12.SFC半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!【アドベントカレンダー2024】 2024/12/17 B! P L 『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!!』(はんじゅくヒーロー ああ せかいよはんじゅくなれ)は、1992年12月19日にスクウェア(現スクウェア・エニックス。以下スクエニ)から発売されたスーパーファミコン用のリアルタイムシミュレーションRPG。 シリーズ初作品である前作『半熟英雄』はファミリーコンピュータのソフトであり、そのころは真面目な世界観だった。 たしか『半熟英雄4 ~7人の半熟英雄~』が発売されたころにあった公式サイト(現在閉鎖)の大臣によると初代はまだ「おバカにターボはかかってなかったような・・・」といったことを言っていた。何年も前に見たっきりの情報なのでセリフはあいまい。 今作からガラっと作風が変わり、ギャグなテイストを強く推し出された。 バカゲーながらも当時は珍しかったリアルタイムシミュレーションや,個性あふれるエッグモンスターの召喚,そして『ドラゴンクエスト』の作曲で有名なすぎやまこういち氏による質の高い音楽が魅力の一作。 ## ゲーム概要 主人公は(真面目作風なころの)前作にて大陸全土を統一したアルマムーン国の若き王子。平和な暮らしを続けるうちにだらけ切ってしまい幼児同然な性格になっていた。 大臣が胃を痛めながら王子の補佐をする中、完熟クイーンを名乗る者がエッグモンスターを使役する王子たちに宣戦布告をする。 完熟クイーンとの対決をきっかけに、完熟軍との熾烈な戦い(とギャグの応酬)が始まる。 ### 基本構造 全12話のストーリーになっており、各話にはフィールドマップが1面ずつ用意される。 プレイヤーの目標は、アルマムーン城を拠点として、マップ上の全ての城を占領し、最終的に出現する敵のボスを倒すこと。 ゲームの進行には大きく分けて「戦闘パート」と「内政パート」に分かれる。 #### 戦闘パート フィールドマップが表示され、ゲーム内時間が進行。標準設定だとマップの画面で計180秒経過すると内政パートへ変わる。 プレイヤーは城に駐在する将軍を派遣して敵の城を攻略する。敵が自城を攻めることもある。 城以外にも洞窟や温泉などの場所があり、そこへ行くと特定のイベントが発生する。まれに屋台が出現するときがあり、「切り札」と呼ばれる戦闘アイテムを購入できる。 戦闘により卵が壊れた(エッグモンスターが倒された)場合は「あたしの家」という場所へ行くと有料で卵を復活させてもらえる。 #### 内政パート(月イチコマンド) ゲーム内で1か月が経過すると発生するパート。ランダムでいろんなイベントが発生する。プレイヤーにとってメリットになるものから損しかないハズレまでいろいろ。 ランダムイベント終了後は自由に将軍の登用、兵士の募集、自城のレベルを上げる築城などの軍事強化が可能。 兵士の募集をし忘れると戦闘時に将軍が一人だけで戦うことになりかねないため、補充大事。 また、使用した卵の回数を回復させるコマンドはこのときに選べる。壊れた卵は対象外。 ### 戦闘システム 通常戦闘では敵とのぶつかり合いが始まる。ぶつかる瞬間にAボタンを押すと戦闘が有利になる。 将軍のステータスの戦闘の値が15に近いほど戦闘時のぶつかり合いに強い。 コマンドウィンドウを開くと戦闘は一時停止状態になり、各種選択肢が状況により選べる。 #### 選択肢例 **たまごをつかう** エッグモンスターを召喚する。敵味方どちらかの将軍が召喚したあとはコマンド戦闘に切り替わる。 最大4回使用可能。使うごとに召喚できるモンスターのランク帯は弱体化していく。 **きりふだ** 戦闘用の消費アイテムで、最大3つまで持てる。ゲーム内に効果の説明はあるが不十分。 例えば【エンジェリン】の効果に死んだ味方兵士の復活とだけ解説されており、実際は使用した卵の回数を限界を超えて回復できることは記載なし。 だいたいは一度使って効果を試す必要がある。 **おくのて** 自城の戦闘中、たまごが使えないときに出現するコマンド。 ランダムに選ばれる3つの選択肢のうち1つを選ぶ。 ○○もどきは強力だが、自滅効果のあるハズレもある。 一度おくのてを選択するとキャンセルはできない。ハズレの中でもマシなものを選ぶ判断力も問われる。 自城のレベルが高いほど強力なおくのてが出やすくなる。 ## ギャグ・パロディ コミカルな世界観とギャグテイストが特徴的で、随所にセルフパロディ要素がある。 自社パロディには『FF4』のゴルベーザ四天王をもじった完熟四季王,月イチイベントの半熟スターでサガシリーズからゲラ=ハと先生などが現れたりする。 ストーリーの終盤に近付くと将軍にリディア,グレイなどのスクウェア作品のキャラと同じ名前の者が出てくる。 ### 挑戦的な他社パロディ 自社のパロディはなにも問題ないのだが、他社のやつもある。 ここではストーリー上で確実に出会う存在3つの事例を挙げる。 6話に登場するエッグワールドの国王と王妃の頭の角が、ウルトラマンシリーズに登場するウルトラの父とウルトラの母チックなデザイン。作中のポジションもヒーローな息子をもつ親で似通う。 8話のタイトルが「完熟大将軍の野望」であり、ボスの名前がノブナーガという織田信長+ナーガ(≒蛇神)な姿に描かれる。 おそらく元ネタは光栄(現コーエーテクモ)のシミュレーションゲーム『信長の野望』。 そのほか、10話のボスがアメコミ(DCコミックス)のスーパーマンチックな服装かつ腕を突き上げたポーズで描かれ、【じょうりゅうけん】という攻撃をする。 これはスーパーマン+昇竜拳のパロディの合わせ技だろうか。 この【じょうりゅうけん】は、もし川だったら上流まで行ってたはずの一撃だそう。竜がのぼるのとは関係ない? ただし登竜門の語源には「黄河の**上流にある竜門という激流**」が関わるので故事的には多少被る。 『ロマサガ』の2で三国志な名前のキャラがいたり3で古代中国の人物もじりな脇役がいたり、漢文素養のありげなスクウェア社員ならできそうな発想。 #### 個人的に気になる他社パロ わしの記憶に残る他社パロディを一つチョイス。 エッグモンスターにいる、**にんげんライダー**。青い衣装の人間が紫色なドラゴンを背負おう。 元ネタはファミコン『DQ4』の敵モンスターにいるドラゴンライダーだと言われ、こちらは普通に人が竜に乗っている。 乗る側の生き物と乗られる生き物が入れ替わる発想がすごい。柔軟。 そしてにんげんライダーの人側のゴーグルが『DQ2』のローレシアの王子っぽかった。 もしゴーグルがなかったら『サンサーラ・ナーガ』の男主人公? と思うところだった。もしかしたらそのパロディもある? ファミコン版じゃ竜に乗らないので無いか。 ### 劇場型の演出 イベント発生時は画面の上半分が舞台、画面の下半分が観客席という構図。 イベントの区切りが発生すると舞台の緞帳どんちょうが下りてくるなど、ゲームの中で劇を見る劇中劇のようなスタイルをとっている。 照明が暗くなったり怪しく光ったりの演出もさることながら、観客席にいる兵士と似た格好の客たちは**ときどきリアクションをしてくる**。喜ばしい展開のときははしゃぎ、困った展開になると頭を抱えてブーイングをする。 そういったセリフ以外の演出がイベント内容をプレイヤーにわかりやすく伝えていた。 リアルキッズだったわしは文章をちゃんと理解していなかった。 ゲーム側の文字に頼らない演出情報も展開の良し悪しの把握に役立っていた気がする。 そういう当人はこんな文字オンリーなブログ記事を作ってばっかりだけども。デジタル描きに慣れたらそのうちポンチ絵を用意します。 #### テレビの次回予告やCM 1話が終わるごとに次の話の予告がレトロなテレビの画面に流れていく。 次のボスのシルエットが映し出され、ナレーションはヒーローものの次回予告のパロディになっていた。 CMもあり、ゲーム内の将軍登用やたまご回復などの攻略にまつわる情報をそれとなく説明する。 ## 豪華な顔ぶれのスタッフ 冒頭で紹介したように、ゲストコンポーザーとしてすぎやまこういち氏が参加していた。ゲームのタイトル画面にも「©すぎやまこういち 1992」と明記された。 すぎやま氏が名実、そしてまだエニックス合併前の環境的に、もっとも大物な制作者でまちがいない。 そのほかにも名だたるスタッフがいた。ファイナルファンタジーシリーズの曲を作った**植松伸夫氏もサウンドエフェクトで参加**。 『FF』と『ドラクエ』の音楽の両雄が並び立った瞬間である。植松氏は効果音のほうの担当っぽいが。屋台出現時のチャルメラ(屋台ラーメン屋の店主が吹いた楽器)な音色は植松氏の仕事。 見るのが難しいほうのエンディングではそういう主張を本人(のキャラ)がしており、また、スマホ版の公式サイトのコメントにもそう書かれてあった。→半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!! | SQUARE ENIX あとわしがわかるのはシナリオディレクターの**時田貴司**氏。『FF4』と『ライブアライブ』(以下『LAL』)のシナリオの人。 わしはこの事実を知ったときに真っ先に「『LAL』の人やん」と思った。ほかにもいろいろやっているスクエニの古株。 ### のちの大物 サウンドデザインの**光田康典**氏は『クロノトリガー』や『クロノクロス』,**伊藤賢治**氏は『ロマンシング サ・ガ3』や『サガ スカーレット グレイス』の曲をメインで担当した。 モンスターグラフィックには今現在『グランブルーファンタジー』でキャラクターデザインをしているという**皆葉英夫**氏が担当した。 条件が難しいほうのエンディングでは一部のスタッフがスタッフロールの代わりに登場し、一言を寄せていく。 皆葉氏の場合は**一番仕事してないという自虐**をする。同担当が他に3人おり、その末席に登場したのでこのときは新人待遇だったのかもしれない。 ## 続編とリメイク 1992年に今作が発売して以降、移植版がワンダースワンカラーに2002年に発売された。作中の一部の名称に変更がかかり、一般公募のエッグモンスターが追加されたそう。 続編は2003年に『半熟英雄 対 3D』,2005年に『半熟英雄4 ~7人の半熟英雄~』と外伝作『エッグモンスターHERO』がリリースされた。 そこから長らくうごきがなかったが、2017年10月19日にAndroid/iOS用にリメイクされて配信。税込み3000円。 同年6月のネット記事『半熟英雄 ああ、世界よ半熟なれ…!! 』iOS/Android向けに今秋配信!にも紹介され、売り上げが好調ならまたシリーズ続いていくかのような素振りを公式が見せているらしい。 新作が出るかも的な演出はSFC『半熟英雄』のエンディングでもやっていた。 お決まりの定番ネタのような気がする。わしはあんまり信じていない。出れば嬉しいけども。 ゲーム #SLG #アドカレ2024