休眠していたゲームのイベント例2種+亜種 2025/8/25Posted B! P L 直近の記事で、シリーズが途絶えてなおイベントが開催される『MOTHER』について紹介していた。 前の記事2025年渋谷パルコの期間限定MOTHER企画展&店舗と成り立ち 『MOTHER』は糸井重里氏が運営する『ほぼ日』のコンテンツとして定期的にイベントが行なわれる稀なゲーム。 この記事では続編が長期間出ない状態でイベントが行なわれた点で通じるゲームを2例を挙げる。 片方は有名な『クロノクロス』で、片方はマイナーな『クーロンズゲート』。 どちらも90年代のテレビゲームが十数年以上の時を経て、再び話題になった作品。また、イベント後になんらかの商品がリリースされた。 加えてかなりイレギュラーな事例の、『聖剣伝説レジェンドオブマナ』もここに載せる。 ## クロノクロスのイベント スクウェア時代の現スクエニが制作した『**クロノ・クロス**』は1999年の発売。 リマスター版が2022年にリリースされた。 リマスター発売の前の2019年に、音楽イベントが行なわれた。その詳細記事↓ 光田康典氏による『クロノ・クロス』20周年記念ライブツアーがスタート。東京公演の模様をチラ見せ! | ゲーム・エンタメ最新情報のファミ通.com 『クロノ・トリガー』『クロノ・クロス』オーケストラコンサートレポート。アンコールはもちろんあの曲が! - 電撃オンライン クロノはなにかと音楽の露出の多いゲームシリーズで、実際名曲と呼ばれる曲は多い。 ### 主役陣にまぎれる仮面男 前述のリンクを貼った外部記事の一つめに、イベントのための描き下ろされた『クロノ・クロス』キャラクターの等身大パネルが並ぶ写真がある。 また、作曲者の光田康典氏が代表を務める音楽プロダクションのX(旧ツイッター)にはパネル絵と同じ絵を使ったイラストが公開された。 🌈#結城信輝 さん描き下ろしイラストが初公開!!『クロノ・クロス』のキャラクターデザインを担当した結城信輝さんがこのライブツアーのために描き下ろしたイラストを初公開!それぞれのキャラが楽器を演奏したバンド編成で行われるこのツアーの楽しさを表した特別な一枚!mau@nobuteruyuuki pic.twitter.com/8drzDNEBYh— プロキオン・スタジオ (@PROCYONSTUDIO) July 30, 2019 写真もイラストでも一番左にいる、銀髪の仮面の男。名前はアルフ。 北米版での表記はGuile。フツーにガイルと呼ぶんでしょう。 たぶんパラレル世界のゲームに「ギル」という名前で登場していた縁の英名かとわしは勝手に考えている。 ~~陰湿~~堅実な待ち戦法で名をとどろかせた髪型が特徴的な米軍人とはなにも関係ない。 パラレルワールドのゲームとは『ラジカル・ドリーマーズ -盗めない宝石-』のこと。 リマスター版『クロノ・クロス』に収録済で、それにともない正式なタイトルは『クロノ・クロス:ラジカル・ドリーマーズ エディション』となった。 #### 脇役の抜擢 このアルフ、なんだか主要メンツのように居座っているが*ゲーム内ではただの脇役*。 序盤のイベントで3人の仲間候補から1人を選ぶ際に登場する奇術師で、仲間にならないルートもある。 作中は謎の多い描写が点々と入り、ダッシュ移動時に浮遊する様子や、魔法(エレメント)は他の味方勢と異なり高位レベルのものばかり使用枠が増える特別仕様もある。それらの理由は終始明かされない。 ##### 音楽には不似合いな脇役 パネル絵の数合わせ的に、脇役の中でも音楽イベントに似合うキャラがアルフだから選ばれたのか、というと全然そんなことはない。 他の仲間にはスラッシュというヴィジュアル系ボーカリストな青年がおり、ゲーム中で彼のコンサートイベントがある。 音楽という一点で考えたらスラッシュのほうが適任だとわしは思う。 #### 没になった準主役的な背景 なぜそんなビミョーな人が選出されたかというと、きっと前作『クロノ・トリガー』に登場する主要人物と同一にする予定があったから。 前作にもダッシュ移動時に浮遊し、高位の魔法を得意とする男性がいた。 彼は『クロノ・クロス』のストーリー上で重要な人物とも関わりがある。 そういった物語に密接に関わる人物とアルフを関連させる*案が没り、他人の空似的な扱い*で『クロノ・クロス』は終わった。 とはいえ『ラジカル・ドリーマーズ』含め、別作品でアルフによく似た男性が登場していた。 関連作の内容を知るプレイヤーにとって、ただの脇役とちょっと違うポジション感は残った。 #### DS版クロノトリガーを経て その後、2008年に発売されたDS版『クロノ・トリガー』でクロスに繋がる描写が足された。 この追加要素がトリガー単体で終わらない公式見解だと考えるなら、アルフは再度主要メンツ枠に復帰したようである。 その待遇は音楽イベントのパネル絵に選出されたことでさらに強固になった感がある。 肝心のリマスターの『クロノ・クロス』は話のテコ入れがないのでアルフは脇役のまま。 リメイクがあればアルフが当初の予定通りのキャラクターで演出されるのだろうか。 スクエニのリメイクは力入っているのと手抜きのと差が激しいのであんまり期待できない。 ### 余談:ゲーム外の公的使用曲 フィギュアスケート選手のプログラム曲に使われたことがあった。 カナダのケビン・レイノルズ選手が『クロノ・トリガー』と『クロノ・クロス』の音楽のメドレーをバックに流していたそう。 2011年の中国杯や2018年のNHK杯で音楽が流れたことで一時、クロノシリーズが話題になっていたらしい。 また、2021年に開催された東京オリンピックでは開会式の曲の一部に『クロノ・トリガー』の曲が選ばれていた。ロボのテーマとカエルのテーマの2つ。 ## クーロンズゲートのイベント 1997年に発売した『**クーロンズ・ゲート-九龍風水傳-**』。 「クーロン」の名の通りかつて存在した香港の九龍城砦をモデルにした舞台。 コアな人気のあるゲームで2014年にサウンドコレクション発売&記念の音楽イベントがあった。 他にも発売20周年を目前を謳った初のライブイベントが2016年にあり、その翌年に『クーロンズゲートVR suzaku』がPS4で発売された。2019年には初のアナログ盤サントラ発売。 のちにクラウドファンディングで得た資金を元手に『クーロンズリゾーム』を2024年にリリースし、同年にコンサート「九龍夜總會2024」を行なった。 ゲーム音楽の作曲者は蓜島邦明はいしま くにあきという人で、その方の熱意もあってやれているイベントのよう。 ### 奇怪な世界観を保った告知イラスト 2024年のコンサートのポスターはギリギリ一般ウケもねらえる奇怪な絵にとどまっている気がした。以下転載↓ その前のイベントだとここまで攻めてなかったようにわしは見える。 初見の人にとっては充分にちょっとキショイ絵かもしれない。 でもまだ優しい表現のほう。ゲーム内だと『女神転生』シリーズの悪魔よりSAN値が下がりそうな異形がゴロゴロいた。 #### 管理人の驚き箇所 そもそもわしの感覚だと『クーロンズ・ゲート』は曲推しのゲームだと思っていなかった。 たしか2016年のライブイベントの話はネットで知っていたが、そのときも「(音沙汰無かったゲームのイベントをやるの)なんで?」という気持ちと「(音楽を売りにしてなかったゲームで音楽イベントをやるの)なんで?」と諸々の理解が追いついてなかった。 他にも音楽イベントをやっていたことに大いに驚いた。 ### ひっそり発売されていたプロトタイプ続編 『クーロンズリゾーム』の紹介かつ発売の宣伝が控えめだったことを綴るネット記事↓ 気づいていたか?伝説のADV『クーロンズ・ゲート』続編が発売していたことを…今すぐ『クーロンズリゾーム』の新たなる “ファイアの日”を目撃せよ【年末年始特集】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト 上記のページは2024年1月4日の公開。 この時点ではまだ8つに分割された本編のプロット版3巻までの配信されていた。 その後に完全版の限定販売が2024年2月22日に行なわれ、同年5月31日からは一般販売されたそう。 現状はPC版オンリー。 #### 執念の続編 商品のページを見てみると、大部分の制作をシナリオライターの木村央志氏が担当したことが書かれる。 もとよりPS版ソフトの制作時点で、 続編を作る気があった→売上が思ったほどよくなくて制作取りやめ、 という経緯はあったらしいとわしは噂に聞いている。 初代のゲーム終盤、わしが「普通そんなに新キャラいらないよな?」と違和感を覚えるほど新顔の登場人物が複数出てきた記憶はある。 もしかしたら続編のために仕込んでいた要素なのかもしれない。 不完全燃焼だったものを半ば個人の力で創りあげるとはすごいガッツである。 ##### ゲームを公開できる環境 まったく違うゲームシリーズの話をする。 スクウェア時代の『ゼノギアス』も100万本売れたら続編を作るという条件下で、ミリオンはいかなかったことから続編を出せず、別の会社(ナムコ)で『ゼノサーガ』を展開するに至った。 現在はさらに別の会社(任天堂)で『ゼノブレイド』がシリーズ化している。 一つポシャっても別の場所へ行けばなんとか継続できることもあるらしい。 今だと素人でも手が出せる(ゆうてムズイはむずい)ゲームエンジンやエディターがある。 アイディアを形にする分には手段が豊富にあるので良い時代になったと思う。 #### ○周年へのこだわり わしはたぶん普通の人はスルーするような箇所が一つ気になった。 商品ページには次の文言が載る。 >2024年、『クーロンズ・ゲート』企画30周年の節目の年にリリースする『クーロンズリゾーム』─ 初代のゲームソフトは1997年の発売。その企画は1994年に始まっていたらしい。 1994年から制作着手したことは「そうなんだ」と受け流せる。リリースまで3年は特別長いとも短いとも言えない期間。 ##### あまり聞かない謳い文句 わしは率直に、*企画を考えた年から年数を数えることってある?* と疑問に感じた。 なにかのインタビューで「この企画はいついつに始まって~」という話が挙がることはある。 それを記念すべき節目に数える例をわしは寡聞にして知らない。 区切りの良い○周年を大事に想うことを悪く言うつもりはないものの、いささか引っかかった。 ##### 怠惰なクリエイターにはメリット大 ゲームに関しては発売年以外で周年を祝うことは珍しいと思う。 ただ、発想自体には作り手の得になる部分がある。 *「この年度中に仕上げよう」という目標を立てるのにはきっと良い*。 リミットを設けないとズルズル引き延ばしてしまうことはよくある。わし自身も他人事でない。 わかりやすい一例が「インド人を右に」の誤植を生んだゲーメストの改革の話。 せっかく作業を効率化したのにまた期日ギリギリまで記事が完成せず、結局校正ができないまま誤植を世に出した苦労話が載る↓ 「インド人を右に」のSSR級誤植はなぜ生まれたのか?<アーケードゲーム誌『ゲーメスト』> ## 特殊例の聖剣LOM 『**聖剣伝説 LEGEND OF MANA**』(以下『LOM』)は1999年の発売。 リマスター版が2021年に発売された。 このリマスター版に関連して『LOM』の三大メインシナリオのうちの一つ「宝石泥棒編」をテーマにしたアニメが2022年に放送。 順序的にはリマスターがきっかけでアニメ化? と思いそうなところだがアニメの企画が先でリマスターが後だという。 ### アニメ化打診が先 その経緯を語るネットの記事を二つ紹介する。 小山田Pが語る、「聖剣伝説 Legend of Mana」がアニメ化、ティザービジュアル公開(コメントあり) - コミックナタリーより >アニメ化のご提案を頂いたとき、「聖剣伝説 Legend of Mana」のHDリマスター版は、影も形もないどころか、まだ検討もしていない状態でした。 次に、『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』がアニメ化決定。『聖剣伝説 Legend of Mana – The Teardrop Crystal -』正式発表より > 制作の経緯としては、スクウェア・エニックスがリマスター版『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』の開発をしていないときから、ワーナーブラザーズジャパンから提案。ワーナーブラザーズジャパンのプロデューサーが『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』に夢中になったことから、アニメ化を熱望したという。 #### 肝心のアニメのデキは・・・ あんまり芳しくない。ストーリー展開がよくないそう。わしは未視聴。 もともと「宝石泥棒編」は説明不足感の濃いエピソード。 無口主人公とブツ切り会話イベントによる雰囲気のゴリ押しで、なんかいいカンジな話にまとめていた。雰囲気ゲーと言い換えても可。 細切れな描写の行間はプレイヤー各自の想像に任せる(平たくいえば丸投げな)ストーリーを、全部セリフと絵の動きで表現するのは難易度が高い。 ゆうて聖剣シリーズはストーリーのデキを売りにするゲームではないので、ゲームのキャラクターがアニメで動くことに価値があるのでしょう。 ### 聖剣シリーズは継続中 外伝的立ち位置の『LOM』には続編がないが、シリーズの正統後継な新作は出ている。 最新作は『聖剣伝説 VISIONS of MANA』で2024年の発売。 『LOM』のリマスターとアニメ化がなくともたぶん作られたゲーム。 それ以前に携帯ゲームでちょくちょくアプリがリリースされていて、シリーズの活動自体は長く継続している。 『LOM』は『クロノ・クロス』および『クーロンズ・ゲート』とはいろいろと事情が異なる。 アニメ化という一大イベントをきっかけにリマスター版が発売する変わった経緯があったので紹介した。 ## まとめ 長らく続編の出なかったゲームは イベントをやる→商品を出す、のコンボを決めることがしばしばある。 その例として『クロノ・クロス』,『クーロンズ・ゲート』,『聖剣伝説レジェンドオブマナ』で起きたことを紹介した。 ### MOTHERには当てはまらない事象 ほぼ日MOTHERプロジェクトは2020年から始まり、2025年にも『MOTHER』の催しが行なわれた。 計6年に活動が及んでいる。 いずれも*新規販売するゲームソフトへの呼び水とは無縁*。 あくまで『ほぼ日』のコンテンツとして扱われており、突発的なイベントとは事情が異なるようである。 イベントを何度もやる採算がとれるほど客入りが良いのなら、続編を出してさらに収益を、と並みの商売人は考えだしそうだが、そうはいかないらしい。 糸井氏が『MOTHER』の制作に乗り気でないのでシリーズが凍結している模様。その証拠を近々にまとめる。 四方山話 #MOTHER