優と遜色なかったとわしは思っている。
そういう思い出補正もあってナッシュ役がハマってるとわしは感じるのかもしれない。
ただ、栄吉役だとか知らない状態で『ストⅤ』ナッシュの声を聞いたときに「おお、ナッシュだ。合ってる人を引っ張ってきたなぁ」と思った記憶はある。
とはいってもナッシュのマッチョさに見合う声か、というとそこんとこの成分はない。
わしのイマジナリーナッシュはマッチョはマッチョでもⅤのようなゴリモリ体型ではなかったので気にならなかった。
それと美形キャラならカッコイイ系の雰囲気が優先で、マッチョ感は度外視したほうがよさそう。この二要素の共存はたぶんムリ。
これがガイル役だとしたら「いろんな意味でシュっとしすぎ」ときっと不満を抱えた。
マッチョさか渋さがないとガイルと思いにくい。その二つともあるEXシリーズのガイル役だった玄田哲章氏はドハマりしていた。
&懸念開陳
鳥海氏は渋い中高年役を演じられるのだろうか? 少年か青年系のイメージしかない。
わしは常々、鳥海氏が『烈火の剣』の約20年後な『封印の剣』のヘクトル役をやれるのか心配している。ナッシュがどうこう言っておいて実はFEも気になっているシリーズ。
お祭りゲームな『ヒーローズ』には『封印の剣』の約5年前な子持ちの烈火ヘクトルが登場していた。烈火出典なのでCV.鳥海浩輔のまま。
声を聴いたところちょっと無理してない? と思った。真・三国無双シリーズのホウ徳(CV.森田成一。『FFX』のティーダ役の人)よりはまだ自然に聴けるとはいえ。
烈火のアゴヒゲヘクトルより外見が老ける封印ヘクトルでさらに年のいった声を出せる気がしなかった。
そのへんは少年役が壊滅的に合わなかった森川智之氏の逆な人だと思う、同じナッシュ声優でも。
キャスティングミスな森川氏のショタ役話はまた別件で。わしの軽微なトラウマでもある。