16.SFCライブ・ア・ライブ【アドベントカレンダー2024】 2024/12/23Posted 2024/12/27 Last update B! P L 『ライブ・ア・ライブ』( 『LIVE A LIVE』以下『LAL』 )は、1994年9月2日にスクウェア(現スクウェア・エニックス)から発売されたスーパーファミコン用ロールプレイングゲーム。 小学館の有名漫画家7名がキャラクターデザインを担当したことで話題を呼んだ。 しかし発売当時は他の大作RPG(1994年8月27日発売の『MOTHER2 ギーグの逆襲』など)に注目が集まり、知名度はあまりなかった。 以後は隠れた名作としてネット上で語り継がれた。 ## ゲーム概要 7人の主人公が7つの異なる舞台でそれぞれの目的を達成するオムニバス形式のシナリオ。 「原始編」,「功夫(クンフー)編」,「幕末編」,「西部編」,「現代編」,「近未来編」,「SF編」をプレイヤーが好きな順番で進められる。 7編すべてをクリアすると「中世編」が開放され、それもクリアすると9つ目のシナリオの「最終編」が現れる。 各シナリオで異なる特殊能力やエンカウント方式が採用される。 ### 各シナリオの共通点 すべてのシナリオで店やお金の概念がなく、アイテムはイベントや宝箱,戦利品から入手する。 そしてオディオの名前をもじったボスが登場する。 シナリオの傾向としては人情味がある熱い展開やセリフ多し。 あまり重要でないが毎度可哀想な目に遭うワタナベ親子も全シナリオで存在する。 #### 音楽 すべての曲が下村陽子氏による音楽で統一される。 それぞれの編に合った曲調が作られ、独立した世界観を演出していた。 編ごとにガラリと曲の雰囲気を変えるかたわら、ボス戦前とボス戦中は同じ曲が使われた。「魔王オディオ」と「MEGALOMANIA」。 その仕様はおそらく、どの編も同じ『LAL』のお話であり、7編の主人公たち共通の敵・オディオと対峙することを示していたとわしは思っている。 ### チェッカーバトル 7×7のマス目に区切られたフィールドでキャラクターを動かし、(画面上は表示されない)行動ポイントを使って戦闘を行なう独特のバトルシステム。 簡単にしたシミュレーションゲームのような戦いをする。 戦闘後には減ったHPや状態異常などが完全に回復される。 ## 各シナリオのテイスト それぞれの編には独立した世界観や遊び方がある。 わし個人の感性でRPGらしいと感じたもの、逆にそう思わなかったものを列挙する。 ### 異色さはあるけどRPGらしい編 典型的なRPGとは言えないものの、RPGやってる感はあったシナリオたち。 プレイした人によって感じることは違うはず。あくまでわしの感性でこう分けた。 #### 原始編『接触』 まだ人類が言葉で意思疎通をはかれない時代という設定上、テキストによる会話がない。 吹き出しに描かれた絵でいろいろ察するコミュニケーションになっていて、そこはRPGっぽくない。そして『LAL』初心者にも易しくはない仕様。 しかしそれ以外は探索できるしアイテム合成で物を組み合わせていく面白さがあってRPGしていた。 あとボス戦のみ4人フルメンバーで戦えるのも初期からある7編のうち原始編だけ。 #### 幕末編『密命』 シンボルエンカウントかつ撃破した敵をカウントされるシステム。 敵の数に限りがあるのが普通なRPGとは違った。それと隠れ蓑で隠密行動できるのも『メタルギア』的。 今作一の探索範囲の広さややり込み要素の豊富さがRPGっぽさを感じる。 しかしゲーム側で幕末編開始時に百人斬りを煽っておいて百人倒しても特典がないのが御無体である。経験値やアイテムがゲットできるからええやろということなのか? リメイク版では専用エンディングができたそう。 #### 近未来編『流動』 主人公のアキラがエスパー少年な関係で、会話できる相手の心を読むことができる。 実質、一人の登場人物につき会話テキストが2種類用意されている。そういうのは他にない作りだと思った。 ストーリーが少年漫画していて、正統派なRPGらしかった。 ボス戦が巨大ロボの闘いなのがちょっと変わっている。なおスマホゲームの『スーパーロボット大戦DD』でブリキ大王のパイロットとしてアキラが参戦した。2024年9月の期間限定イベント「ブリキ大王 我とあり」で。 発売年は今作の後になるもののわしは『LAL』よりさきに『天外魔境ZERO』をプレイしていたため、このボス戦はマ・ジンVSスーパーマネキングⅢみたいだと思った。そっちはボス戦ではないがメインイベント戦(&ミニゲーム)。 ### RPGっぽくない編 良い意味で普通のRPGではきっとやらないorやれない内容だと思ったシナリオを挙げる。 #### 功夫編『伝承』 主人公の老師が弟子を探すお話のため、3人の弟子を鍛える展開がある。 修行の回数によってそのうちの1人が老師の後継者となる。 1人の弟子が正統後継者になる都合で、複数人の味方で戦える期間が短い。ボス戦も単身で挑む。 わしは複数の仲間と一緒に行動するRPGに慣れきっており、この孤独な闘いをあまりRPGっぽく感じなかった。 お話と演出は熱い。 ところでプレイ動画を見るとレイを後継者にする事例が多いようだった。 やはり他に女主人公がいないせいで女キャラのレイを選びたくなるのだろうか? かくいうわしもレイを選んだ。ピンク色でブカブカな服装もかわいくて良し。 #### 西部編『放浪』 アイテムを集めて罠を仕掛け、その後に戦闘する。 プレイヤーができることは 罠をどれだけ仕掛けられるか に重点が置かれ、操作キャラクターを鍛える時間は一切なし。 どこかミニゲームじみたお話だとわしは思った。 他の編とくらべて圧倒的に短いシナリオ。 サクっとお試しでやる分にはちょうどよく、初心者向けなのだろうか。 リメイク作の海外版では体験版に西部編があるそう。日本版は西部編の代わりに功夫編。 #### 現代編『最強』 ひたすらに戦闘を繰り返す。探索は無し。 敵の技を受けてラーニングするのが重要な編で、はじめに闘う≓技を習得する相手によって攻略難易度も変わってくる。とりあえず森部のじーさんの技二つは確実に覚えておけばよし。 「現代編」と銘打っているが「格闘編」でも通用しそうな内容であり、本当は格闘ゲームでやるようなストーリーかもしれない。こういうシナリオができた理由はライターの時田氏が格闘技好きな影響か。 今作の作曲家がもともとカプコンで『ストリートファイターⅡ』の曲を(全部ではないが)手がけた下村女史。現代編の音楽も『ストⅡ』な感じで作るように頼まれたとのお話あり。 #### SF編『機心』 本編の戦闘はボス戦のみ。 それまでの戦闘はしなくてもよいミニゲームのキャプテンスクウェアでのみ行なう。ミニゲーム内の操作キャラは見た目も性能も主人公のキューブとは別物。 本筋の内容はひたすら会話を続けていって、危険物を避けていくパニックホラーのアドベンチャーゲームな感じ。 会話重視なためか登場人物のセリフや心理表現は力が入っている印象があった。 登場人物のダース伍長は最初の印象が最悪。しかしそこからずっとプレイヤーの好感度が上がりっぱなし。これも演出はねらってやってるんだと思う。 たまたま輸送船に乗り合わせた相手であっても心臓マッサージを懸命にやったり、取り乱す者を冷静に諭したり、そこかしこに意外と良い人らしさは表れていた。 セリフも多くてまるでメインヒロインのよう。中年男性だけど。 ヒロインというより主人公のほうが合ってる? 伍長の成長物語でもあった気がする。ヒゲでハゲのオッサンだけども。 ### 途中まではRPGらしい編 中世編は最初は定番通りな西洋ファンタジーで進行する。 普通すぎてわしは途中でダレてきていた。 この編が開放されるまでにやってきた編がどれも一癖あった反動もあって、正直つまらないと感じていた。 しかし終盤で定石を裏切ってくる怒涛の展開が待ち受ける。 そこへたどり着くまでの布石のド定番だったのだと思う。 なおわしは中世編プレイ前からどんでん返しがあることを知ってた。なんの情報もなしにプレイした人はきっとたいそう驚いたのだろう。 ## 小ネタ 根強いファンがいる作品につき、わしが新たに提供できるような話題はあまりない。 従来の『LAL』のみ注目していてはたどり着きにくそうなことをここに挙げる。 ### 非公式の海外版 今作は日本国内のみの販売に留まった。 しかし日本での評判の良さのおかげか有志が英語翻訳していた。 わしが以前に見聞きした内容だと「中世編」にある「こんなモン」というアイテムが直訳で「Blue gate(紺な門)」になっていたり、キャラ名の文字数制限(6文字)があるためサンダウン(Sundown)が「Sunset」(両方とも日没という意味)に書き換えたりされていたそう。 なおリメイク作には正規の英語版があり、サンダウンはそのまま「Sundown」と表記される。 ### MEGALOMANIAの影響 ボス戦曲「MEGALOMANIA」はこのゲームを代表するような名曲。 この曲に影響を受けた著名なゲームクリエイターがいる。 インディーゲームのRPG『UNDERTALE』(以下『アンテ』)の作者の**トビー・フォックス**氏である。 『アンテ』には複数のエンディングがあり、そのうちの一つのラスボス戦に流れる曲が「MEGALO**V**ANIA」と名付けられた。 MがVになっている以外は同じ名前。曲調は……曲名を言われればなんとなく似てるかもとわしは思った。 しかし下村氏の感覚では >構成もメロディも全く違う曲なので、リスペクトしてもらっているのは純粋にうれしいけれど「なんでこの名前にしたのかな?」って不思議に思っていたんです。 だそう。このお話の元記事→1994年にスーパーファミコンで発売された『ライブアライブ』 が、ドット絵と3DCGの融合「HD-2D」の映像表現を用いて、Nintendo Switchでリメイク作品として生まれ変わる!オリジナル版のコンポーザー・下村陽子氏監修のもとリアレンジを施した楽曲たちをCD2枚組のオリジナル・サウンドトラックに収録。 同ページには2018年に行われたライブイベント「LIVE・A・LIVE・A・LIVE 2018 鶯谷編」の話もチラっと載っている。 #### MEGALOMANIAの命名 この曲名をつけた人は下村氏はないとご本人の発言があった。以下が2024年12月22日のX(旧ツイッター)の発言。 「MEGALOMANIA」、圧倒的な反響ありがとうございます。皆さんのコメントに感激しています。本当にありがとうございます。ちなみにこの曲タイトルをつけたのは私ではなく当時グラフィック担当の方がつけてくれたのです。長らく会ってないけど彼は元気にしてるかな…。良いタイトルをありがとうです。 https://t.co/I1Qsad0nDi— Yoko Shimomura|下村陽子 (@midiplex) December 22, 2024 命名者がどのグラフィック担当の方なのかはあいにくわからない。続報はあるのかな。 ## 移植とリメイク 長年、移植やリメイクを期待されていたがなかなか実現しなかった。 キャラクターの版権が他社と各漫画家にもあるために許可をとるのが難航していたそう。 しかし発売20周年を迎えた2014年にツイッターでの公式からの働きかけがあり、そして2015年6月24日にWii U VCで配信された。 それだけにとどまらず、2022年2月10日のNintendo Direct内でリメイクを発表され、2022年7月22日にHD-2DリメイクのSwitchソフトとして発売された。 タイトルは『ライブアライブ』。中黒点はなくなる。 しばしば要望されていた「戦闘時のグラフィックと同じ大きさでフィールド上のキャラグラを描いてほしい」の意見が取り入れられたドット絵になった。 ### 各種状況 リメイクには追加要素もあるそうだがわしは未確認。ソフトはSwitch版が手元にあるのにまだプレイできていない。動画も見ていない。 いつか遊ぼうとは思っているがその前にSwitchの後継機が発売されそうな予感がする。今の情報(24年11月6日の発表)では後継機はSwitchのソフトも遊べるっぽいのでそこは安心。 リメイクの『LAL』はSFCの売上よりたくさん売れたそうで、ぼちぼち評判はいいらしい。 そうかといって続編があるかは微妙そう。いまのところHD-2Dのオクトパストラベラーシリーズのほうが手堅い人気がある気がした。 将来的に過去作の配信のことを考えると、版権の手続きが煩雑になる漫画家にキャラデザ依頼はムリかもしれない。 カプコンのストシリーズと『ファイナルファイト』に多少関連はある『マッスルボマー』もイラストレーターに『北斗の拳』の作画を務める原哲夫氏を採用したら、その後のカプコンお祭りゲームに『マッスルボマー』のキャラが一切出てこられない悲哀がある。 オムニバス形式のシナリオ部分だけ引き継ぐならシリーズは続けられそうだが…… でもまた中世編的なシナリオにどんでん返しを求められたらしんどいと思う。 『ヘラクレスの栄光Ⅲ』でそういったことをやってシナリオがウケたせいで続編の『ヘラクレスの栄光Ⅳ』のシナリオが渋く評価されたように。ⅣはⅣで良い話だとわしは思うで。だからアドカレ企画で紹介していた。→13.SFCヘラクレスの栄光Ⅳ 神々からの贈り物【アドベントカレンダー2024】 不可能を可能にしたリメイクだけで終わっても不満はない作品。続きがあったらあったで嬉しいけど作るのは大変そうである。 ゲーム #RPG #アドカレ2024