7.SFC聖剣伝説2【アドベントカレンダー2024】 2024/12/10 B! P L 『聖剣伝説2』(せいけんでんせつ2)は、1993年8月6日にスクウェアから発売されたスーパーファミコン用アクションRPG。海外では『Secret of Mana』のタイトルで知られる。 前作『聖剣伝説 〜ファイナルファンタジー外伝〜』はゲームボーイで発売され、FFシリーズにふくまれていた。魔法にケアルがあったりチョコボがいたりとFF要素が濃かったものの、『聖剣伝説2』からは独立したシリーズになる。 前作にもマナの樹はあるが、今作との直接的なつながりはない。 ## ゲーム概要 はるか昔、高度な文明を築いた人類がマナの要塞を作り出し、それに怒った神が神獣を遣わしたことで世界が滅亡しかけた。 その後、聖剣を携えた一人の人間によって平和が訪れた。しかし時は流れて歴史が繰り返そうとしていた。 聖剣を引き抜いた少年のランディは、仲間になるプリムとポポイとともに、マナの要塞を復活させようとする帝国を止める旅に出る。 ### モーションバトル 従来のRPGによくあるターン制コマンドバトルでなく、リアルタイムで進行するアクションゲーム風のバトル。 プレイヤーは最大3人のキャラクターを操作でき、マルチタップを使用すれば3人同時プレイもできた。 パワーカウンターというメーターがあり、一度攻撃をすると0%になり、ふたたび100%までたまる。 体感的には一度攻撃したあとはクールダウンな間を置いて次の攻撃を当てる必要がある。そういったアクションのクセは続編の『聖剣伝説3』にも受け継がれた。 今作は連続攻撃も可能だがだいたい**威力が激減するか攻撃が回避される**。あと少しのダメージが足りないときや雑魚敵の動きを封じるときには有効だが、メインの攻撃には向かない。 ### 武器システム 剣・斧・ヤリ・ムチ・弓矢・ブーメラン・スピア・グローブの計8種類の武器がある。 各武器はボスを撃破するか宝箱で入手する武器パワーを得て、鍛冶屋のワッツに依頼して最大9段階まで強化できる。 ただし剣だけは特定の条件下でのみレベル9になる。 ### 熟練度 武器および魔法は使うほどに熟練度があがる。 熟練度が上がると武器はボタン長押しによるタメによって出せる必殺技が増え、魔法は威力が増す。 武器レベルおよびマナエネルギーの入手数がレベル上限となる。武器パワーだけあっても武器を鍛えてなければ熟練度は現在の武器レベルの上限値で頭打ち。 Maxの武器レベルは9,魔法は8だが両方とも熟練度は8.99で止まる。そのため各種武器の必殺技は8種類まで。 ### リングコマンド ゲーム中いつでも開くことができる独自のコマンドメニューシステム。 4種類のリングがあり、武器,アイテム,魔法(プリムとポポイのみ),メニューが、操作キャラクターの周囲にリング状となって表示される。 メニューを開くときの待ち時間が少なくすみ、戦闘中の素早い対応や、ゲーム進行の円滑化に大きく貢献した。 ## ストーリー面での高評価 『聖剣伝説2』はシームレスなアクションやスピーディーに使えるリングコマンドなどのシステムが画期的だった。 それだけでなく、物語性においても高い評価を得た。 細かいところを見ればセリフが雑だったりする部分もあるが、大枠では王道のストーリー。 ### 主人公の成長の物語 もし当記事のゲーム概要のあらすじを一読しただけで本編を知らない人がいたら、まるで今作の主人公が正義漢あふれる若者のような印象を受けるかもしれない。 ところがどっこい、ランディの最初の性格は**ごく普通**だった。 気が弱くて村の少年たちにいじめられている、イメージは『ドラえもん』ののび太に近い。 そんな少年が偶然にも聖剣を引き抜き、そのせいでモンスターが暴れるようになったと考えた村人により村を追放される。居場所がなくなったのきっかけに重大な役目を果たしていくことになる。 ランディは旅が進むにつれて仲間との絆を感じるようになり、自身の出生の秘密を知って、おのれの使命に立ち向かっていくさまがヒロイック。 #### 気弱な性格になった一因か ランディは幼いころに母親とともにポトス村に移住してきた。その後すぐに母親が失踪したため、村長宅に保護される。 血縁者がいない環境ゆえに長年よそ者として扱われた。 甘えられる存在がいない影響で、自分に自信がもてず周囲の顔色をうかがうような臆病な性格になったんでないかとわしは解釈している。制作者がどういう意図を込めたかは知らない。 ### 仲間との別れ 最終盤、倒せば一生仲間と会えなくなってしまう敵と対峙する。 仲間をとるか世界の平和をとるか、という選択を強いられ、平和をとることになる。 そのハッピーエンドとは言いがたい結末が多くのプレイヤーの印象に残った。 ## 演出面の高評価 愛嬌のあるモンスターなどのデザインやグラフィックも好評だったが、視覚的なもの以外の部分も印象的だった。 ### 音楽 菊田裕樹氏によるBGMが有名かつ評判。最終盤のストーリーの盛り上がりも、音楽による相乗効果がある。 ラスボス戦に流れる『子午線の祀り』はラスボス戦にふさわしい熱さともの悲しさのある曲。 ただ音を使いすぎていて、リングコマンドなどを操作すると効果音が優先され、その分のBGMの音が飛ぶ=音が欠けることが発生した。SFCの性能の限界。 ### 会社ロゴ表示時のサウンド ゲーム起動時、スクウェアのアルファベットが表示されたときに、謎の鳴き声が鳴る。 それは本物のクジラの鳴き声を流していたそう。その話も含むファミ通のリメイク版のインタビュー記事→『聖剣伝説2』リメイク版の楽曲のポイントは“愛”!? 作曲家・菊田裕樹氏インタビュー 他のゲームだと無音か、音があってもピローンとした効果音だったり「Byハドソン(※もう無いゲーム会社)」と会社名を言ったりしていた。 『聖剣伝説2』のほかに動物の鳴き声をロゴにあてたソフトがあったかは寡聞にして知らない。 その後に続くオープニング曲の『天使の怖れ』と合わせて、わしは当時なんの音かはわからない音に神秘性を感じ、世界観に引きこまれた気がした。 ### オープニングデモの見せ方 暗い画面にゲームタイトルが浮かぶ中、白文字の英語が一行ずつ表示される。最初に出るのは主要な制作スタッフの英名。 その後に真ん中部分に大木(とそれを見上げる3人のキャラクター)が描かれたイラストが現れ、その下段にはゲームの物語を説明した英文が流れていく。 徐々に音楽は壮大になっていき、イラストが画面いっぱいに広がる。 これらはハードの制限的に瞬時にイラストを表示することができず、工夫した結果だそう。 制作者のツイートをまとめて論じたよそさまのサイト→「聖剣伝説2」の神OPはいかにして作られた?作曲&プログラムの秘密 英文は絵を展開するための時間稼ぎで表示されていたと。部分的に見えるイラストも、全部はいっぺんに見せられないから徐々に表示させた、ということなのか。 そうとは知らないわしは最初からこういう演出なんだと思っていた。オシャレだと思ってた。 制作話を知った今の認識は、厳しい制限があってもそれを逆手に取って名演出にする、それもプロの技かと思う。 ただ、このシリーズに関しては制限のある中でやりくりしてるほうが、プレイヤーの想像力補正で名作に感じられたのかもしれない。 その後のシリーズのシナリオ面というかストーリーの運び方がどうにも雑な気がする。雰囲気で推すやり方が合ってたのかな。 #### 本気で容量不足のFC『DQ3』OP ファミコンの『ドラクエ3』はタイトルロゴの制作を後回しにした結果、容量が本当になかったそう。参考記事→FC版『ドラクエ3』開発も容量不足で苦しんでいた! “削られたもの”に「マジか!」「HD-2D版で復活しない?」 そこで仕方なく最初のゲームタイトルが普通なフォントのアルファベットだけ&オープニング曲なし、にしていたと。 その節約仕様を意外にも好意的に解釈するファンがいた。「まだロトの伝説が始まってないから曲無いしタイトルも質素なんだ」という感じに。 エンディングではしっかりいつもの音楽が流れるので、結果的にそこから1~2に繋がる意味付けが出来上がったらしい。 このファンの解釈は怪我の功名であって『聖剣伝説2』とは方向性が違うけれど、ハード制限の話に関連して紹介した。 ## いろんなバグ 『聖剣伝説2』といえばバグ、という人もいるほどバグが発生しやすい一作。 進行不可になる致命的なバグからプレイヤーの得になる有用なバグまで、両の手では数えきれないほど多くのバグがそろっていた。 バットラーバグ(お金増殖)と剣レベルアップバグはデバッグモードの名残なんじゃないかと思うほど有用。 これらのバグを引き起こしたのは天才的なイラン人プログラマーのナーシャ・ジベリ(Nasir Gebelli)だと言われる。 スクウェア内では重用された人だったのか、前項のオープニングデモの英文によるスタッフ紹介ではトップバッターを飾る。 ### オリジナリティとバグの創造主 『聖剣伝説2』は画期的なシステムが多かった。 その実装には従来の発想に無いプログラミング能力が必要とされたのだろう。 その結果が**誰にも修復不可能なバグのオンパレード**だったようだが、なんかもうそれもこのゲームの魅力になっていた気がする。 ナーシャ氏は『聖剣伝説2』の前にファミコンの『FF1』~『FF3』にもプログラマーとして携わり、バグ利用しての「8倍速飛空艇」(FF2とFF3)の高速移動を可能としていたそう。 わしの兄者もどの作品の飛空艇を指したのかわからないが「見てわかるバグな速さしてた」と異常な移動速度が印象深かった模様。 ## 続編の状況 同じSFCで1995年に『聖剣伝説3』が発売された。その後はPSで1999年に『聖剣伝説 LEGEND OF MANA』ができ、しばらく間を開けてDS作品などもできる。 2006年の『聖剣伝説4』が不評な出来だったためか再度シリーズが中断。 いろいろと浮き沈みのあるシリーズだが『聖剣伝説2』のリメイク『聖剣伝説2 SECRET of MANA』が2018年2月15日にリリースされた。 このリメイクは下手にSFCの再現を意識したせいか評価がかんばしくない。 そこから新バトルシステムに振り切った『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』は再評価された。 2024年には完全新作『聖剣伝説 VISIONS of MANA』が発売でき、軌道に乗っているようである。 今後ますますの発展をお祈り申し上げます。よくあの暗黒期を乗り切れたと他人事ながら思う。 ゲーム #ARPG #アドカレ2024