13.SFCヘラクレスの栄光Ⅳ 神々からの贈り物【アドベントカレンダー2024】 2024/12/18 B! P L 『ヘラクレスの栄光IV 神々からの贈り物』は、1994年10月18日に今はなきデータイーストから発売されたスーパーファミコン用RPG。 ギリシャ神話をモチーフにした西洋ファンタジー。 今作はヘラクレスの栄光シリーズの本編では4作目にあたる。そのほか1作目と2作目の物語をつなぐ外伝作のゲームボーイ『ヘラクレスの栄光 動き出した神々』もあった。 シリーズ当初はタイトル通りに半神半人の勇者ヘラクレスが主人公だったが、ナンバリングのⅡ以降は味方キャラとして登場するようになる。 ## ゲーム概要 主人公はアトランティスに住む17才の学生。友人のプラトンやエピファーとともに平和に暮らしていた。ある日、ギリシア人が町に侵略してきたためオリハルコン鉱山へと逃げた。 主人公たちの通う学校の教師のアールモアは「生き延びるため」と称して、主人公とプラトンを殺し、鉱山の奥にあったオリハルコンの箱(パンドラの箱)に主人公たちの肉体を保管した。 その後に9000年を経て、肉体のない主人公は運命の女神モイライの手引きにより不老不死となり、またいろんな生き物に乗り移る能力を得る。モイライが危惧する「すべての人間の未来がなくなる」原因をさぐり解決するため、そして自身の肉体を取り戻すために旅に出る。 ### トランスファーシステム 本作の最大の特徴は主人公と友人のプラトンが他人の身体に乗り移れること。 最終的に101種類のキャラクターに変身可能となる。 乗り移れる体にはそれぞれ特徴があり、物理攻撃が得意なもの、魔法が得意なものから、素の戦闘能力は弱いがそのキャラ独自の特技が強力なものまでいろいろ。 FLVというレベルがあり、各身体ごとにレベルによって使える特技が開放される。 #### 特技が強い羊 最序盤で出会える羊のウーウールはFLV10にして習得する特技【メェー!!】が強い。 攻略に困ったらそれを使っておけばよく、ラスボスもなんとかできる。おそらく救済措置か。 ちなみに戦闘中でもターン消費なしで身体の入れ替わりは可能。ウーウールで敵を無力化させてから戦闘力の高いキャラに変わって戦うこともできる。 普通にプレイしていて羊を使わなければ攻略不可能な難所は本編にはなく、半分裏技めいたキャラ。 #### FF5のジョブチェンジ このトランスファーシステムは、1992年12月6日に発売された『ファイナルファンタジーⅤ』(以下『FF5』)にあるジョブとそっくりだと評判。 『FF5』も純戦闘向けのナイトや黒魔道士、一風変わった特技を使える薬師や踊り子などさまざまなジョブがあった。 APBというジョブの経験値の概念があるのも似る。 ただジョブをマスターしたらそのアビリティを特定のジョブで自由に付け替えられる仕様は『FF5』だけ。 『ヘラクレスの栄光Ⅳ』は他人の体を乗っ取るのでその体でないと専用特技は使えない。 ### 立体的なコマンドバトル システムは基本的にドラクエ的にまとまっている。 ただ戦闘中の演出が独創的で、左から一列に並ぶキャラごとにバトルの画面がずれて表示される。 コマンドの選択中および選択後の行動中、画面が主体となるキャラの視点のように動く。従来のRPGと違ったこだわりがあった。 #### キャラごとのセリフ 戦闘中の行動時に敵味方それぞれのキャラが独自の態度をとり、セリフを言う。 普段の会話は完全に無口な主人公も戦闘中は掛け声をあげたり痛がったりする。 敵もそれぞれの立場に合った言動をしてくるので、なにかと無味乾燥になりがちな戦闘中であってもキャラの個性が垣間見える。 ### 魔物図鑑 出会った敵を記録する図鑑がアイテムにある。ボスは図鑑に載らない。 なにかと他社RPG要素が目につく本作でありながらも、**当時この機能は他のゲームになかった**らしい。 天下のドラクエシリーズでもモンスター図鑑の初出は『ドラゴンクエストⅦ』からだそう。その後はリメイク作で搭載。 わしがやり込んでたPS版『テイルズオブファンタジア』にはごく自然にモンスター図鑑があったのでこういうのが普通だと思っていた。調べたらテイルズシリーズもリメイクTOPが初出。 意外と敵情報を記録するシステムは『ヘラクレスの栄光Ⅳ』が最初にやったことなのだろうか。わしはRPG作品を網羅してないので確かなことはわからない。 ## 気になる描写 本筋には関わっていて、わしが引っかかった部分がある。 物語的にはさほど重要ではないことを2点列挙する。 ### 乗り移りのこと ゲーム中は当たり前のように瞬時に肉体が入れ替わり、それまで主人公たちが体を拝借していた生き物はもといた場所にもどる。 身体を乗っ取っている間の体は不老不死で老いず、また主人公たちがその体で行動するときの記憶は肉体の持ち主には無いらしい。 そういうシステムなのだと割り切っていいところだと思うが、ちょっと気になった部分がある。 それはプラトンが最初に乗り移ったネドルという木こりの男性のこと。 #### プラトンが10年借りた宿主 プラトンは昔のことを思い出せないまま、ネドルの肉体で10年を過ごした。 その状態で妻と4人の子を持つ。そして家族以外の周囲の人からはぜんぜん老けないことを気味悪がられる。 主人公と再会したあとはプラトンも自由に体を変更できるようになる。 プラトンが別の人の体に変えて解放されたときの**ネドルはどこに行くのだろうか**。ゲーム中で確認できた覚えがない。 ネドルがもともと一人暮らしで山にこもるような生活をしていたら大きな問題はない。 が、ネドルにも親しい家族や友人がいた場合は大変だ。10年も行方をくらました人が元の居場所にもどってきても生活の再開が難しそうだと思った。 そのへん描写はあったのだろうか。わしは探索が甘いので見落としがあるかも。 描写はないほうがたぶんプレイヤーの感情的にはありがたいと思う。なにも悪いことをしてない人が可哀想な目に遭うのは心苦しいので。 ### 9000年の月日 膨大な時間が作中で流れるが、時間経過前後の**文化レベルは大して変わってない**ように見える。 これなら経過年数のゼロを一つ消して900年でもいいのでは? とわしは思っていた。 しかし調べるとこの9000年という数字には元ネタがある。 実在したアテネの哲学者・プラトンの著作物によると、彼の生きた時代から約9000年前にアトランティス大陸が海中に没したと書かれた。 ゲーム中のアトランティスも9000年後に戻ってみると海に沈んでいる。 ゲームのプラトンと歴史上のプラトンが同一人物なように描かれたかは明確でないものの、本を書き残してもおかしくないような素行の人にはなっていた。前作のレイオンばりに日記を書いてくれる。 他の町へ行っても9000年経った感はあまりしないが、書物におけるアトランティスは高度な文明が発達していたとされるうえ、ゲーム内でも「知恵と知識のみやこ」だと言われる。 きっと**9000年でやっとこ他の地域がアトランティスと同レベルの文化に発達**したのだろう。 アトランティスに攻めてくるギリシア兵が「グヘグヘ」言ってて知能が低そうな雰囲気を出していたし。でもあれは人格の問題? ## ギリシャ的なキャラクターデザイン 文献によると古代ギリシャでは人がわりとラフに肌を出す文化だったようだ。 ヘラクレスシリーズの登場人物も露出度は男女問わず高め。 Ⅳ主人公の本来の体は鎧姿に生足を出した姿に描かれ、ヘラクレスも胸当てと盾と腰巻とマント以外は肌が出ていて腹筋丸見え。 なおゲーム内にキャラクターの絵は一切表示されず、説明書に描かれていた。 ### 同時期の他社ゲーム 他のゲームもギリシャモチーフだと露出過多だった。 1990年4月20日にファミコンで発売された『ファイアーエムブレム 暗黒竜と光の剣』は主人公のマルスもミニスカートな出で立ち。 このシリーズはペガサスナイトの女子たちのミニスカがあれこれ注目されるが、最初はマルスも似たようなものだった。なおマルスは男性。 SNKの1986年にリリースされた『アテナ』というアクションゲームの主人公もたぶんギリシャ神話の女神から名前をとっていて、格好のディティールもギリシャっぽかった。 装備品をゲットしていくと露出過多なビキニ姿からどんどん装飾が増えていく仕様。 無装備のビキニ姿がいいと言ってあえて装備をとらずに攻略する猛者もいたそうで、お色気による客寄せ効果もあった模様。 ところで『ヘラクレスの栄光Ⅳ』は味方キャラクターの女子のエピファーにディアリがさほど肌を出さずに**メンズが生足をさらす**方向だった。客寄せ効果は考えてないのだろう、きっと。 ### ボスの奇怪なデザイン このゲームではパンドラの箱を開けたせいで各地に散らばった魔物がボスとなる。 人間の負の感情を増幅させる魔物たちはそれぞれの感情を象徴するようなデザインになっている……と思う。たぶん。 どれもいい感じに**不気味で気持ち悪い**のが個人的には好き。 ドラクエや聖剣シリーズのかわいい系モンスターもいいが、気持ち悪くなり過ぎないキモさを追求したモンスターもいいと思う。 今作の敵のデザインを充分グロテスクだと感じる人もいるだろうけれど、わしの感覚だとギリ全年齢対象で見せられる範囲だと思う。 #### 好きなデザインのボス 個人的には”不信”が最初は普通の老人姿で現れて、その見た目で命乞いをすると味方がマヒするのは芸が細かいと思った。 本性を現した姿では一つ目のピエロのような姿になり、分裂し、容赦なく全体攻撃してくるやらしいやつ。でも敵としては好き。 一番おおっと思ったのは二戦目の”憎しみ”。体の一部に人の顔らしき模様が浮かぶ蜘蛛の敵。 一戦目はダメ―ジを与えても表情が変化しなかったものの、二戦目は体力が減少すると**人面の表情(と蜘蛛の顔)が怒りをむき出しにするような険しい顔**になる。その後は攻撃が当たるたびに痛そうな顔にもなる。 最初は無表情だったのが般若のお面のごとく変貌するさまにインパクトがあった。 「倒した魔物は放っておくとまた復活する」という設定の説明のために出てきたようなコピペボスとはいえ、前回とぜんぜん違った印象を植え付けてきた、わしの中ではグッドデザイン賞な敵。 ## 続編の状況 『ヘラクレスの栄光Ⅳ』以降、シリーズは途絶えていた。 しかし2008年5月22日にDSで『ヘラクレスの栄光 魂の証明』が発売された。開発はパオンとスタジオ最前線。販売会社は任天堂。 シナリオライターはⅢとⅣを手掛けていた野島一成氏が再び担当した。 いつものとおり主人公たちは不死ぞろいで記憶喪失者多し。 そういった旧来のテイストやストーリーは好評だったがシステム面では粗が目立ち、評判は普通にとどまった模様。 シリーズの権利を持つ会社のパオンは2015年3月以降、株式会社ディーピーと合併して株式会社パオン・ディーピーとして健在。 他社のゲーム制作の受注が多いようで、あまり自社ソフトは頑張ってない感じ。 おそらくヘラクレスシリーズも今後よくて旧作の配信ばかりで新作はなさそうな気配がする。 わしはそれでいいと思う。システム面がつらかった『ヘラクレスの栄光Ⅲ』のリメイクがプロジェクトEGGから出されていて、お話を追っていくことはできる。プレイしたいときにプレイできたらよし。 ゲーム #RPG #アドカレ2024