10.SFC天地創造【アドベントカレンダー2024】 2024/12/13 B! P L 『天地創造』(てんちそうぞう)は、1995年10月20日にエニックス(現スクウェア・エニックス。以下スクエニ)から発売されたスーパーファミコン用のアクションRPG。 今はなきクインテットが開発し、聖書の「創世記」をモチーフにした壮大な物語。キャラクターデザインとイラストは漫画家の藤原カムイ氏が担当。 同年に『クロノトリガー』(1995年3月11日発売),『聖剣伝説3』(1995年9月30日発売),『ロマンシング サ・ガ3』 (1995年11月11日発売),『ドラゴンクエストVI 幻の大地』(1995年12月9日)などの大作RPGとともにリリースされた影響により、発売当時は知る人ぞ知るゲームだった。 長年隠れた名作としてネット界隈で話題になり、もはや隠れてない名作とも言われる。 ## ゲーム概要 いたずらばかりしていたヤンチャな少年・アークは、地裏という世界にある村のクリスタルホルムに住んでいた。 ある日、アークが封じられていたパンドラの箱を開けたせいで村人たちが凍りつく。 村人たちを救うためにアークは5つの試練の塔を踏破する。 無事村人たちを元通りにすると長老の「村人たちを地表に住まわせたい」という願いのもと、アークは荒れ果てた地表におもむき、地表の生き物たちを復活させ、人類の文明を取り戻す。 ### オーソドックスなアクションRPG 世界地図をモデルとしたマップを放浪するRPG形式と、ダンジョン内を探索するアクション形式の2つの要素が組み合わさった一作。 ダンジョン内での探索が主な戦闘の場となり、フィールド上では敵との遭遇はなし。 アクション要素には、ジャンプ,ダッシュ,攻撃,防御,物を押す・投げるなどの行動がある。 敵との戦闘,岩壁や川などの障害物の克服,謎解きや仕掛けを解きながら進む。『ゼルダの伝説』のようなゲーム。 ### 大陸の復興 地裏で試練の塔を一つクリアするたび、凍りついた村人が何人か元通りになる。それと同時に、地表に大陸が一つ現れる。 地表に出現する大陸は現実にもある五大陸と同じ名前。 村人全員と五大陸が蘇ったのち、アークは長老の依頼で生き物がいなくなった大地を復活させていく。 新たな命が芽吹く、というよりは、各地のボスによって封印されていた生き物が元の居場所に戻ってくる模様。 生き物たちはそれぞれ過去の記憶を持っている。 地裏で凍りついていた村人が元に戻るのと似た感覚なのだろうか? 姿はまったく見えなくても。 #### 文明の発展 人間を復活させたあとは各地の居住地を繫栄させていく。 メインストーリーに関わるものからサブイベントまでいろいろ。 人々が豊かになっていくさまを見届けることも今作の面白さにつながっていた。 作中、壊滅してしまう町があるのだが、それはメインイベント終了後も廃墟のまま。 この町を復興するイベントがあってもよかったのではないか、という意見は散見する。 ### 藤原カムイ氏のキャラクターデザイン 漫画家の藤原カムイ氏によるキャラデザとイラストも話題を呼んだ。 当時の藤原氏はエニックスが発行する『月刊少年ガンガン』にて『ドラゴンクエスト列伝 ロトの紋章』を連載しており、人気を博していた。 氏による『天地創造』のパッケージ絵(およびゲームスタート画面の絵)について以下のような発言がある。引用元はこちら→「後世に遊び継がれないのは大きな損失」 伝説的ゲーム「天地創造」の復活に立ち上がった3人の熱意 >藤原: このパッケージのもとになった絵は、プログラマーさんがCGで作ったものと原画を合成していますが、普通は使わない脳みそまで使わないといけなかったので作中で一番苦労しました。構造物が全部中心に向かっている構図なので、パースが取りづらくその辺をどうごまかすかみたいな(笑) 制作時は大変だったようだが、パッケージ絵は『天地創造』を象徴する力作である。 べつのイメージイラストでは丸い地球の上で巨大なアークがあぐらをかく構図がある。 それとの対比だと考えると、地裏は地球の裏側にあたる場所ゆえに、パッケージ絵の構図は地裏の表現だと思う。明確な作者の意図は存じ上げない。 ## 哲学的な演出 ストーリーが良いと評判な作品であり、随所に考えさせられる描写があることも好評。 正解が簡単に出ない哲学的なシーンを、一部紹介する。 物語の根幹には関わらない部分&動物の話。 ネタバレや他人の考察がイヤな方はこの段を飛ばしてください。 ### 雪山のカモシカ チベット高原にある雪深い山を進むと、途中でアークが雪崩に巻き込まれる。 なんとか生き延びたさきの洞穴には雌のカモシカがおり、その夫だったカモシカが死んだ状態で横たわっている。 このカモシカたちも雪崩に巻き込まれて洞穴にたどりついていた。雄カモシカは打ちどころが悪くて死亡。 一晩休憩したのち、雌カモシカはほかに食べ物がないからと雄カモシカの死肉を食べようとする。 アークはこの提案を拒絶。このときの問答はどちらの意見も間違いと言えず、常識を揺さぶられる場面。 その後、カモシカの努力によってそれまで行けなかった場所へ行くシーンがある。 進んだ先にはアークなら登れる巨大な壁があった。 壁を登れないカモシカが一度絶望するが、ほかに方法を考えると言って、アークに脱出を勧める。 カモシカはきっともう自分は助からないとわかっていただろうが、そんなことを言うと死んだ雄カモシカにも情け心を見せたアークが先へ進みにくくなる。だから気丈に振る舞ったようである。 生き残れる者が最大限生き残る方法をとる、というこのカモシカの生死観がうかがえる。 #### 雪山をクリアすると・・・ 強制的に時間が経過し、人間が復活している。 現地の人がアークを見つけてから3年はアークが眠っていたといい、最低でもそれだけ年数が経つ。 その後に雌カモシカのいた場所へ戻ってみると、そこには雄カモシカの死体のそばでもう一頭の死んだカモシカが横たわる。 増えた死体はおそらくアークと出会った雌カモシカである。 結局は閉じ込められたまま力尽きたようだ。 雄カモシカの遺体はとくに変わりない様子を見ると、死肉は食べなかったのかもしれない。 叶うことならアークを運べる渡り鳥に無理を言って、雌カモシカを運べないか挑戦してもらったところなのだが。 ゲーム側はそういった救済措置を置いてくれなかった。無情。 ダンジョン踏破を一度放棄し、カモシカのために助けを求めに戻ったプレイ限定で救出イベントがあってもよかったんでないかと思うが、そんな生易しい展開は作品のコンセプトに合わないと判断されたのだろうか。 ### 話せなくなる動植物 大地にもどる生き物の順番は植物→鳥類→(鳥以外の)動物→人間。 人間が復活するまでの間、アークは動植物たちと会話することができる。彼らと親しくなる。 しかし人間が復活するとアークは動植物たちの声を聞けなくなる。 リアルで考えれば話せなくて当然な生き物たち。 常識と照らし合わせると致し方ない変化なのだが、ちょっと前まで仲良くしていた存在との交流が絶たれたことに寂しさを感じる。 人間の存在が必ずしも良いことばかりをもたらすわけではない、ということの前振りになっていたのだろうか? アイテムを売ってくれるよろず屋は変わらず喋るので、そのときだけは気持ちが盛り返したプレイヤーもいるんじゃなかろうか。 ### 人に捕まった動物 人間を復活させたのち、町を発展させると人々の暮らしは豊かになる。 それが良いことだと思ってプレイヤーも右往左往と世界を駆け巡る。 そのうちに人々は大自然の中でのびのびと暮らしていた動物たちを捕まえ、見世物にするようになる。動物園である。 すでにアークと話せなくなった動物たちがどのような気持ちで動物園で過ごしているかを知る方法はない。 発展することが本当に良いことなのか、一度立ち止まって考え直したくなるワンシーン。 案外「楽にメシが食えてラッキーだ」というふうに前向きに受け入れている動物もいるかもしれないが……サファリアムがもぬけの殻になるのをどう見るか。 ## 制作者の天地創造への思い入れ 2022年10月20日、『天地創造』が発売から27周年を経たことを記念して、以下の動画が公開された。 天地創造 TERRANIGMA SPECIAL MOVIE 天地創造27周年記念動画のサンドアート。 原作スタッフも作成に関わっているムービー。サンドアートはファンの作だがBGM担当者は小林美代子氏で、『天地創造』の音楽を曳地正則氏と共同で作っていた。 そのほかの周年記念動画もある。上記一つめのスペシャルムービーがもっとも話題を呼んだようなので紹介した。紹介記事もある→神ゲー『天地創造』27周年動画がエモすぎて、ソウル3部作がリメイクされる夢を見ました。その時まで、ちょっとの間だけさようなら… 二十余年を経ても情熱をなおお持ちであるクリエイターがたも、リメイクか配信を希望しておられる。 その声が届くときはくるのか。 そもそもだれがIPを管理しているのか。当時のスタッフもよくわかってないそう。 スクエニさんは『アクトレイザー』のIPは発見してくれた。『天地創造』とは所有者が別であった場合でも頑張って探してくれているのだろうか? これがカプコンだったら地の果てまでも見つけ出してくれそうな気がするが、たぶんわしが雑に信頼しているせいである。過去作品への愛が他社より群を抜いて強いイメージ。ストシリーズでいつまで『キャプテンコマンドー』のコスチューム配信するの? などと思っていたら『スト6』はやめたっぽい。それが無難な判断だと思う、そっちは新規層向けに切り替えていって、過去作品への愛はお祭りゲーなどで発散してほしい。 ### 三部作の最後の作 直接的な話のつながりはないものの、今作は『ソウルブレイダー』,『ガイア幻想紀』に連なる一作。 クインテット三部作と呼ばれるこれらは、「創造と破壊」というテーマが一貫して流れ、滅び去った世界を復興させるストーリーが描かれる。 三部作の最終作にあたる『天地創造』はストーリー,ビジュアル,サウンド,操作感どれもが秀でており配信希望の声もある。 同じくクインテットが作った『アクトレイザー』は2021年9月13日に『アクトレイザー・ルネッサンス』というリメイク版がリリースされた。 販売元はスクエニ,開発元はスクエニとソニックパワードと共同。もとがエニックスから発売されたゲームゆえに過去と同じ親元から販売されている。 リメイクの評判はおおむね良く、この調子なら同じクインテット作品の『天地創造』もなにか起きるかもしれない? ゲーム #ARPG #アドカレ2024