8.SFCダークハーフ【アドベントカレンダー2024】 2024/12/11 B! P L 『ダークハーフ』は、1996年5月31日にエニックスから発売されたスーパーファミコン用ロールプレイングゲーム。開発元は今はなきウエストン。 SFCの後期作かつ知名度はあまり無い。 大作RPGが次々と出てきたのちに発売したソフト。また、当時大人気だったファイナルファンタジーシリーズの**新作『FF7』がPSで発売するという発表**が1996年2月に広まった影響で**PS人気が加速した時期**でもあった。影が薄かった。 発売時期が遅かったのが無名のおもな原因だろうけれど、歩くたびにゲームオーバーに近付くシステムや陰鬱で一般受けしづらい雰囲気も人を選んだ。 そんなマイナーゲームを紹介する。 ## ゲーム概要 1000年前に英雄神ローダと6人の聖騎士によって魔王が封印され、人々は長い平和を享受していた。 しかし魔王復活の不吉な噂が広まったころ、1000年の眠りから魔王が目覚める。 魔王の復活から人類滅亡までの7日間が物語の舞台となって、勇者と魔王の運命を賭けた攻防が繰り広げられる。 ### ザッピングシナリオ 主人公が二人おり、人間のファルコと魔王と呼ばれるルキュを交互に操作する。 片や魔王に立ち向かう勇者、片や人間を滅ぼそうとする魔王。 両方の視点からストーリーが展開される。 希望の光というアイテムがエンディングの内容を左右する関係上、ルキュプレイののちに、ルキュが荒らした町をファルコで訪れる展開が多い。 ルキュが町を荒らすかはプレイヤーによる。命をなるべくとらないこともできるが、利点はファルコで訪れたときにNPCのセリフを聞けること。攻略上はメリットなし。 ### ソウルパワーシステム 敵のモンスターや人間を倒すことで得られるパワー。 **フィールドやダンジョンを歩くだけで減る**ほか、ルキュは魔法を使うときに、人間はファティア(錬石≓お金)の交換をするときに消費する。 **この数値がゼロになるとゲームオーバー**になる。 出会う雑魚敵を倒していったりゲットしたいらない魔導書を交換したりすればクリアすることはできる……と思うが、ダンジョンの謎解きにはムダに歩かせるタイプが多い。ハマり方によってはリトライ必須。 ### カオスオーブ&マジックオーブ ファルコ側のキャラクターのステータスを上げるアイテム。宝箱か、戦闘勝利時にまれに入手する。 このゲームはレベルという概念がなく、このオーブを使って強化する。 序盤で仲間になるギルバルトは立場とセリフ的にそのうち離脱しそうな空気を出すが、最後までファルコについてくるのでオーブをあげてよし。**逆キーファ**。 前述のソウルパワーとの兼ね合いでとっととストーリーを進めたくなる……が、そうすると敵が強くて勝てなくなるおそれがあり、そのへんも初心者キラーな仕掛け。 ただあんまりファルコたちを強くし過ぎるとルキュ側で苦労する場面もあるのがややこしいところ。 ### ダークゲート ルキュが序盤で覚える魔法。敵として遭遇したモンスターを仲間にする。 モンスターを仲間にした際にそのモンスターが使える魔法をルキュが習得する。ルキュの魔法のレベルアップ効果もある。 仲間にしたモンスターは死ぬと復活せず、成長もしないのでその都度強い敵をテイム推奨。 強いモンスターほど仲間枠の幅をとる。 6日目はファルコ側でダークゲートの書がゲットできる状態になる。 ### 升目のあるターン制バトル マップ上から地形を切り取ったかのようなクォータービューで戦闘を行なう。 普通のコマンドバトルと異なり、攻撃を指定しても敵との距離が離れていると移動だけでキャラのターンが終わったり、敵同士が隣接する時に範囲攻撃で一掃できたり、ややクセがあるシステム。 SLGというほどの規模ではないため、雰囲気は『ライブアライブ』の戦闘に近い。 ## 異色な部分 正反対な主人公を交互にプレイするというだけで充分に変わっているが、ほかにも日本製のRPGらしくない部分があった。 ### 濃いイラスト 主人公が切り替わるたび、○日目といった情報と一緒にアイキャッチ画像が画面に現れる。 ファルコは漫画『ベルセルク』のガッツ的な戦士に、ルキュは実写映画『ハリー・ポッター』のスネイプ先生的な怪しい男で描かれる。 いずれも**写実的な濃ゆいイラスト**。油絵で描かれたそう。 作中、囚われのローダのイラストも表示される。それもやっぱり濃い。けどうつむいてて目を閉じているせいか順当に美人に見える。 イメージは初代『ヴァルキリープロファイル』の吉成鋼氏のほうが描いた絵にちょっと近いかも。パッケージ絵のヴァルキリーの横顔は文句なしに美しいんだけれどゲーム中の絵は人を選ぶ感じ。 SFCの説明書の表紙が次のデザイン。ローダとは画像上半分を占める白い服の女性のこと。 青髪の戦士(ファルコ)と黒髪の男性(ルキュ)の間に挟まれた三本角の兜の人は**悪いけど誰かわからない**。説明書内に紹介がなかったのでメインキャラでないのはたしか。 緑色の服を着た杖を持つヒゲ面な人がギルバルト。その左の青服の女性はファルコの仲間になるクレール。ギルバルトの右にいるのがルキュの手下たち。 ### 勧善懲悪でない物語 最初は魔王と恐れられるルキュが冷血非道な悪者、聖騎士が人々を守った善人のような語り口で始まる。そういうのがRPGの定番でもある。 話が進むと一概にそうとも言えないことが判明してくる。 その重大な真実自体はゲームを追っていけばわかる。この記事では触れない。 気になった人は動画でも見てください。プレイはいろいろと難しいと思うので。 ### 道徳的な抵抗 プレイヤーは魔王として人間を滅ぼすプレイを強いられる。 死なせる人数を減らせても**不殺はどうあっても無理**。 到底悪人とは言えない普通の人も強制的に白骨化させるシーンがある。 従来のRPGにはない倫理的な葛藤を体験できる、といえば斬新で聞こえはいいかもしれないが、合わない人にはとことん合わなさそう。 そういう意味でも受け身で知ることができる動画視聴が無難かも。 ### 回数制のセーブ 町やダンジョンの中に赤いローブをまとった緑髪の人物がおり、その人に話しかけるとソウルパワーをいくらかもらえるのと同時にセーブができる。 一度セーブするとセーブ役の人はいなくなる。その場でのセーブは一回限り。 こまめにセーブしたい人にはストレスフルな仕様。 ソウルパワーが尽きるとゲームオーバーになるシステムと合わせ、玄人向け。 ## RPGに合わないシステム この作品はおそらくSFCの中で高難度なゲームである。 そういった手応えのあるゲームを好む人もいるだろうから、高難度はけっして悪いことではない。 ただ、他のジャンルのゲームならよくてもRPGには不向きそうなツラさがある。 そういったツライ部分をいろいろ他のゲームの話も混ぜて語る。 これがいいんだというファンは**この段の話をすっとばしてください**。 ### 歩数の実質的制限 敵とエンカウントする場で歩くとソウルパワーが減り続け、ゲームオーバーの危機にプレイヤーはさらされ続ける。 しかしマップ上には隠された宝箱が配置してあり、そういった発見のための探索もRPGの醍醐味のはず。 探索からプレイヤーを遠ざけようとするシステムになっていて、ジャンルとあまり嚙み合ってないようにわしは感じた。 #### 歩くと死に近づく理由付け 移動のたびソウルパワーが減り続けること、そしてソウルパワーが尽きるとゲームオーバーになること。 その両方ともに作中の世界観的な理由付けは特になかった気がする。 そういうシステムなのだと言われればプレイヤーはそれに従うしかないものの、ストレス要因になっていた。 歩くとなにかが減る、というシステムはメガテンシリーズにもある。仲魔を召喚した状態で移動するとマグネタイトが消費され続ける仕組み。 マグネタイトが尽きると今度は召喚中の仲魔の体力が減り続ける。 理由はマグネタイトの効果で仲魔が実体化しているのでマグネタイトがなくなると体を保てなくなる、といった設定だったと思う。違ってたらスイマセン。 世界観にもとづいた理由があったら理不尽さは感じにくい。 #### 意味はきっとない改善案 わしのゲーマー感覚で考えると、ソウルパワーの枯渇による死は**ルキュだけでよかった**んじゃないかと思う。 人外&目覚めたばかり&腕輪が無い状態のルキュは対一般人以外には弱っちい魔王だ。 物理攻撃ができず、唯一の攻撃手段はソウルパワーを消費する魔法な設計上、ソウルパワーの数値はルキュの強さと繋がっている。 もろもろ含めて歩くたびにゲッソリしててもキャラに合っている。メガテンの仲魔のような感じで。 宝箱を開けられるのはファルコであり、ルキュは無視する。 ファルコだけでも歩数を気にせず探索できたら難易度が下がったんでなかろうか。ステータス稼ぎ行為を(敵の強さ的に)推奨されるのもファルコなので。 このゲームがリファインされることはきっとなく、似た窮屈なシステムを使う新作ゲームも出るとは思えず、これらは意味のない提案である。 ### 作品に合うor合わないセーブの制限 初期の『バイオハザード』ではセーブをするとき、インクリボンという消費アイテムを使う。入手数に限りがあるためセーブに回数制限がある。 この作品はスリル重視なサバイバルゲーム。セーブ回数の制限も面白味に繋がっていると思う。 そのうえ、アクションやシューティングゲームなら死に覚えという単語もあるくらい、プレイヤーが何度もやることでクリアできるタイプがある。 たとえセーブができずともプレイヤーの経験値がたまっていく。 そういったゲームならプレイングが上達するとセーブ回数の節約もできるようになって、セーブの制限があまり気にならなくなるかもしれない。 #### 吟味も関わってくると・・・(FEトラキア) しかしキャラの成長やランダム入手のアイテムも配慮するRPGで死に覚えはしんどい。 いわゆる稼ぎ行為をしないと後が苦しくなる設計になっていると、その**稼ぎが一瞬で水の泡になるシステムとは相性が悪い**。 そのへんのシビアさはシミュレーションRPG『ファイアーエムブレム トラキア776』に似ている。 『トラキア』は章ごとのセーブに制限がないが、章の攻略中は中断セーブという一時的なセーブのみができる。 再開すると中断セーブの記録は消える。つまりプレイ途中からの1トライはできても2回目以降はできない。 そのうえで初見殺しが多い。シミュゲーゆえに1プレイが数分ではまず終わらないせいもあって、複数回のやり直しはツライ。そのプレイ中に武器レベル稼ぎなどもやっていたらなおツライ。 攻略方法がわかっていれば誰にでもクリアはできるが、ピーキーなゲームである。 『トラキア』はソフトの売り方と環境が特殊だった。最初からマニアウケを狙ってたんでないかとわしは思う。 ソフトを書き換えるロッピーもクセが強いが、なにより1999年にSFCソフトのリリースは**めちゃくちゃ旬を過ぎていた**。 1996年のSFCゲームでさえ「今のトレンドはPS」という逆風で戦っていたのを、その3年後では言わずもがな。 Switch全盛期にWiiUでソフトを出すようなもの。一般層は見向きしづらい。 この『トラキア』は(かなり厳しい環境でありながら)人気があったので2000年に改めて従来通りのSFCソフトで発売されたそう。2000年にもなってSFCの新品ソフトをプレイする層も、一般層とはちと違ったんでないかと思う。 #### ブレスオブファイアⅤ 『ブレスオブファイアⅤ ドラゴンクォーター』もセーブの制限があるRPG。 このゲームは**セーブアイテムの入手しにくさが不評**だった。 退廃した世界観を表現するためには『バイオハザード』と同じく意味のある演出だろうけれど、戦闘システムがまた高難度。 キツイ仕様が組み合わさって間口が極小になった。 一回全滅すればパワーアップできるとはいっても、前作までは全滅前提の攻略をするようなシリーズではなかった。急にフロムゲーみたいになった。 それまでのブレスオブァイアシリーズはRPG部門が手薄なカプコンの唯一代表的なRPG作品として人気だった。が、Ⅴからは失墜する。 システム面のゲーム上級者以外お断りな仕様さえ(難易度設定を用意するなどして)どうにかしていたら、シリーズにトドメがささることはなかったんでないか。本気でトドメさしたのはスマホゲームの6とはいえ。 従来と違う冒険をするときはナンバリングにしないほうが無難なのかもしれない。 ## ちょっとした謎 作中、語られない謎がある。 気にしたところで答えは未来永劫わからなさそうなことである。 気にしてなかった人まで気になってくるような呪いはかけたくないのでほじくるのはよしておく。 ここで触れるのはぶっちゃけどうでもいい些細なことに絞った。 ### ルキュとローダの髪色 濃ゆいイラストでは二人とも黒い髪に描かれる。 しかしドットグラフィックでは緑色っぽく塗られる。 4種類あるうちの1種類のエンディングにはルキュとローダが一枚絵におさまるものがあり、そちらも二人が緑髪になっていた。 なぜ色が違うのか? 想像になるが、キャラデザ段階では濃いイラストのほうの配色だったものの、プレイ中の見やすさのためにドットは色を変えたのかとわしは考えている。 夜のマップだと背景が暗くなる。暗い背景の中に黒髪のキャラを動かすのは視認性の面でストレスになりうる。 そのため、操作キャラクターは明るい色調で色をつけたほうがよいと判断されたのか。ファルコもイラストは濃い青髪だがドット絵は金髪っぽい。 古い表現で黒髪のことを緑髪とよぶ日本文化がある。黒色の代わりに緑色で表現することもあるかもしれない。 ### セーブキャラの配色 ルキュがドット絵では緑色の髪で赤いマントを羽織っている。 一回ぽっきりのセーブを担当する謎の人物も、緑色の髪で赤いローブをまとう。 配色はとても似ている。 もしかするとセーブ屋はルキュと似た容姿なのだろうか? 前述のエンディングのローダも、緑髪で赤いワンピースを着た姿に描かれる。 あるいはセーブ屋はローダに似た容姿だったりする? このセーブ屋はファルコ編でも登場する。 ルキュとファルコにとってローダは害のない人物。有益なNPCのイメージ的に姿が似るとしたらローダのほうかも。 ルキュはローダも例外なく消そうとはするけれど、思い入れの強さ的には憎めないところがありそうだとわしは勝手に思っている。 ## 無名の作品ゆえに 続編はない。前作というものもない、単品のゲームソフト。 開発会社がほかに作ったゲームはあれど、この『ダークハーフ』と関連するようなものはなさげ。 制作会社は破産手続きをしていてとうに無く、リメイクや続編の可能性は低い。 同社のゲーム『ワンダーボーイ』に『時計じかけのアクワリオ』が令和の時代もリリースされている。だがそれらは横スクロールアクションでポップなグラフィックのゲーム。 ダークファンタジーな今作は埋もれていく一方な気配がする。 一応、IPは管理している人がいるらしい。ひょっとしたら配信があるかもしれない程度。 それも望み薄そうである。 しかし今作はセーブのしにくさが欠点だったのでスイッチオンラインのどこでもセーブとは相性よさそう。バーチャルコンソールの『トラキア』も「まるごと保存機能」でだいぶプレイしやすくなっていた。 ゲーム #RPG #アドカレ2024