旗揚げメンバーが抜けていったゲーム会社 2024/11/17 B! P L カプコンは新規IPを立ち上げたような古参スタッフがあんまり残っていない。 初代『ストリートファイター』の西山隆志氏(1991年SNK『餓狼伝説』制作), 『ストリートファイターⅡ』の西谷亮氏(1995年以降株式会社アリカ代表取締役社長), 『スーパーストリートファイターⅡ』や『ストリートファイターZERO』の企画をした船水紀孝氏(2004年退社), 『バイオハザード』や『逆転裁判』1~3に関わった三上真司氏(2005年退社), 『デビルメイクライ』や『大神』に『ベヨネッタ』の神谷英樹氏(2006年退社), 『ロックマン』の稲船敬二氏(2010年退社)……。 退社後はおのおの別のゲーム作りに励んでおられる。 それが本当にやりたかったことなら良いことだと思います、応援したいです。 でもカプコンでゲームを作り続けたかったけれど辞めた人もいる。 この記事はその発端になる情報とわしの感想を(当人比で)短くまとめた。 純粋にゲームやゲーム話だけ楽しみたい人には閲覧をお勧めしません。 ## もと専務取締役の告白 カプコンの体制の不満をはっきり公表した元カプコンスタッフが一人いる。 岡本吉起氏といい、その発言があるyoutube動画→なぜ退職した?カプコン元幹部の岡本が「カプコン愛」を貫き通すことが出来なかった大きなきっかけ 辻本会長の一族でなければ要職に就けない家族経営な会社なようです。 会長いわく一族優遇理由が「親戚は裏切らないから(≒他人を信用できないから)」らしいです。 その言葉がきっかけになり、辻本会長とは縁戚関係にない岡本氏は会長を見限った模様。 苦渋の決断のようだったので”見限る”という単語一つで終わらせるのも違うかもしれませんが、わしはそういうふうに書きます。 ### 岡本氏の粗々略歴 元コナミ社員でカプコン創業時のスターティングメンバー。 人手(プログラマー)が必要だからと、辞めたコナミから同僚を引き抜いてきてコナミ側を激おこにさせたこともあるほど、(良いふうに表現すれば)カプコンに尽力した。道義的には良いことなのか知らない。 当初はデザイナーとして制作に携わったけれど早期にプロデューサー業に転向し、まとめ役が多かった。 アクの強いスタッフを取りまとめた指揮官タイプの人だとわしは認識している。 そのおかげでゲームが売れて会社も大きくなって、充分に高給な職務が岡本氏には与えられたそう。 高い地位に就けているのになぜ退職を? というと自分が高待遇でも仲間がそうじゃない状況に納得がいかなかったから、のようです。 親分肌なんでしょうか。わしには前漢時代の初代皇帝の劉邦みたいに思えます。 仲間にはたくさん褒美をあげたいと思う気前の良さや、本人自体に秀でた実務能力があるかどうか不明な部分と、社長職を狙ってた野心家なところも合わせるとそんな印象。 ## 辻本会長の古傷と悪影響 辻本氏には本当に裏切られた経験があるそうです。 自身が経営していたアイレム(現株式会社アピエス)を他人に乗っ取られたと。 立ち上げた会社を奪われたのは可哀想だと思います。 でもその対策が身内優遇経営で最適解か、というとやり方はたぶんよくなかった。 実力が担保されていないのに重要なポストに居る親類がいて、それで不信感を持った人が現にいるのです。 もしもそういう不信に思った実力者のフォローをできずに人材流出を起こしたのであれば、過去にあったカプコン経営不振は会長が招いた部分も大きいんでないのかと疑ってしまう。 会社のネームバリューが強いおかげで新規に有能な人が集まり、ヒット作を生み出し、何度も危機をしのぎました。 でも実績のある古参をガッチリ繋ぎ止められていたらそこまでのピンチにならなかったんでないのかとも思う。 ベテランがまるっといなくなったから才気ある新人が頑張れた側面はあるでしょうけど、毎年優秀な人が来てくれる保証もありませんし、綱渡りなやり方に感じます。 ### 三国志観ー魏の君主 魏の曹操だったら敵から寝返ってきた人もバンバン重用して国を拡げていったのになぁと思う。張遼とか賈詡かく とか。 特に賈詡は曹操が自身の後継者選びに悩んだときに一番影響を与えた発言をしており、厚い信頼があった。 曹操の嫡男(曹丕)は二度も主君を裏切ってきた人(孟達)を気に入り、嫡男存命中は裏切り常習犯も他国へ逃げだそうとはしなかった。 上が信じれば裏切り歴のある下もちゃんとついていった実例です。 毎回こううまくいく保証はないにせよ、相手の信用が欲しければ自分から信じる姿勢を見せなきゃならんってのは古今東西よく言われることだと思います。 誰にでも裏切りリスクはあるでしょうけど、交通事故みたいなもんでそんな頻繁に遭遇するものではないはず。まれによく事故に遭う人はいますけどまあ特殊例です。 だいたいカプコンに勤める人もまっとうにやってる人が大半なんじゃないでしょうか。奇人変人は多そうだけど。わしが言うのもなんだが。 ## 力量があればよし コネ採用が悪いわけではないです。 任天堂の宮本茂氏は入社前、当時の任天堂社長だった山内溥氏と父親が友人だったそうで、その縁故で面接して採用されたそうです。 大ヒットした『ゼルダの伝説』やら『ポケモン』は宮本氏が手掛けてます。めちゃくちゃ任天堂に貢献した人です。 そこまで華々しい実績でなくていいから、実力を示していれば一族優遇もぜんぜん問題なかったはずです。 ### コネ採用でない血縁者の抜擢例 プロ野球の巨人前監督・原辰徳氏は高校時代、父親の原貢氏が監督を務める東海大相模高校の野球部に入部していました。 入部の前に父親からは、他の部員と比べて7対3で優秀だったらレギュラー入りを考える、といったことを言われたそうです。だいぶわしが言葉を補ったけれどソースは→原辰徳氏 高校の監督でもある父・貢氏の言葉「5分5分の力なら補欠、6対4でも補欠、7対3なら少し…」 監督と親子である以上、部員との実力差が明確にあって初めて周りは認めてくれる、という戒めなんでしょう。 そこまで優秀だったら逆にチームメンバーが放っておかなさそうです。勝つために必要な人だとわかっているから。 そして原辰徳氏は一年生のときから甲子園に出場していたそうです。のちにプロ野球選手になる人ですし、やっぱり強かったんでしょうね。 #### 納得はすべてに優先する 原貢氏のような客観性が辻本会長にもあったなら、きっと周囲が不服に感じるような一族優遇はせずに済んだでしょう。 普通は親類を入社させるなとまでは誰も言わないと思います。 周囲の納得感がないままに「親類だから」だけで重要なポジションに抜擢する判断が、ギクシャクのもとになっていそうです。 せめて手柄を立てさせてから据えるのが無難なんじゃないでしょうか。そう都合よくできない? だったら用意したらよろしい。 曹操だって後継者にどうかな~と過去に思ってたお気に入りの息子(曹植)に手柄をあげようとして職務と兵を渡すお膳立てはしていました。当の放埓息子が酒で酔っぱらってて台無しになったけど。 根回しが不十分な状態で素人上司を押し付けたら周りの反感を買ってもしゃーないと思います。 ## まとめ この件は明確な正解というものがない話だと思います。 人材が流れたから他会社のゲームで面白いものが生まれることもあります。 一時期ネット上で話題になった『エルシャダイ』は元々カプコンにいた人たちが多く制作に携わっていました。経済情勢の悪化のため未完成品でリリースしたらしくて実際ゲームのデキの賛否は分かれますが。 それと元カプコン出身で現任天堂所属の藤林秀麿氏はめっちゃ評判高い『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』のディレクターやってます。カプコン所属のときから謎にゼルダ作品を複数手がけていた人なのでむしろ正しい居場所に収まった形。 ただ、カプコンのゲームを作りたい人はちゃんと残ってやっていける環境になっていてほしいです。 カプコンIPのゲームを手掛けたい人にとって「会社が気に入らなければよそへいけばいい」は通用しません。 近頃は外注も多いですけど狙って外注先に勤めるのも難しそうです。 今いる人たちがなるべく快適にゲーム制作に携われるようになったら理想的です。 カプコンは気前のいいことを2024年3月に発表していて→カプコン初任給6万5000円引き上げ 25年度から30万円 血族偏重の体制は変わるんでしょうか? まだよくわからないです。 criticism min4000字